第4話 魔法の授業

「では始めます、魔法の授業」

 白髪の女の子メアリーは自分の生徒の前に立ちながら言う。

「はい、よろしくお願いします」

 答えるのは見た感じ前世でいうところ小3ぐらいの見た目のか弱そうな茶髪ショートの女の子、シャル・マルマロン。その瞳は宝石のように輝く深緋色で、前世ではアニメなどでしか見たことないものが目の前にあり、俺は心が弾んでいた。

「まず、魔法の基礎……3つの基本の魔法は分かりますか?」

 メアリーは人差し指中指薬指の三本立てる。

 ふむ、魔法の3つの基礎か……全く分からん。

「えっと、動かす、生み出す、纏わす……ですか?」

 シャルは自信なさげに小さい声で呟く。

 思い出すなぁ、俺の妹もこんな小さいときあったもんなぁ……。俺のことよくいろいろやってくれてたし成績優秀で友達も多かった……自慢の妹だった、結局なにもしてやれないまま俺こっちに来て、不甲斐ないなぁ……。

「そうです、まぁ言い方なんてどうでもいいので、内容だけ覚えてください」

 俺が感傷に浸っている間に授業は進んでいく。

「まず動かす、これは簡単でただ物を動かす魔法です」

 メアリーは地面に落ちている小石に手のひらを向ける。すると小石は小さく白く光った。メアリーは手を下から上に振る。すると石はフワッと浮かび上がる。

 石(ちょwやめてーやwwワイ浮いとるw)

「これが魔法の基礎その1です。次は生み出すです」

 メアリーは浮いていた小石を落とし、庭に植えられている花に近づく。

 石(なんやもう終わりかいな)

「とりあえず今は、水を生成します」

 メアリーは花壇の上に手を伸ばし、軽く握る。そしてまた手の中が光ると、メアリーは手を開く。

「お、おぉぉ……」

 その手から紛うごとなき水が流れ出てきた。シャルは小さく驚きの声を出した。

「さらに先ほどの魔法と組み合わせれば……」

 メアリーはその流れる落ちる水に手を向けると、水は浮かび、空中で拳ほどの塊になる。

「こんなふうに、生み出す魔法は動かす魔法と組み合わせるのが大体です」

「先生はい、組み合わせないときはあるんですか?」

 シャルが可愛い手を上げ質問した、メアリーは貯めた水をシャワーのように花にかけながら答える。

 なにそれめっちゃ便利やん。

「そうですね、料理の時や松明の着火……などですかね」

「あーなるほど」

「そして3つ目の纏わすは、そうですね……」

 メアリーは先ほどの小石を浮かび上がらせる。するとその小石は少し青白く光る。

 石(ウぇーいwワイまた浮いとるデェ〜wしかもなんか体硬い気がするわ〜w)

「それとこれ……」

 メアリーは小石を浮かばせながら、地面から同じサイズの小石を浮かばせる。

 石2(ワイぷかぷかで草)

「こっちはただ浮かばせた石、こっちは保護魔法を纏わせた石です」

 ふむ、白く光る方はただ浮かばせたもの、青白く光るのは"保護魔法"とやらを纏わせたのか。もしかして魔法の種類によって光の色が変わるとか?

「えーと、あそこに岩ありますね」

 メアリーは辺りを見渡した後、遠くにある人サイズの岩を指す。

「そうですね、あれがなにか――」

「えい」

 メアリーはシャルの言葉を聞く前に、指をビシッと上から岩に向かって振り下ろす。

 石2(ファッ!? おまっ!? ちょま――!!)

 バゴっ。

 小石は一瞬で家の2階ほどの高さまで上昇し、メアリーの指が振り下ろされるのと同時にものすごい早さで岩に叩きつけられた。

 小石は虚しく粉々に砕け散った。

「今のはただ浮かせていた石です」

「な、なるほど……」

 石(ど、同胞ーー!! こいつ悪女や……ワイの仲間を……!)

「次はこの保護魔法を纏わせたほうです」

 石(え!? いやいいです! ワイはいいです――!)

「はい」

 メアリーはなんの感情もない乾いた声と同時に小石を先ほどと同様に高所から岩に叩きつけた。

 石(あ、ワイ死んだ……)

 バギッ!!

 完全に死を悟った小石の考えとは裏腹に、その痛ましい音を立てたのは岩のほうだった。岩にはひびが走っており、石はいっさい傷がないように見える。

 石(あれ……? ワイ生きとる? ……ワイTUEEEE!!)

「と、まぁこんな感じで、保護魔法を纏わせれば一定の衝撃には耐えれることができます、生物には使えませんが」

「わ、分かりました」

 なるほぉーど、これが魔法の基礎、動かす、生み出す、纏わす、の3つか。見てれば分かるが、メアリーがずっと使っていた魔法……それは――。

「一つ目、『動かす』だな」

「……?」

「……」

 あ、やべ……いつもの癖の独り言がまた……。

 シャルは急に聞こえた謎の声に首を捻りながら周りを見渡す。メアリーは呆れたような興味なさげの半目で俺を睨む。

 こ、怖ぁー……なんか凄い的確に俺見てくるんだけど……凄い睨んでくんだけど……。

「うんん……それでシャル、この中で最も大切なものはなんだと思いますか?」

「うーんと……『動かす』?」

「そうです」

 メアリーは腕を伸ばし、自分の前から体を捻りながら自分を軸に腕を回転させる。すると近くに落ちていた石、枝、落ち葉などがフワフワ浮き上がる。

 なにそれかっけぇ。

「『動かす』は、生み出したものも纏わせたものも動かす時に使います、現代の魔法のほぼ全てにこの『動かす』が使われます」

 先ほど水を出したときのように『動かす魔法』を使えれば生み出した後自由に動かせるし、小石も同様に自由に動かせればそれだけでだいぶ使い方の幅が広がる。

「なるほど」

「だからまずは、この『動かす魔法』から覚えましょうか」

「はい」

 そして、魔法の授業はようやく実践に入った。


――――――――――――――――――――


「ではまずこれを動かしてみましょう」

 メアリーは地面に置いてある石を指す。シャルは「はい」と短く言ってからしゃがむ。

「魔法は、『遠い』『小さい』ものほど効きにくいですからね」

「でもこれって実際どうやって魔法使うんですか?」

 シャルは見よう見まねで手を石に向けたり指をフリフリしたりするが石は全く動かない。

「魔法に必要なのは想像力だけです、『石は動く』そう信じることができたら魔法は発動しますよ」

「想像力……分かりました」

 シャルはムムムと石に意識を集中させる。

 メアリーは横から色々アドバイスする。

「なぁんるほどぉ……想像力か……それならできるかもな俺にも」

 一応心配していたことがあったんだ。魔法を使うために必要な潜在的な力があって、それはこの世界の住民にしか生まれつき与えられないものだとしたら俺詰みじゃん、とか思ってたんだけど……。

「想像力"だけ"なら問題ねぇ、俺は昔から想像力だけは豊かなんだ」

 例えば背後の気配でその人がどんなポーズでどこで何してるとか想像できたし、人の体の構造は理解してるから、人が動く時の動き方とか関節の位置とかいろいろ想像できたもんだ。

「小学生の頃、その特技生かして絵とか描いてたなぁ、飽きて中学のときぐらいから辞めたけど」

 実際、絵の才能は凄まじく、本物の人間を見なくとも脳内でポーズ体型身長、さらには筋肉を動かしたときの挙動、関節の可動域、骨の凹凸まで再現することができた。簡単に言えば、脳内だけで、完璧に"人間"を作ることができた。

「石は動くもん、石は動くもん、石は動くもん……」

 俺は二人とは離れた場所で一人、魔法の練習することにした。しゃがみこみ、テキトーに石に手を向ける。

「……きたっ! 想像できる! 『石は動く』!!」

 石(あ? なに見とるんやワレ、殺すぞ)

「………………」

 おかしい、全く動かない。

 手に念を込めても全く動く気配がない。

「ん〜? なんでだぁ? 想像できてるはずなのに……」

 俺はチラッと後ろの二人を見る。

「せ、先生! 浮きました」

「そうですその感じです、そのまま頭の高さまで上げてみましょう」

 シャルは顔を歪ませながら、両手を石に向けていた。そしてその石はチカチカ白い光を出しながらユラユラ上がっていく。

 くそっ! 俺だって!

 俺はもう一度石に両手を向ける――が石は変わらず動かない。

「なんで……なにが足りない……」

 俺は再び振り返り、調査のため二人のもとへ近づく。

「では、その高さを維持したまま、だんだん遠くへ持っていきましょう」

「は、はい……くっ……」

 シャルの額には汗が滲んでおり、だいぶ疲れているようだ。

 石はゆっくり移動し始めて、シャルたちから離れる。

 これも想像できたらできんのか?

「そうです、そのまま――――」

 メアリーが言いかけた瞬間、石は突然ポトっと落っこちた。

「はぁ、はぁ……すみません、これ以上は……」

 シャルは息切れしながら汗を拭う。相当疲れているようだ。

 そんな魔法って疲れるもんなのか……。

「……では一度休憩しましょう、初めてにしては良かったですよ」

 メアリーは振り返り、丸太に向かって手を振る。すると丸太は浮き上がった。ここまでくると別に驚きはしない。 

「この丸太、一本もらっていいですか?」

「はぁ……え、いいですけど……」

「では――」

 するとメアリーは指を横縦斜め円形に振り始める、その指先には先ほどの丸太がある。

 ま、まさか……。

 メアリーのその作業は、まるで、絵を描くようだった。

「できました、ここでいいですね」

「は、はぁ……何が――――」 

 メアリーは手をその草が生えていないスペースに向ける。

 すると丸太はまるで豆腐のように綺麗に割れ、一つ一つがスーとメアリーが手を向けた場所に移動する。

 その一つ一つとは"部品"で、それはだんだん下から上へと組み立てられていく。

 やがて丸太は全て組み立て終わり、それはちゃんとした"形"になった。

「椅子と机です、あったほうが休みやすいでしょう」

 木製の椅子と机、簡易的な作りだが、完成までの時間と労力を鑑みたら全然文句もでないちゃんとした椅子と机である。

 な、なんて便利なんだ魔法……。

「そ、それみたいなことができるようになるまでに、どれくらいかかりますか?」

 シャルが戸惑いながら質問する。メアリーは顎に手をやりながら作った椅子に座る。

「まぁ私の場合最初からできましたが……どれくらいと言われたら正直分からないですね」

「そ、そうなんですか……やっぱり凄いですね」

 やっぱり、ね……やっぱりってなに?

「百年に一人の天才……噂通りなんですね」

「や、やめて下さい、私はそんなのじゃありません」

 メアリーは少し眉を寄せ、シャルに手を向け制する。

 うん、謙虚キャラでいくならまずそのニヤニヤ微笑をやめようね……嬉しそうだなおい。

 てか百年に一人か……そんなに凄かったのかメアリーは。実際俺は魔法をメアリーのものでしか見たことがないし、もしかしたらメアリーが平然とやる魔法も実はすげぇ高難易度だったりとかするのか? うーむ、とりあえず、メアリー以外の人の魔法を見てみないとなんとも言えんな。

「そんなことはいいので、シャルもどうぞ、座って」

「あ、はい」

 メアリーに促され、シャルはスススともう一つ空いてる席に座る。

「座り心地いいですね、あの丸太で作ったなんて思えない……」

 シャルは椅子の座り方を調節しながら呟く。

「私の精度ならそれくらいは余裕です」

「そ、そうなんですか」

 ほんと相変わらずだなあいつ……ま、俺はするべきことがある、もういこう。

 俺は足音を立てないようゆっくり歩く。シャルたちの会話が聞こえるか聞こえないかの辺り、ここならバレる心配もない。

「さて、魔法……やりますか……」

 結果、何も変わらなかった。

「わ、わかんねぇ……なんで石は動かねぇんだ」

 なんとなくできるようになったんじゃないかという謎の自信があったんだが……やはり会話フラグ回収だけじゃダメだった、そもゲームじゃねぇんだし当たり前か。

 俺は膝をつき、目の前に石を睨む。

「シャルにできんのになんで俺にできないんだ……やはり根本的な素質なのだろうか……」

 はぁ……仕方ね、メアリーに聞こ。

「なぁ」

「――!! ……ううん!」

 俺が背中から耳元で話しかけるとメアリーはビクッと肩を跳ねさせた。その後すぐに咳払いして平然を装う。

「……?」

 シャルが不可思議なものを見るような視線で少し首を捻る。俺はそれを横目にメアリーの耳に口を近づける。

「全く魔法が使えないんだけど、なんかコツとかないか?」

 俺はシャルに聞こえないよう、極力メアリーの耳の近くで話す。メアリーは俺の吐息が掛かるたびにくすぐったそうにプルプル震える。

「……シャル、魔法のコツを教えます。先ほどの杖を出してください」

 メアリーの言葉に、俺は耳元から離れる。

「は、はぁ……」

 シャルは異様に震えるメアリーに戸惑いながら箱を取り出し杖を机の上に置く。メアリーは杖を手に取り、構える。

 よく見ると手持ちの部分は太くて先端にいくにつれて細くなってんのか、なんかグニャグニャ模様あるし、ただの棒って訳でもなさそうだ。

「これはほとんどただの棒です」

 え、えぇ……俺の考察速攻で否定されたんだけど。

「強いて言えば、"サントラの木"でできてるので感覚が伝わりやすいです、試しに持って集中してみてください」

 それはただの棒ではないのでは?

 メアリーは器用に杖を回してシャルに持ち手の部分を向ける。シャルは杖を受け取ると見よう見まねで杖を構える。

「……確かに、この杖がまるで私の体の一部みたいな感じがします」

「そうでしょう、大切なのはその感覚です」

 メアリーは椅子から立ち上がり机に身を乗り出し、シャルが持つ杖の先端を指す。服が弛み、胸元が見えそうになる。

 てか見えてるし……ここはしっかり誠意を持って見させてもらおう。

 ガン見。

「この先っぽ、ここから透明のロープが出て、自分がしたいことをしてくれる……そう考えるんです」

「な、なるほど……透明のロープですか……」

「ロープと言ってもそれはイメージの話なので、例えば謎の力とか触手とか……大事なのは自分と"それ"は繋がっていると考えること、です」

 メアリーは体を戻し、椅子に座る。その瞬間、チラッと俺のことを見た。と、言っても正しくは俺の方向を見た。

「ありがとな」

 俺はまた耳元で小さく呟いてからメアリーから離れ、最初の位置にゆっくり戻る。

 ガン見した結果、いまいち見えなかった。くそっ! 影になってなければ!

 俺は悔しさで涙目になりながら、さっき俺を殺害予告してきた石を見つける。

 思ったんだが、魔法は意外とフィーリングな部分が多い気がする。『想像力』とか『透明のなんか』とかな。

「透明のロープ……か……なるほど、完全に理解したぜ」

 俺は石を力強く指し、睨む。 

 想像しろ、俺とこの石は繋がっている――。

「そうです、さっきの倍ほど遠くに届いてますよ」

「そ、そうですか……? くっ……」

 背後から冷静なメアリーの声とシャルの苦しそうな声が聞こえる。

「…………」

 石(あ? なに指してんだあ"ぁ"!? ぶっ殺すぞ!!)

 さっきからなんだよこの石の思考!うるさいな!

「なんで動かねぇんだ。このくだり何回目だ? そろそ飽きてくるぞ? 新規さん脱落するぞ?」

 やべぇ、マジでできねぇ……。

 俺はハッと気づき、首を振って反省する。

「ダメダメ、魔法ができないなら他のことをもっと頑張れ、それはなんだ?」

 俺は一瞬考えてから、すぐ答えを出す。

「もちろん、"予想"と"検証"だ」

 初めからそうだった。分からないことはとりあえず仮定を出して、本当か確かめる。それが異世界人としてできることだ。

「まず一番の問題、なんで俺は魔法が使えないのか」

 やはり根本的な何かが俺には無いのか……? いやメアリーのことを信じるなら、俺にも想像力があれば使えるはずなんだよ。ならば単純に想像力の欠如……? となると思い当たる可能性は――。

「やっぱあんのかな、固定観念……」

 前世の常識……『魔法はない』。その固定観念が俺の中の見えないところで、俺の想像力のストッパーになっている、という仮定。

「まとめりゃ、『この世界の住人じゃないから』魔法が使えないんじゃなくて、『あの世界の住人だったから』魔法が使えない、そういうことだ」

 俺はまだこの世界に来て……約半日ぐらいだろうか、それで前世の常識が抜ける方が無理という話だ。

「もっと考えねぇとな……」

 俺は顎に手をやりあぐらをかいて座り、考える。

 俺の中の固定概念を無くすことができないなら、新しい何かを俺の中に固めないといけねぇ、でもそれは概念とかの話じゃない。

「それは『自信』、俺は魔法が使えるという自信と確信、それが固定観念を覆すことになる」

 うーむ、じゃどうやってその自信を持つか、だな。

「そも俺が自信持ってるもんなんて……――」


 ――お兄ちゃんてホント、きもいよね。

 ふと、そんな言葉を思い出す。

「いやなんで? 違うからキモくないから」

「ほらなんかいっつも自信ないくせに冷静ぶってさ、夢はいつも難しいって言いながら、現実はずっと美しいみたいなことたまにほざくし、逆じゃない? て思う。あとイミフ」

「んなどうでもいいことを……なら一言言うぞ――」

「なに?」

「仮に異世界があったとして、その世界の夢はきっと難しいはずだ、んでその世界の現実は今よりきっと綺麗だ」

「……なんでわかんの?」

「知らん」

 俺は窓の外を眺めて、呟く。

「――でもその方が『生きたい』って思えるから――」

「相変わらずイミフなことを……、てか何それ、人?」

「あぁ、勉強の合間にな、十分くらいで描いた」

「ホント絵だけはうまいよね」

「人なんか書くのは簡単だよ、いつも見てるから。それよりムズイのは"キャラ"を描くことだよ、なんであんな可愛いを描けるんだろうな」

「どうでもいいけどさっさと降りてきてね、夜ご飯できたから」

「はいはい……善処するよ――――」


 ――――そうだ。俺はずっと前から分かっていた。

「夢は難しいなんて……」 

 俺はもう会えない妹に多大な感謝を送りつつ、微笑んだ。

「さて、俺の自信持ってることなんて、ひとつしかねぇよなぁ?」

 俺はその一つのアテを信じ、石に透明の手を向けた。


――――――――――――――――――――


 一週間後……。

「メアリー、ちょといいか?」

 朝ごはんを食べ終わった後、部屋で魔導書を読んでいたメアリーの背中に話しかける。

「なんですか?」

 メアリーは本から目を離さずに答える。

「俺と魔法で勝負してくれ」

「は?」

 メアリーはゆっくり振り返り、俺を睨む。

「前言ったよな?いつか「参った」って言わせるって、つーわけで決闘しようぜ」

「……まぁいいですけど、勝てるでしょうか私……透明人間と戦うなんて初めてですよ」

 メアリーはそういいながら立ち上がり、俺より早く部屋を出ていこうとする。

「なめんな、俺がこの一週間で魔法できるようになったんだよ」

「そうなんですか、それは楽しみですね」

 メアリーのその顔は、変わらないいつもの気だるげな表情だった。

 だがとても、綺麗だった――――。

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