第六話『アヤシイ宇宙船』

 夕暮れ。 

 幾千万の子供に包囲された、コンクリ大豪邸。


 お年玉泥棒ニセホームレスたちは、比較的すぐに観念して豪邸から出てきた。

 美しい顔がいくつも並ぶ。


「話を聞いてください。お年玉が必要な事情が、あるんです」

 土星型のオーブのネックレスを身につけたうるわしい女が、そう言った。


「ほう。アバズレさん、一応、聞いてあげるわ。だ私たち、文明人を辞めたわけじゃ無いから」

 と、高圧的な、女子高校生。


「どうもありがとう。私たちは実は……土星人なの。この太陽系という惑星系に迷いこんで、多摩川の上流に宇宙船が墜落しちゃったの。それで今、宇宙船の修理を進めてる。土星へ帰るためにね。大事にしたくないから、ひっそりとその計画を進めていたつもりなんだけど、バレてしまった。そのための資金として、地球の子供たちの、お年玉を間接的に使わせてもらってるの……ごめんなさい」

 麗しい女は、申し訳なさそうに、白状した。


「なるほど。じゃあ、証拠は見せてもらえるかしら? その修理途中の宇宙船とやらを。どこにあるの?」

「壁の中よ。開け、夢の扉!」


\ゴゴゴゴゴ/

 コンクリ壁が、左右にスライドして開く。


 "びびあん"のオーブそっくりな巨大宇宙船が、姿を現した。

 その半分ほどは、配線や基盤、支柱などがき出しになっている。


「これよ。ハリボテじゃないわ。近寄って、隅々すみずみまで見てもらったっていいわ」

「じゃあ、遠慮なく」


 子供たちは、生まれて初めて見る、土星人の宇宙船を見学し、興奮した。

 どうやら宇宙船を組み立てているというのは本当らしかった。


「ねぇ、思ったんだけど、私たちのお年玉、どうせ親に没収されるなら……土星人の帰還の費用にてるっていうのはどう? 私、親がコソコソとパパ活ママ活するのも絶対嫌だし。おじいちゃんおばあちゃん、おじさんおばさんに頼んで、今度からお年玉は土星人に直接渡してもらうようにしない?」


 女子高生の提案に子供たちは……


 大賛成した。

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