第五話『子供デモ』

 平日午前。

 多摩川河川敷かせんじき


「「「お年玉パパ活、お年玉ママ活、反対!!! 子供のお年玉を返せ!!! ホームレスに流すな!!! ホームレスも反対!!! 景観を守れ!!! お年玉を守れ!!! 窃盗罪セットーザイ!!! 浮浪罪フローザイ!!! ケッコーうざい!!! 異常事態!!!」」」


 大蛇の如く、ずらり長大な列。

 小中高、子供たちの、デモ行進。

 皆、学校はズル休みして、ここいる。


「ちょーっと待ったぁ! 子供たちよ、その認識には、一部誤りがある!」


 熟練ホームレスが、デモ行進の列に立ちはだかる。

 傍に若者ホームレス。

 そして続ける。


「ホームレスを、一括ひとくくりにしないでくれ! 君たちのお年玉の行き着く先は、あのコンクリ壁の大豪邸に住んでいる偽ホームレスのところだ! 俺たちしんのホームレスを、奴らと一緒にしないでくれ!」


 熟練ホームレスの訴えに、女子高生の一人が一歩前に出て、応じる。


「おっちゃん、じゃあ真のホームレスって、何なのよ? 説明してちょうだい!」


「真のホームレスとは、自然回帰しぜんかいきする人類だ! 我々は文明のしがらみから解放され、自由に、野生動物のように気ままに生きる! とっても野生的ワイルドだろう??」


 熟練ホームレスは、堂々と叫びに対し、子供たちは……


「つまりどこぞやの部族ごっこ?」

「宿題なし?」

「受験勉強なし?」

「まいにちがたんけん? ぼうけん?」

「朝早起きしなくてもいい?」

「義務教育から解放?」

 真のホームレスの生活を、肯定的に受け取った。


 そして若者ホームレスの加勢。

「俺みたいな、そこそこ若いのもいるぜ! みんなもどうだ?」


 デモの大列は、ざわめき始める。


「いいかも……」

「習い事地獄から解放か……」

「お風呂掃除しなくてよくなるのはでかい……」

「一日中ギター弾き放題?」

「引きこもり正当化?」

「いじめが……終わる」


 デモ仲間の反応に、女子高生は……


「でも待ってみんな、野生に戻るなんて簡単に言うけど、どうやって生きていくの? ご飯はどうするの? 最低限のお金は必要じゃない?」


 正論。

 が、若者ホームレスが、コンクリ壁の大豪邸を指差し、こう言う。


「偽ホームレスから、取り戻せばいいんじゃない? お年玉」


 一斉に同一方向へと視線を向ける、子供デモ大隊だいたい



「「「……突撃ぃいいいいいい!!!」」」

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