第四話『大人ナンテ』

 お茶の間。

 年齢にしては小綺麗な父、子持ちにしては未だ色気のある母、無垢むくな高校生の娘が、ニュースを見ながら夕食をとる。


〈今、"お年玉パパ活・ママ活"が問題になっています。"お年玉パパ活・ママ活"とは、夫婦生活に不満を持つ既婚者が、多摩川の河川敷の美男美女ホームレスを相手に、我が子から預かったお年玉を軍資金に援助交際を持ちかける、というもので──〉


「あっ、そういやお母さん。私が小さい頃、じいちゃん、ばあちゃん、親戚のおばさんおじさんからもらったお年玉。アレ、どうなったの?」


 娘の問いに、ぎくりとする母。


「えっ? いやぁ、そんなのあったかしら? もう歳だから、忘れちゃったわ、アハハ……」


「ちょっととぼけないでよ。多分10マンくらいにはなるはずよ。というか前型落ちスマホ買ったけど、10マンもあれば、私の欲しかったアンドロメダの最新機種、買えるって!」


 いかる娘、そして箸を止める父。


「あんなのはな、家計にまわすものだって相場が決まってるんだ。まだ働きもしないやつが、努力せずに得た金のことをとやかく言うな!」


 逆ギレ父、に対し冷静娘。


「え、待って? もしかして、お母さんかお父さん、どっちかが、"お年玉パパ活・ママ活"に使っちゃったって可能性は……ないよね? え、ないよね?」


「なな、な……いわよ!」

「なぁ! い……に決まってるだろ!」

 たじろぐ夫婦。


「えっ、まさかの、まさか? 嘘嘘うそ……」

 

 娘は席を立つ。


「違うわ、イケメン野宿男にみついでなんか……」

「いやいや、新大久保に入りびたってなんか……」

 口滑りダブルけしからん夫婦。


「夫婦揃って、サイテー!」


 娘は、家出した。

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