第二話『邂逅:謎ノ男』

 渋谷、ハチ公前。

 バッグを持たないやけに小綺麗な年齢不詳男が、連れの到着を待っていると思われる銀色の金属棒に座る色気強め女に、一直線。


 "突発的異性間交友ナンパ"と思われる。


「あの、そこのお姉さん」

「なぁにあなた。私既婚者よ? そういうの目的なら、やめてちょうだい?」

「まぁ、そう言わずに、ちょっとお茶だけでもどうです?」

「知ってるわ。そうやって言葉たくみに女の人をズルズルと引き込んで、いやらしいことまで発展させようとしてるんでしょう? お断りです」

「でも、こうやってわざわざ対応してくれるのは、100人に1人いるかどうか、ですけどね。お姉さんは、かなり優しい方、レアってわけ」

「だから、何よ」

「あ、ちょっと面白そうかも、って思い始めてません?」

「そ、そんなことないわ!」

「ちなみにお姉さん、家族とは? うまく行ってる?」

「はぁ!? なんであなたみたいな見ず知らずの男にそんなプライベートなことを言わなくちゃいけないの?」

「言いたくない? でも察するに、言いたくないのは俺が見ず知らずだからって理由からだけではないんじゃないかな?」

「そんなこと、ないわよ……」

「ほぉ。じゃあ、素直に、家族関係はうまくいってるのであなたなんかに時間を割く必要なんてこれっぽっちもありません、ってズバッと自信持って言えばいいのに」

「そ、それは……」

「ほら、言ってごらんよ?」

「い、いやよ」

「どうして?」

「だって……私、嘘は嫌い」

「へぇ、嘘、ねぇ。オーケー、じゃあ相談乗ってあげるからさ、ちょっとお茶しよう?」

「わかったわ……じゃあ、30分だけよ?」


 ナンパ男はいとも容易たやすく、既婚者の女とのお茶にありついた。

 話は女の想像よりもはずみ……


 既婚者の女は謎の男にぬまった。

 そしてこの女の場合もやはり、謎の男との密会を重ねるうちに……


 子供から"預かる"という名目で没収したお年玉に、手をつけてしまうのだった。

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