第4話「夢と現実のはざまで」

数日後、涼太は圭介の紹介で、彼の勤めるITスタートアップ企業を訪れていた。小さなオフィスだが、活気に満ちており、社員たちが真剣な表情でモニターに向き合っていたり、ディスカッションをしていたりと、エネルギーが溢れていた。


「ここが俺の会社だ。どうだ、雰囲気は?」


案内をしてくれる圭介の後ろを歩きながら、涼太は思わず息を飲んだ。この空間には、かつて彼が諦めてしまった「夢を追う場所」の雰囲気が漂っていた。


「すごいな……なんか、みんな楽しそうだ。」


「まあ、大変なことも多いけどな。でも、お互いに支え合える仲間がいるから、なんとかやっていける。」


涼太は説明会で感じた熱意を、さらにリアルに感じ取った。圭介が誇らしげに語る会社の理念やプロジェクトの内容を聞くたびに、自分もこんな環境で働きたいという思いが強くなっていく。



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見学が終わった後、圭介と近くのカフェで一息つくことにした。


「どうだった? 正直な感想を聞かせてくれよ。」


コーヒーを飲みながら、圭介が微笑む。涼太は少し考えてから答えた。


「正直、圧倒されたよ。こんなに情熱的な人たちがいる場所で働くのって、すごく刺激的だと思う。でも……俺にそんな場所が似合うのか、少し不安もある。」


「何言ってんだよ。お前、昔から情熱だけはあっただろ? 問題は、あの頃は自分に自信がなかっただけだ。」


圭介の言葉に、涼太はハッとした。確かに、10年前の自分は夢を追いたい気持ちはあったが、自分にそれを実現する能力があるとは信じられなかった。だから安定を求めてしまったのだ。


「でも、今の俺にできるのかな……」


涼太が呟くと、圭介は真剣な表情で答えた。


「できるかどうかなんて、やってみなきゃわからないさ。でも、今こうして動き出したお前なら、絶対に何か変えられるはずだ。」


その言葉に、涼太の心に灯った迷いが少しずつ晴れていくのを感じた。



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その日の夜、涼太は自分の部屋で履歴書を作り直していた。圭介の紹介で企業に応募する準備を進めるためだ。これまでの職歴を思い返しながら、過去の失敗や後悔が頭をよぎる。


「これでいいのか……?」


手を止め、深く息を吐いた。過去の自分は、こうした不安や迷いを抱えたまま何も行動せず、結果的に自分を追い詰めていった。しかし、今は違う。やり直すチャンスを得た以上、立ち止まるわけにはいかない。


「ダメなら、またやり直せばいい。それが、今の俺にはできるんだ。」


涼太は自分にそう言い聞かせながら、履歴書の作成を再開した。



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翌日、涼太は圭介に履歴書を送り、企業に紹介してもらう手はずを整えた。


「これで一歩前進だな!」


圭介からの返信には、短い励ましの言葉が添えられていた。涼太はスマートフォンの画面を見つめながら、小さく微笑んだ。



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一方で、真奈美との関係も少しずつ変わり始めていた。先日の就職説明会以来、真奈美は何かと涼太を気にかけ、彼の行動を応援してくれるようになった。


「最近の涼太、なんかいい感じだね。少し前より、生き生きしてる気がするよ。」


真奈美の言葉に、涼太は照れ臭そうに頭を掻いた。


「そうか? まあ、やり直すって決めたからな。」


「やり直すって?」


「いや、なんでもない。」


真奈美には事情を話せないが、彼女の存在が涼太の心を大きく支えていることは確かだった。



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こうして、涼太は少しずつ未来への道を切り開いていく。しかし、この先にはまだ予想もしない壁や試練が待ち受けている。それでも、涼太は自分を信じ、前へ進む覚悟を決めていた。


「夢と現実、その間で揺れる今の自分。でも、もう逃げない。」


涼太の新しい人生は、次なる選択へと動き出していた。

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