DIE2話 弓矢の女その4

 ガシャン!


「ああっ!?」


 レイラはとっさにしゃがんで強風をよけた。少しでも反応が遅れていたら、彼女は重症か死んでいただろう。持ち前の運動神経の良さと幸運が役立った。


「クソッ! 風の向きを微妙に変えることが出来るのか」


 家バレしている以上、相手を殺す必要がある。だが、相手を狙撃するには、カーテンを開かなければならない。もしそんなことをすれば、ガンハンドマンは格好の的になるだけだ。

「防弾チョッキを付けて、バルコニーに出て相手を見つけるか……。いや、相手を見つける前にやられるのがオチだ……」

「ねぇ、ジューキさん」

「この街のビルの配置は覚えているから、大体の位置を読んで、窓越しの狙撃なら……」

「ジューキさんったら!」


 ビュッ!


 4回目の強風がレイラの向かい側の壁に当たった。充機は我に返って、レイラを見つめる。


「すまない。考え込んでた」

「もう! 早く逃げようよ。このままこの部屋にいたら、殺されちゃうよ!」

「逃げるのも1つの手だが……」


 充機の隠れ場所を突き止めるほどの殺し屋だから、標的の逃亡後のプランも立てているだろう。だからと言って、この部屋にとどまるのは危険すぎる。充機は目を閉じて、あらゆる脱出方法を考えた。そして、導き出した結論は――。

「ふぐっ!」


 充機はうつぶせから横向けになり、自分自身の左脇腹を撃ったのだ!

(続く)

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