第30話

夜は更け日は登り、また沈み

ついに身請けの時がやってきた



私は髪を結い上げ紅を引き、美しい桜色の着物を身に纏っていた




「姉様、お綺麗でございます」


菊の言葉に笑みを浮かべる




さて、そろそろ時間だろう


「桜花様、右近様がお着きにございます」



その言葉に無言で頷くと、跪きこうべを垂れる


大丈夫だ。もう覚悟は出来ている




程なくして襖の開く音がした



「お待ちしておりました。右近様、いえ、旦那様」


ゆったりと頭を上げ笑みを浮かべると、一瞬固まった男は直ぐに破顔して




「美しい!!!身請けした甲斐があったぞ!」



その猿のように喚く姿にクスクスと笑いを漏らす

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る