第23話

「どうした?何か悪いことでもしただろうか。何故お前はいつも泣くのだ?」




オロオロと困ったように笑う貴方様にクスッと笑みが漏れる





その日、貴方様が私を抱くことはなかった





ただ涙を流す私の頭をいつまでも優しく撫でてくれた





次の日も、その次の日も貴方様はここを訪れては、ただ静かに寄り添っていてくれた



とても穏やかで暖かい夜

なのに涙が出そうになるのは...



そして



その日はやってきた




「明日にはこの街を出ることになった」




旅の楽士である貴方様のこと、いつかはこんな日が来ることはわかっていた




「そうでありんすか...」



あぁ、やっとわかった



貴方様のそばにいてこんなにも胸が高鳴るのは

切なくなるのは

泣きたくなるのは



私は




貴方様に




恋をしてしまった




決して犯してはいけない罪を犯してしまった




ずっとそばにいてほしい

いやだ

もっと近くにいたい



でも



私に貴方様を止めることは出来ない

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