第22話

「あの時はありがとうございました。わっちは桜花と申します」




にっこりとした笑みを浮かべる私に向けられる視線に含まれているのは、軽蔑か蔑みか




どちらにしろ私は気がづいてしまった



貴方様は私を買うことが出来るが私は貴方に対してなにも出来ない事を



買うものと買われるものの身分の違いを




胸が痛い




出来る事なら出会いたくなかった


ただ桜の木下で出会った、ただの男と女でいたかった



そんな細やかな願いでさえ私には叶えることが出来ない




それならいっそのこと



「いい名だな」



出会わなければよかった




そこにあったのはあの日と変らぬ優しい笑み




あぁ、胸が痛い



締め付けられるように、絶え間く暖かく切ないものが波となってこみ上げてくる




目頭が熱くなる

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