第21話

その3日後

私は初めての客を取る事となった




相手は旅の楽士だそう

遊郭に来るのは初めてらしく仲間に連れてこられただけ特別興味を示す様子もない




初めて紅をさし、ここのお店では一番下級の女が着る藤色の着物に袖を通し男の訪れをまつ



頭を下げてちょうど五十を数えたとき




「ようこそ、お待ちしておりました」



襖の滑る音がした



ドキドキと脈打つ心臓

緊張を悟られぬよう、夕霧姉様を思い浮かべながらゆったりと頭を上げたそこにいたのは




うそ...




あの笛の男だった



「おまっ...」




それ以降、言葉を発しない彼に何故がギシリと鈍い音が身体の中から響いた




焦ったのは最初の一瞬だけ




だって目の前の光景が真実




ここは遊郭

わしたは彼に買われた

ただ、それだけ




ただ、それだけの事が何故こんなにも苦しいのだろう

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