第14話
ーーーー......
私があのお方に出会ったのは、ここに拾われてから3年ほど経った、ある春の月夜
その頃にはすでに客を取るための訓練が始まっていた
遊郭に拾われた子はまず始めに花魁を目指す全ての子が平等にチャンスを掴めるよう出身で差がつかぬよう、訛りを隠す意味も込め花魁コトバを叩き込まれる
それが終われば、舞などの芸事、所作や教養、そして床仕事の勉強だ
芸事や教養は体力を使うが何より辛かったのは床仕事の勉強だ
まだ、身体も未完成なうちから与えられる、強烈な快楽は気持ち良さよりも先に恐怖が襲ってくる
そんな日々に耐えきれなくなった私は、ある春の夜に逃げ出した
橋を渡り木々の間を抜け、走り着いた先は、森の中の大きな桜の木の下
生き生きと枝を伸ばし、美しい桜の着物を纏う一本の大木。
風に吹かれ舞うように散る花弁
綺麗......
なびく長く黒い髪を手で押さえながら、ただただその美しくどこか切ない姿を眺めていた
どのぐらい経っただろう
あたりも薄暗くなり、遠くでは吉原の灯りが輝く頃
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