第11話
「右近様、お時間でございます」
花魁は夜に生きる女
朝日が昇りきる前に床を後にするのが花魁を買う上での暗黙の了解となっている
菊の声に、上でケモノのように腰を振っていた男が動きを止めた
「...わかった」
「それでは失礼します」
ここから、お客には四半刻(約30分)の猶予が与えられる
その間に身支度を整え部屋を出なければならない
もし、守られないようなら倍の金額を要求され、尚且つ2度とここへ出入りすることはできないのが決まりだ
いそいそと身支度を整える男の後ろ姿を、冷めた目で見つめる
「桜花...」
愛おしげに頬に触れながら呼ばれたのは私の名前
名前と言っても本当のものじゃない
お客を取るときの名だ
まぁ、本当の名前など知らないのだが
そっとその手に自分のものを重ね、寂しげな表情をつくる
「右近様、またお会いしとぅございます」
微塵も思っていないがこれも仕事だ
花魁を買えるのは相当裕福なもの
一度手放してしまえば長く付き合える客は中々現れない
特にこの男クラスは上物だ
「あぁ、すぐに会えるさ。もう寂しい思いはさせないよ。期待してて」
頬をひと撫でし、怪しげな笑みを浮かべ部屋を後にした男に言い表せない不安がよぎる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます