第6話

ーーー......




私は孤児だった


いつ、どこで産まれたのかもわからない


本当の名前さえも




でもそれが特別不幸というわけではない


この町では、孤児なんてどこにでも転がっている


大人になれる子など一握り

食べるものがなく飢えに喘ぎ死ぬもの

盗みを働き嬲り殺されるもの

死などあたりまで誰も気に留めない



その中で生き延びている私は幸せな方だ



空腹で倒れそうになりながら歩いていた時

此処の主人に拾われた

それから、此処で1番花魁である夕霧ユウギリ姉様の元で働いた



姉様はとても美しい人だった

淡い肌色に、珍しく茶色がかった髪

瞳も黒ではなく灰色より




儚くて目を離したら何処かへ消えてしまいそうで

名前の通り霧のような人



捕まえたと思ってもいつのまにか消えて行く

その儚さと容姿にお客は絶えなかった




そしてある春の日の朝、姉様は死んだ

静かに、まるで眠っているかのように



涙は出なかった




姉様の死よりも死顔の美しさがより濃く頭に残っている

穏やかで、儚いその顔が


今までで一番姉様を美しいと思った



姉様の死後数日でわたしは座敷持ち、すなわちお客を取るようになり、そして今ではここで1番の花魁となった

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