第5話

「はい。姉様」




入り口で礼をするその姿に私は眉を寄せる





「菊。何度言えば覚える?両手は両膝の前方7cm。手は指を揃えて両の人差し指をくっ付ける。わかったかい?ほらやり直しだ」





「はい。ーーー桜花オウカ姉様、失礼致します」




まだぎこちなさは残るが及第点だ




「よろしい。お前もそろそろお座敷に上がる頃だ。今のままではいけないよ?」




下を向いてしゅんと肩を落とす姿に、思わず手が伸びそうになるがグッと拳を握り止める




ここは吉原



甘えは許されない



弱さはその身を滅ぼすことになるのだから






強くなれ

男にも女にも己にも負けないように






私は心の中でそう願うしかできないのだ

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