卒業します
@kasuudonn
卒業します
俺達の青春が、終わろうとしている。
次々と、俺と青春を共にした奴らががこの場所から出ていく。
聡太、こいつは俺のことをいつも引っ張って行ってくれた。
一緒にバカをして、田んぼに落ちたのも、今ではいい思い出だ。
「聡太、また会おうな!」
聡太は何も言わずにこの場所から去っていった。
健介、こいつは、最初はめちゃくちゃ真面目で言う事を聞いてくれたのに、途中から聞いてくれなくなった。
でもその後仲直りしたのも、今ではいい思い出だな。
「健介また遊ぼうな!」
少しだが頷いているように見えた。
陽子、俺の人生で一番最初に出来た彼女だ。
買い物に行くときも、フェスに行くときも、趣味のスノーボードをしにいくときも、ずっと一緒だった。
数年前に別れたが、別れてからも何度か、一緒に買い物にいった仲だ。
「またスノーボードしにいこうな!」
「もう!私達わかれたでしょ?」
別れた後いつも言っていた言葉を言っている様に聞こえた。
メルセデス、こいつは数年前からこの場所に転入してきた。
ドイツ語しか話せないし、無口な奴だったから苦労したな。
だが、そんな思い出すら今は尊い。
「ありがとう!アルベルト(ドイツ語)」
恥ずかしそうにこちらを見ているように見えた。
他にも色々な奴がこの場を去っていく。
そしてついに、一番の親友、亮太が去って行こうとする。
俺は急いで聞く。
「俺達、永遠に親友だよな?」
「当たり前だ」
亮太は何も言わなかったが、俺にはそう言った用に聞こえた。
亮太はその後何か言いたそうだったが、結局何も言わずにこの場から去って行こうとする。
亮太は一番最初に出来た友達だった。
暇さえあればずっと亮太と一緒に遊んでいた。
そんな亮太と遊べなくなるなんて、この瞬間まで少しも考えられなかった。
そう考えるだけでも、今まで我慢していた涙が溢れてくる。
気づくと、ちょうど亮太がこの場所を去ろうとしている所だった。
全員に言いたかったけど恥ずかしくていえなかった言葉。
この日が来る前に言っておけばよかった言葉。
「亮太、ありがとう!」
亮太は照れくさそうな顔をしながら、手を振り去っていった様に見えた。
そして、ついに俺の番が来た。
俺は、車買取センターと書かれた扉から出て、免許返納センターへ歩いて行く。
そう俺は、今日ですべての愛車を手放し、車運転生活俺の青春を卒業する。
卒業します @kasuudonn
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