Second Impact 15

「関、おまたせ」

「…――――あの子は、無事だったか?」

「うん、…。永瀬さんが診てくれてるし、滝岡も神尾先生もいるからね。…僕達にはもう、何もできないけど、でも、大丈夫だよ」

「――だな。あいつらに任せよう。俺達は俺達に出来ることをやるしかないさ」

車を慎重に出しながら、関が青空の下に広がる街を見つめて云う。

 街に住む人、通り過ぎる人、―――…。

 その総てを、あらゆる事から守ることは出来ない。

 唯、降り掛かるその災いを、もし減らすことができるのなら。

「俺達に出来ることをしよう」

「うん、…だね」

 助手席から遠く青空を仰ぎ見て鷹城が頷く。

 青空を白く雲が流れて行く。

 行く先が何事も無く。

「何事も無い世の中っていうのが、続くと一番いいね」

「当り前だ。俺達の仕事は、その為にあるんだからな」

車を滑らかに運転しながら、関があきれたようにあっさりと云うのに。微苦笑を零して、鷹城が青空を仰ぐ。

 白く筋雲が流れる先を、予測することなど誰にも出来ない。

 そう、だからこそ、…――――。

 朝が。

 新しい朝が、何事も無く、滞りなく。

 極普通の朝が、いつも来るように。


 それだけの為に。



「関」

「なんだ?」

 車を運転しながら、視線を向けずにいう関に鷹城が微笑む。

「あの子、治るといいね」

「…――大丈夫だ」

「うん」

 唯、出来ることを。

 重ねていく。

 ひとつずつ、…――――。




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