第8話 夢という名の投資信託 ~ 未来への希望を育む、心のポートフォリオ ~
「一億円あったら何に使いますか?」
かつてこの質問は、子供たちの目を輝かせ、「世界一周旅行!」「ディズニーランドを買い取る!」「宇宙旅行!」という夢いっぱいの答えを引き出したものでした。
ところが今や、AIにこの質問をしても返ってくる答えは...
「5000万円は分散投資に」
「2000万円は住宅ローンの頭金に」
「1000万円は老後の備えに」
……………
ああ、なんという堅実さ。なんという現実主義。
私たちは、いつからAIにまで「堅実な資産運用」を教え込むような社会になってしまったのでしょうか。
想像してみてください。
保育園で、先生が園児たちに教えるのです。
「はーい、みんな。今日は『夢』についての授業です」
「先生!宇宙飛行士になりたいです!」
「そうですね。では宇宙飛行士になるためのキャリアプランと、必要資金の積立計画を立てましょう。まず、iDeCo(個人型確定拠出年金)の説明から始めまーす」
塾では、チューターがこう語りかけます。
「君の夢は画家になることかい?素晴らしい!でも、まずは公認会計士の資格を取って、副業で絵を描くことから始めよう。投資信託のポートフォリオも組んでおくといいね」
結婚相談所のAIマッチングシステムは、
「あなたの『運命の相手』を見つけました!相手の方は、投資信託、保険、不動産投資のトリプル運用で、将来の資産形成をしっかりと...」
ついには、詩人の生成AIまでもが、
「春よ来い♪ 早く来い♪
資産運用の春よ来い♪
含み損に耐えながら
インデックス投資頑張る私♪」
なんという夢のかけらもない歌詞...
でも、考えてみれば当然かもしれません。
人間が作ったAIが、人間社会の不安をそのまま映し出しているだけなのですから。
老後2000万円問題、年金不安、終わりなき社会保険料の上昇...
私たちの社会は、AIにまで将来の金銭不安を植え付けてしまうほど、
深刻な状態なのかもしれません。
それでも、どこかで「夢」を持ち続けたい。
「一億円あったら?」
「全額、『夢』という投資信託に投資します!
リターンは、子供たちの笑顔です」
...というAIが現れる日を、夢見て。
(注:これは投資や資産形成を否定するものではありません)
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