3話 女官補佐の初仕事

第8話

一旦持ち帰らせてくださいと、返事をあやふやにしてビアーノに戻ったのに、昔からリリアナに甘かったはずの店主ボスコは「おー、そんなに給料がいいのか。そういやあ、調理場の発光石が一ヶ所そろそろ寿命だしなあ、初任給で買ってくれると助かるなあ」と言う。


 まあ確かに手元が大事な調理場の、灯りが乏しいのは良くはない。発光石はカンカンと軽く叩いて刺激すると光りだす仕組みなのだが、最近その一ヶ所がなかなか発光しにくくはなっていた、けども。


 そして、いつも労ってくれる女将のカーラも「客室棟ってことは、きらびやかで洗練され尽くした紳士淑女で溢れかえる場所だろう? こんなチャンスないよ、しっかり上流社会に染まっておいでよ。そーでなくてもリリアナは色気がなかなか備わらないんだから、勉強させてもらいなよ」と、あっけらかんとしている。


 そりゃまあ確かに、細いし小さいしで色気もなければ一歩間違ったら性別もどっちでもいける見た目だけども。化粧っ気もなければ興味もなく、好きな人も出来たことなければ告白されたこともない、けども。


 店が忙しくなるとか寂しいとかがひとつも出ないどころか、もろ手をあげてジャンプ状態である。思ってたのと違う。

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