第5話

一年A組の教室を素早く出て、美乃里ちゃんの視界から逃げ出しつつ、もはやクセとなっているB組チラ見チェック行為。

 残念ながら想い人である峯森誠司くんはご不在のようだ。


 三階から外階段を降りて、校舎裏門近くのゴミ捨て場まで、大きなゴミ箱を引きずらないように持ち上げてくてく歩く。

 そこで私は運命を感じた。いたのだ、誠司くんが。部活の先輩なのだろうか、同じようにゴミ箱を持ったまま何か話し込んでいた。


 これは運命だ。いつも理由をつけて無理矢理目撃することはあれど、こんな偶然で出会うべくして出会うなんて、奇跡通り越して運命でしょ。


 急いでゴミ箱の中身を「ていやっ」とゴミ捨て場へ放り入れて、そそっと何気ない場所へ、位置取り完了。あとは、誠司くんの話が終わるのを待てばいい。


 ああ、相変わらず可愛らしい。この斜めうしろからの絶景。あの頬の柔かそうな曲線。きれいに切り揃えられた襟足。背筋のピシッと通った立ち姿。どうしてそんなに素敵なの。

 先輩の話を真剣に聞いて頷いている、その真面目さ。きっとあの大きな瞳をキリッとさせているんだろう。ああ、見たい。……ちょっと、もうちょっと前側にまわって見よう。だってせっかくのチャンスだよ。こんな近くで長時間拝めることなんてないもんね。

 あ、目が合ったかもしれない! いや、今確実に誠司くんの大きな目がさらに見開かれて即座に細められたもん。絶対私を確認したに違いない。あ、ほら、ちょっと背中向けるような立ち位置に動いた。気付いてもらっちゃった。

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