第3話
「うっそ、コクったの?」
「付き合うことなっちゃった」
「えー! すごい!」
中学生になると、途端にこの手の話があちこちで勃発する。
給食を終えて掃除時間。手に箒を持ったまま、彼女達の手は完全に止まっている。仕方ないので、いつもより倍速で箒を動かす、耳だけしっかり傾けて。
「土曜にデートするんだぁ」
「どこいくの?」
「えへへ」
幸せなオーラが甘い匂いになって、プンプン漂ってくるようだ。パンケーキに遠慮なくシロップたっぷりかけた、あの幸せな甘い匂いだ。
「毎日一緒に帰るだけでも嬉しいんだけど、やっぱりデートは特別嬉しい」
「そうだよねー。いいなー」
「いつだっけ? 何年か後に、でっかい遊園地できるじゃん?」
「その頃にも一緒に行けたらいーなー」
やっぱり“付き合う”っていうものは、とてつもなく男女の団結を強くするらしい。だって、学校以外の場所でもわざわざ時間を作って一緒にいる、ということなんだ。それってすごくない?
A組の私が、不自然かつ無理矢理に用事を作ってB組へ行かなくていいんだよ。偶然を装って廊下ですれ違わなくていいんだよ。部活の時間のほとんどで、テニス部覗かなくていいんだよ。
だって、土曜日にお互い約束してデートに行くんだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます