第2話

“恋”と書いて“失敗”は、小学校最後の学習発表会で火蓋を切る。

 小さな田舎町で一学年一クラスしかない。好きになった男の子はいわゆるずっとクラスメイトだったのに、私の目に飛び込んできたのが小学校生活もほぼ後半のそのタイミングだ。

 六年生の演目が“セロ弾きのゴーシュ”で、その子は三毛猫役のうちのひとりになっていた。

 そう、猫仕様になったその子の、ふてくされた表情と、もふもふのギャップが、ズバリ私のハートを射ぬいちゃったわけだ。


 彼がちょっと動けば「かわいい」。ちょっと尻尾が揺れれば「かわいい」。顔真っ赤になって睨まれても「あーかわいい」と心の声が漏れまくっていたせいで、彼に完膚なきまでにフラれ嫌われたまま、小学校を無事卒業してしまったのだ。

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