第9話
戦闘機のキャビンに収容されたアッシュとレイナは、やっと安堵の表情を浮かべることができた。
冷たい金属製の床に座る。疲れ果て倒れてしまいそうなレイナの体を、アッシュが支えた。
戦闘機のエンジン音は安定しており、空気には緊張感よりも安全な空間特有の静けさが漂っていた。
「お前ら、本当によくやったな。信じられない」
操縦席から声が響いた。戦闘機のパイロットは背後を振り返り、敬意を込めた視線を二人に向けた。
「世界を救った英雄だ。君たちのおかげで、俺たちは明日から安心して寝起きができる」
「俺たちだけの力じゃない。科学と君たち同志の支援があったからこその勝利だ」
アッシュは肩をすくめた。
「英雄がこんなボロボロだなんて笑えるわね」
レイナも微笑み、両手を上げて首を振った。
「ゴリアテは消滅、これで、本当に終わったのよね」
その言葉に、パイロットは少し眉を寄せた。
「だといいが。共通の敵を失った人類が、また人間同士で争い始めるんじゃないかと思うと、楽観視できない」
「そうはならないわ」
レイナは即座に反論した。その声には、力がこもっていた。
「カオス・ゴリアテが存在している間、人々は協力しなければならなかった。それがどれほどの強い絆を生んだか……世界中で立ち上がった人々の姿を見たでしょう? アッシュだってそう。その絆が無駄になるとは思えない」
「でも、コード・ブレイカーは、もう不要になるだろう。それでいいんだが」
アッシュが冗談めかして言うと、レイナは少し驚いた表情で振り向いた。
「不要に……なる?」
「ああ、平和になったら、俺たちみたいな改造人間は何の役にも立たない。まあ、建築現場で働くとか? 鉄骨を持ち上げるには役立ちそうだろ」
アッシュは天井を見上げて肩をすくめた。
「……そうね。じゃあ、私も手伝うわ」
レイナが微笑むと、2人は平和な空気に包まれた。しかし、その直後、ノイズとともに通信端末が緊急のメッセージを信し始めた。
「緊急事態、東京で巨大な人造人間が出現。市街地を襲撃中……形態はカオス・ゴリアテに酷似……」
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