第6話
彼女は突き刺した腕から、カオス・ゴリアテの制御OSへと侵入した。そして、GhostGate666と名付けられたファイルを探し出し、起動した。
「そんな、ゴミファイル……まさか……!」
「そのまさかだ! これは父……八乙女 宗一が残したもの」
レイナの父はかつて、ゴリアテの制御OSの開発に関わっていた。このファイルは、彼が残したバックドア――制御を無効化する鍵だった。
「私の生体情報で起動するように暗号化されていた。だから、お前は気がつかなかった。父は殺される可能性を予測して、私にそのことを記憶させた」
カオス・ゴリアテは、ギリギリと歯を鳴らした。
「ファイルにたどり着くには、お前のシステムに直接、侵入する必要があった。だから、新技術をちらつかせて、吸収させるように仕向けたのよ!」
その直後、カオス・ゴリアテは、体をブルっと震わせて動きを止めた。
「減らず口はもう、叩けないか。アッシュ、成功よ。クリスタルの取り出しオペレーションに入るわ。こいつの、モニターをお願い」
腕の脇から器具が展開される。レーザーメス、ドリル、その他、精密なツールが次々に姿を現し、作業を開始した。
アッシュは、センサーをフル稼働させてカオス・ゴリアテのモニターを開始した。
「レイナ! 悪い知らせだ……自爆タスクが起動した。核融合炉が暴走を開始している。外部から止めることができない。奴はこういった自体を想定していたんだ。世界を道ずれにするつもりだ。残り時間は130秒……」
「それだけあれば、十分!」
レイナは、作業を続けながら言った。
「お願いがあるの、アッシュ。ブースターを全開にしてスタンバイしてて。クリスタルを取り出したら、あなたがそれを持って、空中に脱出するの。戦闘機があなたを、回収してくれるわ。カオス・ゴリアテは破壊され、核ミサイルも発射されない。世界は救われる……」
アッシュは黙ったまま、目を細めて彼女の背中を見つめた。
「君は……どうなる?」
「解除は時間ギリギリ。脱出は難しいわ。私はコード・ブレーカー。こいつのプログラミング・コードを
その言葉に迷いは感じられなかった。
アッシュは、無心に任務を遂行するレイナの姿を、虚ろな眼差しで見ていた。
「それじゃ、ダメなんだよ……」
つぶやきは、誰にも届かず大気の中へ溶け込んだ。
次の瞬間、アッシュは信じられない行為に出た。
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