第5話
「殺した奴が多くて覚えてないな……冥途の土産に、検索してやろう。おお……お前は、あの男の娘か。思い出したぞ。彼は優秀なエンジニアだった。つぎはぎだった俺の制御システムを、美しく整理してくれた」
「貴様は、そんな父に手を掛けた!」
「お前を研究所から逃がそうとしたからだ。幼いお前は、見せしめに砂漠に放り出してやった。まさか、生きていたとはな」
レイナは体を捻って拘束を解こうとするが、びくともしない。
「裏切り者の娘。こうして現れたのは因縁か。その技術ごと俺が吸収してやる。父とあの世で、悔恨に浸るがよい」
胸の装甲に亀裂が入り開いていく。そこから、これまでとは異なる、禍々しい黒い触手が伸び出した。鼻につく匂いを漂わせ、生きている生物のようにうごめいている。
「何、これ……」
触手は蛇のように、レイナの細い体に巻付いた。
「吸収用の触手だ。無数のコード・ブレイカーを私の力としてきた。お前も、俺の一部となるのだ」
そのとき、レイナは開いた装甲の奧に、青白く光るガラスのような球体を見た。
「……ハートビート・クリスタル!」
世界中の核兵器を発動させるシステムの
レイナは唇を噛んだ。触手の締めつけに痛みで身を震わせながらも、彼女は視線をクリスタルから離すことができなかった。
「壊してもいいぞ。世界が滅んでもいいならな。俺こそが究極! 何人も俺の命を奪うことはできないのだ!!」
黒い触手が、さらに強くレイナの体を締め上げる。触手から無数の細い針が突き出し、レイナの全身に侵入した。痛みと圧迫で、レイナは悲鳴を上げた。
「ぎゃああああ!」
「手足はエッジコンピューター制御か。よくできている」
カオス・ゴリアテは、楽し気に言葉を続ける。
「アッシュ……お願い。私を、撃って……」
震えるレイナの声には強い決意が込められていた。
「私のテクノロジーが、ゴリアテの手に渡ったら終わり……勝つ手段がなくなる……だから、撃って……お願い!」
アッシュは左腕を上げ、レーザー砲をレイナに向けた。
「させるか! 制御OSにたどり着いたぞ。カーネルが丸見えだ。俺のシステムに取り込んでやる」
カオス・ゴリアテは、レイナを吸収するために自身の制御OSのプロテクトを解除した。その瞬間、レイナの目が鋭く光った。
「油断したな、カオス・ゴリアテ! これが、私たちの狙いだ!」
レイナは右腕の剣で触手を切り裂いた。
拘束から抜け出すと、ブースターを全開にしてカオス・ゴリアテに突進した。鋭く突き出した右腕が、光り輝くクリスタルの脇に刺さった。
「……割り込みタスク、GhostGate666を起動!」
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