第4話

 アッシュの脳裏に、平和な街の記憶がよみがえる――カオス・ゴリアテが都市を襲撃した、あの日。瓦礫と化した街、崩れ落ちた建物。無惨に命を奪われた両親と、友人たち。


 アッシュは災禍を生き残った――だが、体は激しく損壊した。彼は全身を機械化し、戦士として生き永らえた。


 アッシュが咆哮を放つと、その姿が消えた。次の瞬間、カオス・ゴリアテは腹に強烈な衝撃を感じ、背後に吹っ飛ばされた。砂埃を上げて地面に激しく転がる。


 しかし、カオス・ゴリアテは即座に立ち上がり、余裕の表情で首を鳴らした。


「初めて見るテクノロジーだ。隠れて新技術を開発していたというのは事実だったのか。それだけで、万死に値する」


「俺のパワーは理論上、お前を上回っている。覚悟しろ」


「では、俺も本気を出そう」


 カオス・ゴリアテは突進し、強烈なパンチを繰り出した。アッシュは両腕をクロスさせ、それを受け止めた。


「それで本気か? 軌跡が単調で、もろばれだぞ」


 カオス・ゴリアテは、背後に跳躍して距離を取った。


「ぐふっ」


 カオス・ゴリアテが、右ひざを地面に突いた。レイナの重いキックが背中にヒットしたのだ。


「忠告、聞いてないみたいね。私を忘れてもらったら困るんだけど」


 着地したレイナは、右手を構えてレーザーを発射した。光の弾丸がカオス・ゴリアテの背中に命中し、激しい爆発が起きた。


「痛いだろ、コード・ブレイカー!」


 カオス・ゴリアテは、目を真っ赤に輝かせて怒りの表情を見せた。


「女戦士、お前からだ!」


 突進してくるカオス・ゴリアテを、冷静に観察しながらレイナが叫ぶ。


「ブースター、全開!」


 ジェットエンジンのような音が響き、彼女の足元から白い煙が噴き出した。ゴリアテが腕を振り下ろしたときには、レイナの姿はなかった。


「すごい機能でしょ!」


 跳躍したレイナは、空中からゴリアテの背中を見下ろしていた。


「欲しい! その技術をコレクションに加えてやる」


「寝言は、寝てから言ってよね」


 レイナは右腕の剣を前面に突き出し、ブースターを全開にして敵の背中に突っ込んだ。そのとき、カオス・ゴリアテの目が閃いたことに、レイナは気付かなかった。


「回避しろ!!」


 アッシュが叫ぶが、遅かった。カオス・ゴリアテの背中がパックリと開き、無数の触手が現れた。ブースターを弱めたレイナは回避できず、触手に絡めとられた。


 レイナは、動きを封じられたが、戦意を失ってはいなかった。


「絶対に倒す……父の仇。この名前、覚えているか。『八乙女 宗一』 私は娘の玲奈レイナだ」

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