第3話

 昨年の中国での爆発。まき散らされた核物質で北京は死の街となった。


「カオス・ゴリアテ――いや、ロシアの科学者、パヴェルス・モルノフ。貴様のせいで、世界中に高性能なネットワークを構築しなければならなくなった。お前専用の回線にいくら掛かっていると思っている」


 カオス・ゴリアテが発する信号を、世界中の核施設に届けるため、各国政府は高額な投資を行っていた。手違いで信号が途絶えると、取り返しがつかないことになるからだ。


「世界を人質に、貴様はあらゆる最新技術を集めている。その技術で作り上げたのが、その醜い外見というわけね。本当に趣味が悪いわ」


 カオス・ゴリアテは、核兵器を盾に集めた最新技術を自ら取り込み、力を増強し続けていた。


 レイナは、アッシュに無線通信を送った。


――高エネルギー反応を確認。核融合炉の出力を上げている。次の攻撃はパワーアップしてくると思う。


――奴も時間稼ぎをしていたってわけか。


「休憩はおしまいだ。コード・ブレイカー!」


 コード・ブレイカー――機械で戦闘向けに肉体を強化した人造人間。


 2人とも、右腕には大剣、左腕には高出力レーザー砲、足には高速移動を実現するライトニング・ブースターを備えていた。


 アッシュは大男で、剛力で硬い装甲を切り裂くことができる。一方、レイナは素早い身のこなしと驚異的な反応速度で俊敏に動き回り、相手の弱点を付く。


「アッシュ! 変形する。気をつけて!」


 カオス・ゴリアテの巨大な左腕が、鋭利な刃へと変形した。直後、地響を上げて地面を蹴った。乾燥した砂を巻き上げたかと思った直後、カオス・ゴリアテはアッシュの目の前に迫っていた。


「は、速い!」


 カオス・ゴリアテの左腕が突き出される。アッシュは動きを寸前で読み、横へと飛び退いた。刃が地面に突き刺さり、大地を破裂させる。


「まだ足りんか。では、さらに速度を上げてみよう」


 素早く飛び起きるたアッシュは、背後に跳躍して距離をとった。


「通常攻撃じゃ倒せない。レイナ、あれを使うぞ!」


「待ってました」


――オーバードライブ、起動!


 2人が同時に声を上げると、全身が青く光り輝き始めた。周囲の空気がビリビリと震える。装甲の隙間から蒸気が吹き出し、周囲に無数の小さな稲妻が走った。


 オーバードライブ――それは、内蔵電源の出力を限界まで引き上げ、一時的に戦闘力を向上させる機能だ。


「殺された者の恨み、晴らさせてもらうぞ。ゴリアテ!!」

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