第15話 未来の扉

 学期末が近づき、教室はどこかそわそわした雰囲気に包まれていた。

 担任の先生が、黒板に「未来の夢」と書き、クラス全員に語りかけた。

 「みんなにとって、未来はどんなものですか?今日はその夢を一人ずつ発表してもらいます。大きな夢でも小さな目標でも構いません。自分の未来をみんなに教えてください。」


 教室がざわつき、みんなが何を話すか考え始めた。カズキも机に突っ伏しながら悩んだ。

 「僕の夢ってなんだろう…。でも、みんなみたいにかっこいい夢はないし…。」


 その夜、カズキは魔法石を手に取り、いつものように相談した。

 「魔法石、僕、未来の夢なんてないかも。みんなの前で何を話せばいいか分からないよ。」


 魔法石は優しく光りながら答えた。

 「カズキ、夢は必ずしも特別なものである必要はないよ。君が大切にしていること、その延長が夢になるんだ。たとえば、君がずっとしてきたように、誰かを元気にすること。それも素敵な未来だよ。」


 カズキはハッとした。「そうか。僕がこれまでやってきたことも、未来につながるんだ。」




 発表の日、順番が近づくにつれてカズキの心臓は高鳴った。

 「サッカー選手になりたい!」

 「お医者さんになってみんなを助けたい!」

 「デザイナーになって、素敵な服を作りたい!」

 クラスメイトたちの夢はどれも輝いていて、自分の発表がちっぽけに思えた。


 いよいよカズキの番が来た。教室が静まり返る中、カズキは立ち上がり、ゆっくりと語り始めた。

 「僕は、魔法のことばでみんなを元気にする人になりたいです。」


一瞬、教室は驚いたように静かになったが、すぐに誰かが「カズキらしいね!」と笑顔で言った。

 それをきっかけに、他のクラスメイトも次々に声を上げた。

 「分かる!カズキって、いつも元気な言葉をくれるよね!」

 「僕もそんな人になりたいな!」

 「カズキのことばに、いつも助けられてるよ!」


 その言葉を聞いた瞬間、カズキの胸は温かさで満たされた。自分がやってきたことが、みんなの心に届いていたんだと気づいたからだ。




 その日、放課後にカズキは魔法石を手に取り、静かに語りかけた。

 「魔法石、僕、未来の夢が見つかったよ。みんなを元気にする人になりたい。それって、僕がずっと君と一緒にやってきたことだよね。」


 魔法石は柔らかな光を放ち、こう答えた。

 「カズキ、それが君の未来の扉だよ。君の言葉がこれからも多くの人を支えていく。そして、その扉の向こうには、たくさんの笑顔が待っているよ。」


 カズキは深く頷き、魔法石をそっとポケットにしまった。

「 ありがとう、魔法石。君と出会えて本当によかった。」




 教室を出ると、窓から差し込む夕陽が校庭をオレンジ色に染めていた。

 「これからも、僕の言葉でみんなを笑顔にするんだ。」


 カズキは未来への一歩を踏み出すように、力強く歩き出した。彼の胸の中には、小さな魔法のことばが輝き続けていた。


 そして、その光は、彼の未来を照らし出す灯火となった。

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ことばの魔法 まさか からだ @panndamann74

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