第13話 友情の橋
ある日の昼休み、教室内の雰囲気がどこか重苦しかった。
いつも仲良しのマコトとショウタが、それぞれ机に座ったまま互いに顔を背け、口をきかなくなっていたからだ。
「あの二人、喧嘩したらしいよ。」
近くのクラスメイトがひそひそ話しているのを耳にしたカズキは、心配になった。
二人がいる教室の隅をちらりと見ると、どちらも不機嫌そうにしていて、明らかに険悪な雰囲気だ。
カズキは思わずため息をついた。
「どうしたら二人を仲直りさせられるんだろう?」
その日の放課後、カズキは家に帰ると魔法石を取り出して相談した。
「魔法石、マコトとショウタが喧嘩をしてるんだ。クラスの空気が重たくて、なんとかしたいんだけど…どうすればいいかな?」
魔法石は優しい光を放ちながら答えた。
「『一緒に何かを作ろう』という提案が、心の橋を架けることがあるよ。作る過程で意見を交わしたり協力したりすることで、自然と心が近づいていくんだ。」
その言葉にカズキは思い当たることがあった。
「一緒に何かを作る…それなら、壁新聞を作るのはどうだろう?みんなが見られるものだし、楽しそうだ!」
次の日の昼休み、カズキは早速行動に移した。まずはマコトの席へ行き、小声で提案をした。
「マコト、ショウタと一緒にクラスの壁新聞を作ってみない?みんなの思い出を集めたら面白いと思うんだ。」
マコトは一瞬、驚いた顔をしたが、すぐに渋い表情になった。
「…別に俺、一人でもできるし。」
その言葉に負けず、カズキはショウタのもとへも同じ提案をした。
「ショウタ、マコトと一緒にやったらきっといいものができるよ。お前の絵、すごく上手いし。」
ショウタも少し迷った様子だったが、カズキの熱意に押されて渋々頷いた。
こうして三人は放課後、図工室に集まり、壁新聞作りを始めることになった。
最初のうちはぎこちない空気が流れていた。マコトとショウタは必要最低限の言葉しか交わさず、それぞれの作業に没頭していた。
しかし、カズキは二人の間を行き来しながら、どちらにも声をかけた。
「ショウタ、この絵、もっとカラフルにしたらどうかな?」
「マコト、文字の配置、もう少し中央に寄せてみたら見やすくなるよ!」
カズキの積極的なサポートのおかげで、少しずつ二人の間にも言葉が増えていった。
「この写真、どこに貼る?」「この見出し、ちょっと変えたほうがいいかもな。」
そんなやり取りを繰り返すうちに、マコトとショウタは自然と意見を出し合うようになった。
作業が進むにつれ、二人の顔に少しずつ笑顔が戻ってきた。
「ショウタ、この絵、やっぱり上手いな。俺、こういうの描けないから羨ましいよ。」
「マコトの字もカッコいいじゃん。お前が書くと新聞っぽくなるよな。」
お互いを褒め合うようになると、教室内の空気も一気に和らいだ。カズキは心の中で「よし、これで大丈夫だ」とほっとした。
壁新聞が完成したとき、三人は達成感でいっぱいだった。
「すごいのができたな!」
「これ、みんなに見せるのが楽しみだね。」
そのとき、マコトがぽつりとつぶやいた。
「ごめんな、ショウタ。この前、意地悪なこと言っちゃって。」
ショウタも一瞬驚いたが、すぐに「俺も悪かったよ。つい言い返しちゃってさ。」と返した。
二人は握手を交わし、笑顔を見せた。その様子を見ていたカズキは、思わず心の中で「やった!」と喜びを噛み締めた。
その日の帰り道、カズキは魔法石を取り出して語りかけた。
「魔法石、ありがとう!マコトとショウタ、仲直りできたよ。壁新聞を作るのがいいきっかけになったみたいだ。」
魔法石は静かに輝きながら答えた。
「カズキが二人の間に立ち、橋を架けたんだよ。友情という橋は、誰かが勇気を持って架けることで初めてできるものなんだ。」
その言葉に、カズキは深く頷いた。そして、自分が二人をつなげる手助けができたことを誇らしく思った。
その後、クラスの壁新聞は教室の一番目立つ場所に貼られ、みんなの注目を集めた。
マコトとショウタも前よりさらに仲良くなり、カズキのクラスはまた明るい雰囲気を取り戻したのだった。
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