第6話 友達を助ける魔法
教室の昼休み、カズキは窓際の席で一人静かに座っているタケルを見つけた。普段は明るく、みんなの中心にいることが多いタケルが、今日はなんだか元気がないように見える。クラスの中は賑やかで、他の子たちは楽しそうに話しているけれど、タケルだけがぽつんと座っているのがカズキの目に留まった。
「どうしたんだろう?」カズキは気になり、タケルのところに近づいた。
「タケル、どうしたの?なんか元気ないみたいだけど…」
カズキが声をかけると、タケルは少し顔を上げたが、すぐにうつむいてしまった。しばらくして、タケルは小さな声でつぶやいた。
「昨日、ゲームで負けてさ…。そのことで友達に笑われたんだ。あんまり楽しくなくて…。」
タケルの声には元気がなく、カズキは何とかして励ましたいと思った。でも、どう声をかければいいのか分からなかった。
「うーん、どうしたらいいんだろう…」カズキは心の中でつぶやきながらポケットに手を入れると、そこにいつもの「ことばの魔法石」が入っているのを感じた。
「そうだ、魔法石に相談してみよう!」
カズキはそっと魔法石を手のひらに出し、心の中で語りかけた。「魔法石、どうしたらタケルを元気づけられるかな?」
魔法石がふんわりとした光を放ちながら、カズキの心に語りかけてきた。「カズキくん、『君がいてくれて嬉しい』ということばには、人を支える力があるんだよ。そのことばを伝えてごらん。」
「『君がいてくれて嬉しい』か…」カズキはその言葉を繰り返しながらタケルを見た。普段はみんなを笑わせるタケルが元気をなくしている姿は、なんだか寂しい気持ちにさせた。カズキは魔法石の言葉を信じてみることにした。
「タケルさ…」カズキは少し緊張しながら言った。「君がいてくれるだけでクラスが明るくなるんだよ。タケルがいると、みんな楽しいし、俺もすごく嬉しい。一緒にまた楽しく遊ぼうよ!」
タケルは驚いたようにカズキを見つめた。それから、少しずつ表情が柔らかくなり、やがて笑顔が戻ってきた。
「ありがとう、カズキ。なんか、ちょっと元気出たよ。」タケルはそう言って、立ち上がった。 「じゃあさ、次の休み時間、一緒にそのゲームやらない?今度はカズキにも教えてあげる!」
「いいね!俺もやってみたい!」カズキは笑顔で答えた。
その日の午後、二人は一緒にそのゲームを楽しみ、タケルの笑顔が戻ってきた。カズキもまた、友達を元気づけることができたという喜びを感じた。
その夜、家に帰ったカズキは魔法石を手に取り、心の中でお礼を言った。「ありがとう、魔法石。タケルを助けられてよかったよ。」
魔法石はほのかに光りながら答えた。「誰かを支えることは、自分の心も強くするんだよ。これからも、君の言葉でたくさんの笑顔を作っていこうね。」
カズキはうなずきながら、次に誰かが困っているときもこの魔法のことばを使おうと心に決めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます