第10話 ノア・ハジャルツ第一皇子!
ハジャルツ帝国の皇帝ハジャルツ8世の
まさか『サーザント英雄伝』のこの正真正銘の主要キャラとの初対面がラーグ
「では、ラーグ侯爵様。約束通りこの私のことを貴方のご子息の誰かが打ち負かすことができれば今回の件は全て水に流しましょう! ・・・・・・それで一体誰が私の相手をしてくれるのです?」
そのノア・ハジャルツ第一皇子の呼び掛けに最初に反応したのは、ラーグ侯爵家
「・・・・・・わたくしが、お相手致します」
おそらくは父の手前そう言わなければしようがなかったのだろう。
だが、その声と手は明らかに震えていた。
ノア・ハジャルツ第一皇子は俺と同じ10歳なのだが、4つ年上のわが兄、グラハム・ラーグとほとんど同じくらいの背丈だった。
陶器のような気品溢れる白い肌に、ハッとするほど美しい銀髪と
わが兄、グラハム・ラーグも優れた容姿をしているのだが、ノア・ハジャルツ第一皇子と並ぶと、やはり霞んでしまう。
二人は通常のロングソードより少し短い殺傷度の低い練習用の剣を構えて向かい合う。
二人ともほぼ同じような中段の構えだが、力の抜け方がまるで違う。
あんなに肩に力が入っていたら、相手の攻撃に素早く反応することはほぼ不可能だろう。
案の定、ノア・ハジャルツ第一皇子の
そこにノア・ハジャルツ第一皇子の容赦ない脳天への
それで、なんなくわが兄に勝利したノア・ハジャルツ第一皇子はこう言ったのだ。
「・・・・・・正直、がっかりしました。ラーグ侯爵家の力はこの程度なのですか? 誰が他に私に挑戦しようという方はいないのですか? こうなったら誰でもいいですよ! ・・・・・・もちろん、ラーグ侯爵様でも」
ここで、悔しそうなグラハム・ラーグの顔を一度見てから、もう一人のオレンジ色の髪の兄、シュリップ・ラーグが全く動こうとしないのを確信すると、俺は怒りの表情を作ってからこう言ったのだ。
「・・・・・・ノア皇子、それはさすがに父に無礼ではありませんか? ・・・・・・俺が相手になりますよ。・・・・・・でも、寸止めはできないかもしれませんがそれでもいいですか?」
その俺の挑発的な言葉にノア・ハジャルツ第一皇子はこう答えたのだった。
「君は確か・・・・・・ベルベッチア・・・・・・私と同い年の! ・・・・・・いいよ。君が今日の私の、最後の相手だ!」
剣を構えて向かい合うとさらに身長差を感じた。
相手の方が10センチは高いかもしれない。
それに正面から見ると本当に美しい顔をしているのがよくわかった。
その顔に俺がほんの少し見とれていると、またしても、ノア・ハジャルツ第一皇子は先制攻撃を仕掛けてきたのだった。
俺はそのこちらの脳天を狙った真向斬りを剣で受け止めて、薙ぎ払った。
ノア・ハジャルツ第一皇子は俺の迷いのない剣さばきに少し驚いているようだった。
しかし、驚いたのは俺も同じだった。
その一撃を受け止めただけで、相手の強さが理解できた。
手がジンジンする。
痺れてうまく動かないくらいに!
きっと日頃の鍛え方が違うのだろう。
というか、この体が怠けすぎなのだ。
長期戦になったら絶対に負ける!
俺はそう思って、一気に勝負を決めようと相手の左側の首元を狙って
だが、ノア・ハジャルツ第一皇子はそれをなんなく剣で受け止めた。
でも、そこまでは読めていた。
俺の真の狙いはこの後だった。
次の瞬間、俺は自分の剣から手を離したのだ。
剣はクルクルと派手に回転して空中に舞い上がっていった。
そしてその時、ほんの少し隙を見せた相手の反対側の首元を、俺は闇属性魔術で出現させた
「参ったっ!」
その声に反応して、俺はあと数ミリというところで灰色の長剣を寸止めした。
「・・・・・・見事だ! それは確か闇属性魔術の――」
「
「やはり、そうか! あの同世代に一人しか使用できないという・・・・・・確か歴代の使用者に魔王がいたとかいないとか――」
「・・・・・・さすがにそれは根も葉もない嘘らしいですが」
「そうなんだ。でも、まさか超レアな闇属性魔術、
ノア・ハジャルツ第一皇子はそう言った後、俺の耳元でこう囁いたのだ。
「・・・・・・ちゃんと寸止めしてくれたお礼に君だけに教えてあげる。・・・・・・私は女だ。ほら、この通り胸もちゃんとある」
他の者にはギリギリ聞こえない声でそう囁くと、ノア・ハジャルツ第一皇子は俺の手を取って、自分の胸を触らせたのだった。
――思ってたよりもおっきくて、すげーやわらかいっ!
まさかもう一人の推しキャラの胸にリアルに触れられるだなんて思いもしなかったので、俺はもう少しでそう叫んでしまいそうだった。
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