第9話 腹違いの兄!
俺にはグラハム・ラーグ以外にまだ兄がいた。
シュリップ・ラーグ、13歳。
兄と言っても正確に俺とは血は全く繋がっていない。
ただ、そのことを知っているのは俺と母、リッサ・ラーグ
シュリップ・ラーグは、ラーグ侯爵家当主グレゴリード・ラーグ侯爵とその第二夫人のユトラ・ラーグの間に生まれたラーグ侯爵家の次男である。
彼の髪の色は紫でもなければ金色でもない。
そのオレンジの髪は母親から受け継いだのだ。
しかし残念ながら、彼の母、ユトラ・ラーグは彼を出産して間もなくこの世を去ってしまっていた。
それでも父、グレゴリード・ラーグ侯爵は他のきょうだい達と分け隔てなく彼を扱っていたのだが、その死が、このシュリップ・ラーグの人格形成に多大な影響を与えたことはほぼ間違いないだろう。
彼は俺の母であるラーグ侯爵夫人、リッサ・ラークがその死に関わっていると本気で思っており、だからその腹から生まれた他のきょうだい達に対して憎しみのようなものを隠し持っているキャラクターとして原作でも、悪役貴族ベルベッチア・ラーグの過去を描いたムービーで何度か登場していた。
「ベルベッチア! 昨夜、君の部屋の方から白い光が発射されるのを見たのだけど、あれはなんだったんだい? ・・・・・・もしかして今回の一件と関係があるのかい?」
ラーグ侯爵家
まさかあれを見られていたのは!
それも一番厄介なやつに!
俺はかなり動揺しながらもこう答えた。
「・・・・・・白い光? なんのことを言ってるのかわかりかねますね。シュリップ兄さんの見間違いじゃないですか?」
「そうか? ・・・・・・ベルベッチア、僕はその前に君の部屋にサーシャンが入っていくのも見ていたんだよ! だからこの足でサーシャンに事の真相を訊きにいってもいいだけどね!」
少しずつ少しずつ
サーシャン・ラーグに訊かれるのはさすがにまずい。
うっかりこいつの口車に乗って、彼女が全てを認めてしまうかもしれないからだ。
彼にとっては他のきょうだいは全て敵なのだ。
陥れるのは俺でもサーシャン・ラーグでも、その両方でもなんでもいいのだ。
だが、
「いいですよ、サーシャンに聞いてくださいよ。きっとなんのことだかわからないって答えるはずですから!」
と俺が強気に出ると、シュリップはなぜか突然その話題を引っ込めて、こんな話をし始めた。
「・・・・・・そうか。・・・・・・じゃあ、これは知ってるかい? 今、お父様が驚くような人物と応接室で話をしてらっしゃるってことを! もしまだ知らないなら、それが誰か知ったらさすがの君も心臓が止まるほど驚くだろうね!」
「もちろん知りません。シュリップ兄さん! 勿体振らないで教えてくださいよ!」
なんとなく相手がしゃべりたくて仕方ない様子だと感じ取った俺が、少し下手に出てそう言うと、シュリップ・ラーグは珍しくうれしそうに頬をわすかに赤く染めて、得意気にこう言ったのだ。
「・・・・・・仕方ないな。特別に教えてあげるよ。その相手っていうのは、なんとハジャルツ帝国の皇帝ハジャルツ8世の
「えっ? なんでそんな方がわざわざ・・・・・・」
「なんでって、今回のいざこざを収めるためさ! そのために遠路はるばる来たんだそうだ! 確かノア皇子は君と同い年じゃなかったか? そんな歳で立派なことだよな!」
俺とシュリップ・ラーグがそこまで話したところで、筆頭執事のエドワー・ヤースが俺の部屋に入ってきてこう言ったのだった。
「シュリップ坊っちゃま! べルベ坊っちゃま! 今すぐ決闘場に来てくださいませ! 当主様と、ノア・ハジャルツ皇子がお待ちです!」
まさかあのキャラとこんなに早く対面するだなんて!
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