■081,『アラタ+妹の成長を見守ってみた』

「お兄ちゃん!」

 銀髪の少女が、リュウに飛びついた。

「ユナ、気をつけなきゃだめだろ」

 でも、リュウの顔は嬉しそうだ。


 ユナは3歳。

 エルフと人間の血を引く彼女は、

 すくすくと育っている。


「今日は何して遊ぶ?」

「うーん、お絵かき!」

 ユナは絵を描くのが大好き。

 魔法の力で、描いた絵が少し動くことがある。


「あちしも見る!」

 スノーが寄ってきた。

 ユナの一番の遊び相手だ。

「スノーお姉ちゃん!」


「ママ、見て見て!」

 エルメスに絵を見せるユナ。

「まあ、とても上手ね」

 家族の絵が描かれている。

 みんなが手をつないでいる。


「パパは?」

「お仕事。でもすぐ帰ってくるって」

 リュウが妹に教えてあげる。

 立派なお兄ちゃんだ。


「ユナ、おなかすいた?」

「うん!」

「じゃあ、お昼ご飯にしましょうか」

 エルメスが台所へ向かう。


「お手伝いする!」

 リュウとユナが後について行く。

 スノーも尾を振って続く。


「はい、ユナはにんじんを洗って」

「はーい!」

 小さな手で一生懸命に洗う。

 リュウは包丁を使えるようになった。

 スノーは見守り役。


「ママ、これでいい?」

「ええ、上手にできたわね」

 エルメスが頭を撫でる。

 ユナは嬉しそうに笑う。


「ただいま」

「パパ!」

 アラタが帰ってきた。

 ユナが飛びついていく。


「お、みんなでお昼作ってるのか」

「うん! ユナも手伝った!」

「偉いな」

 アラタが娘を高く抱き上げる。


 昼食を家族で囲む。

 ユナの話は止まらない。

 今日見つけた花のこと、

 描いた絵のこと、

 スノーと遊んだこと。


「パパ、今度ユナも学校行く?」

「まだ早いよ。もう少し大きくなってからね」

「うーん」

 ユナは少し残念そう。

 お兄ちゃんのように、

 学校に行きたいらしい。


「でも、お絵かき教室があるんだけど」

「ほんと!?」

 アラタの言葉に、ユナの目が輝く。

「行きたい!」


「私が連れて行ってあげるわ」

 エルメスが微笑む。

「やったー!」


 午後は庭で遊ぶ。

 スノーが見守る中、

 リュウとユナは鬼ごっこ。

「お兄ちゃん、待って!」

「まだまだ!」


 夕方、ユナは疲れて眠ってしまう。

 リュウの膝の上で、すやすやと。

「お兄ちゃん、動いちゃだめだよ」

 スノーが真面目な顔で言う。

「わかってるって」


 エルメスが優しく毛布をかける。

「良いお兄ちゃんね」

「え、まあ……」

 リュウは照れくさそう。


「スノーも良いお姉ちゃんだ」

 アラタが言う。

「あちし、ユナのこと大好き!」

 尾を振る姿に、みんな笑顔になる。


 夜、家族で星を見る。

 ユナは目を丸くして空を見上げる。

「パパ、あれなに?」

「流れ星だよ」

「きれい……」


 寝る前、ユナはみんなにおやすみのキスをする。

「パパ、ママ、お兄ちゃん、スノーお姉ちゃん、

 おやすみなさい」

「おやすみ、ユナ」


 静かな夜。

 家族の絆は、

 新しい命と共に、

 より一層深まっていった。


 明日も、きっと素敵な一日になる。

 そう思いながら、

 みんなが眠りについた。


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