■079,『アラタ+新しい家族と暮らしてみた』

「パパ、ママ、おはよう!」

 朝日が昇る頃、リュウの元気な声が響く。


「おはよう、リュウ」

「あら、早起きね」

 エルメスが台所で朝食の支度をしている。

 アラタはコーヒーを入れながら微笑む。


「あちしも手伝う!」

 スノーが尾を振りながら、食器を運ぶ。

 普段は使えない魔法の皿運びを、

 今日は特別に許可された。


「今日の朝ごはんは、パンケーキよ」

 エルメスが得意の料理を作る。

 アラタが教えた地球の料理を、

 エルメスはすぐに覚えてしまった。


「わぁい! ママのパンケーキ大好き!」

 リュウが目を輝かせる。

 エルメスは照れくさそうに微笑む。


「今日は学校の後、どこか行きたいところある?」

「うん! みんなでお買い物行きたい!」

「そうね。新しい服も必要だものね」


 朝食を終え、リュウを学校へ送っていく。

 アラタとエルメスは手をつないで歩く。

 スノーは嬉しそうに二人の周りを跳ね回る。


「行ってきます!」

「気をつけてね」

 リュウが教室に向かう背中を見送る。


「あの子、すっかり大きくなったわね」

「ああ。エルメスが来てくれてから、

 より一層元気になった」


 仕事中も、新しい家族の存在が

 アラタの心を温かくする。

 商品開発のアイデアも、

 自然と湧いてくるようになった。


「アラタ様、新商品の案ができました」

 エルメスは今でも丁寧な言葉遣い。

 仕事中は特に気を使っているらしい。


「ありがとう。でも、仕事中もエルメスでいいよ」

「え、でも……」

「だって、私たち家族でしょ?」

 エルメスの頬が赤くなる。


 夕方、リュウの下校時間に合わせて

 家族で買い物に出かける。

「これ、リュウに似合うわね」

「ママ、本当?」

「とても素敵よ」


 スノーも新しい首輪を選んでもらう。

「あちし、これがいい!」

「その色、確かに似合うね」


 夜は家族で晩ご飯。

 テーブルを囲んで、今日あった出来事を話す。

 リュウの学校での出来事、

 アラタとエルメスの仕事の話、

 スノーの見つけた面白いこと。


「ねぇパパ、ママ」

「ん?」

「今日、友達に聞いたんだ」

「何を?」

「赤ちゃんのこと」


 アラタとエルメスは顔を見合わせる。

 スノーは興味深そうに耳を立てる。


「そうね。いつか、その時が来たら……」

 エルメスが優しく微笑む。

「うん! 楽しみ!」


 就寝前、リュウに絵本を読んであげる。

 家族全員でベッドに集まり、

 アラタが読み聞かせる。


「パパ、ママ、スノー。大好き」

 リュウがうとうとしながら言う。

「私たちも大好きよ」

 エルメスがそっと布団をかける。


「幸せだね」

 アラタがエルメスの肩を抱く。

「ええ、とても」


 月明かりが部屋を静かに照らす。

 新しい家族の、穏やかな夜。

 明日も、また素敵な1日が始まる。


 そう、これが俺たちの「日常」なんだ。


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