■006,『アラタ+現代の物を売ってみた』

「エドガー商会、ここか。でっかいな」

>>今から、ここに挑むのか。

>>無謀

 周囲の建物とは、明らかに違う大きさで品もある。

 明らかに、一見さんお断りの雰囲気。


「すみません、私は、シンドウ商会・商会長のアラタと申します。商会長さんは、いらっしゃいますでしょうか?」

「失礼ですが、紹介状をお持ちでしょうか?」

「ありません」

>>言った(笑)

>>勇者(笑)

「……申し訳ございません。紹介状をお持ちでないと、ご面会はお断りさせてもらっています」

「では、商会長さんに、こちらを渡してもらえますか?」

 俺は、アイテムボックスから商品の入った袋を取り出した。

「アイテムボックス! し、失礼しました。すぐにお渡ししてきます」

 店員さんは、慌てて奥へ向かう。すると、待たずに中年の商会長らしき人物と一緒に来た。


「失礼ですが、こちらの商品はあなた様が?」

「はい、うちの自慢の商品です。お話だけでも聞いていただけないでしょうか?」

「奥へまいりましょう、ぜひお話をお伺いしたい」

「ありがとうございます」

>>やりやがった!

>>大・成・功

>>食いついた!


 そうして奥の応接室へと通された。

「改めまして、当商会の商会長のエドガーと申します」

「シンドウ商会・商会長のアラタと申します。まずは突然の来訪、失礼しました」

 ソファーに座ったまま、頭を下げる。

「どうぞお気になさらず。それより商売の話をしましょう」


 エドガーさんは、テーブルに袋の商品を並べだした。

 俺が専門で売ろうと思ったのは『胡椒』『砂糖』『リバーシの設計図』だ。

「まずこちらの胡椒、この大袋で金貨60枚でどうでしょう?」

>>金貨60枚!? ってなんぼ?

>>確か1枚・40万だったか?

 通販で1キロ3,000円が2,400万!?


「待ってください。私は今後も、当たり前のように売るつもりです。1度きりではないのです」

「な、なんと!? では、おいくらでしょう?」

「金貨30枚。最大でも、そこで押さえてほしいのです」

 一般的に普及させ、薄利多売をしたい。

「庶民でも買える値段にしたいのです。そして、味を覚えてほしいのです」

「なるほど。なくなれば買いたくなる。買える値段ならさらに、ですな」

>>競合店いないのかな?

>>だからこそ、大手に委託する。

「なので、砂糖も同じ考えで売るつもりです」

「申し訳ございません。砂糖に関しては質がよすぎます。ある程度高く設定しなければならないでしょう」

「わかりました、お任せします」

「そして最後のこちらの商品ですが、設計図も一緒ですか?」

>>リバーシだ!

>>定番(笑)

「それはリバーシという玩具になります。一度、やって見せましょう」

 俺はエドガーさんと対戦した。

「なるほど、単純ですが面白い。子供でもわかりやすいです。こちらは商業ギルドで技術登録も必要かと」

「技術登録ですか?」

「売り上げの一部を、開発者に払うのです」

 なるほど、特許か。

「わかりました、登録しておきます。ですが製造と販売は、エドガーさんにお任せしても?」

「かしこまりました。こちらで対応しておきましょう」

「よろしくお願いします」

 俺はすぐに、商業ギルドにリバーシの技術登録をしにいこうとした。

 だが、エドガーさんは、袋に入っていた胡椒・砂糖・リバーシの料金を押しつけてきた。

 あげたつもりだったのだが……。


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