■003,『アラタ+初配信してみた』

>>01

>>待機

>>中二病、見に来た。

>>寝取られた可愛そうな同士(泣)

「あ、あ、マイクテスト。みんな、よく来たな!」

 ダンジョン装備一式を着て、手元のアクションカメラでうつす。


>>今日、生配信なんだね。

>>中二装備キター!!

「そう、今日は生配信だから、特・別・企画を用意した」

>>特別って?

>>何やるの?


「今日の配信タイトルは~、ジャジャン! 『異世界で魔物討伐してみた』!!!!」

>>魔物討伐?

>>CG配信?

「CGじゃないぞ。グロ耐性ない人は、気をつけてくれ! ちょっとごめん、カメラ揺れる」

 胸元にアクションカメラを設置する。

>>画角変わった。アラタ視点で動画をながすのか。

>>いや異世界は本物、俺は信じる。

「そう、リアル、現実、本物!」

 信じてもらえなくても、しょうがないよな。


「ここからは俺の予想だ。ここは、ダンジョンの最深部」

 なぜか俺の家とつながった場所。

「そこを逆走すれば、ボスの部屋に行ける。問題なのは、ボスが出現してるかだ」

>>ダンジョン逆走だから無理じゃね? リスポーンしてんのかね?

>>まぁ、いなければ奥の通常の道いけばいいのでは?

「うん、俺もいなければ、どんどんダンジョンの奥行くつもり」

 そして、逆走先には……、

「なぁ、みんな、逆走したダンジョンの先、ダンジョンの入り口はどこにつながってると思う?」

>>!?

>>異世界!

>>アラタの隣の家。

>>周辺何もないって言ってたぞ。

「そう、家のまわり何もない。だから、このダンジョンも本物だ。さて、ダベってても仕方ない。早速、ダンジョン攻略だ!」


 俺は、ダンジョンの最深部のゲートをくぐった。

 そこには、巨大な鱗をまとったファンタジーの王・ドラゴンだった。


 ギャァアアアアスッ!!!!


「っ!?」

>>鼓膜壊れた……

>>ちょ、主、音量設定!

>>アラタ、死す。

「勝手に殺すな!」


 巨大な尻尾を振り回し、回避不能の攻撃を仕掛けてくる。

 俺は、慌てて聖剣と魔剣を抜き、素人ながら振りかざした。

 すると、豆腐を切るかのごとく、スッと剣が通った。


 グギャァアッ!?

「やったか?」

>>ちょ、フラグ!?

>>素人かよ! 何年オタやってんだ!


 ダンダンッダンダンッ!!!!

 尻尾を切り落とされ、地団駄するドラゴン。

 その目は、完全に俺を敵として認識していた。

「先攻ッ!!」

 俺は顔を向けてきたドラゴンに近づき、その目を貫いた。


「貫けぇええええ!!!!」

 ドラゴンは頭を振るい、俺を振り払おうとする。

 グワァアアアア!!!?

「もう一本っ!」

 俺は、空いているもう一振りの剣を、頭へ突き刺す。

 ついにドラゴンは、動きを止め、その巨体を地につけた。


《想像魔法を得ました》

《全属性魔法を得ました》

《常時魔力回復を得ました》

《魔法耐性を得ました》

《常時体力回復を得ました》

《物理耐性を得ました》

《体術を得ました》

《剣術を得ました》


「……鑑定」


 死体:アースドラゴン 異世界オールドの地竜 相場・測定不能


>>……

>>……

>>……

>>……

>>……

>>……

>>……


「やった、倒せたみたいだな……、ん? コメント止まってる。もしもーし」

 剣をアイテムボックスへしまい、カメラに向かって手を振ってみた。


「あちゃぁ、討伐系の動画は、配信にあわないのかな?」

 みんなコメントなくなった。

 ふぅ、それにしても、さすがに疲れた。

 体は大丈夫なんだが、精神的にキツい。だってドラゴンだぞ?


「今日の配信はここまでにするか。んじゃみんな、お疲れ。じゃあの」


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