第4話長男と事件の真相

       〇

 優さんは、部屋にいるのだろうけどノックをしても出てこない。

 「どうしよう鍵もかかってるし、ドアを壊すこともできない。剛さんに頼むにしても今日は、大会でいないらしいし。凛華さんは電話に出ないし。」

 「どうしましたか?困りごとでしたら何なりとお申し付けください。」

 「廻さんでしたか。優さんがどこにいるかご存知でしょうか?。」

 「優お坊ちゃまでしたらお部屋にいらっしゃるのでは?今日は、お部屋から出てきたのを見ていません。」

 「それがいないようなんですよ。」

 「そうですか。すみませんが私には、わからないですね。」

 廻さんが共犯者の可能性が高いとすればどこまでが噓かわからない。

 「聖美さんはどこにいらっしゃいますか?。お話を聞きたくて。」

 「奥様でしたらお庭のバラ庭園で読書をされていると思います。」

 「ありがとうございます。」


 「私に聞きたいことですか。私の知ることはすべてお話ししますよ。」

 「まず優さんがどこにいるかご存知ですか?。」

 「優ちゃんのことはわからないです。あの子は、祖母のことが大好きで私とはあまり話さ

ないものですから。」

 「そうですか。じゃあ旦那様が殺される前の数日間不可解なこのはありませんでしたか?。」

 「そうですねえ。気になるとすれば剛ちゃんが朝から夜遅くまで弓道場から帰ってこないことが続きましたね。いつもなら夕方に帰ってくるのに、それだけです。」

 「わかりましたありがとうございました。」

 もう誰が噓を言っているかわからない。中野夫妻は、廻さんが焦って別館に行くのを見た。剛さんは、母親、兄、執事の三人が怪しい。奥様は、剛さんがことが怪しい。あと優さんの話を聞いて矛盾があればわかるのだけど。

 「プルルルル」ポケットから携帯電話が鳴る音が聞こえた。画面を見ると凛華さんからだった。

 「瑞姫!今すぐに別館に来てくれ。大至急だ!」

 「え?どうしt。切れた…。何かあったのかも急がなきゃ。」

 久しぶりにダッシュをしてすごく疲れた。

 「 凛華さん!ってどうなっているんですかそれ。」

 私が行ったときには、確かに大変なことになっていた。ゴミの山に凛華さんが埋まっていた。

 「助けて。」

 本当にこの人は、世話がかかる。ゴミをどかしながら凛華さんを見つけ出した。

 「どうしてあんなことになっていたんですか?。」

 「いやぁ手がかりになるものを見つけて、一人で喜んでたら山が倒れてきて。というかこれ見てよ手紙と指輪。しかも指輪は、二つあるんだ。片方には、血がついてる。」

 「まず手紙の鑑定を警察に頼みましょう。そしてなぜ指輪は二つ?。」

 「これは私の憶測だけどこれは、結婚指輪だ。そして殺害された主人と奥様天童聖美さんの指には指輪がなかった。これがどういうことかわかるかい?。」

 「奥様が旦那様を殺害し指を捨てたということですか?。」

 「多分ね。今すぐに奥様のとこへ行こう。」

 「待ってください。まだ優さんに話を聞いていません。先にそっちに行かせてくれませんか?。」

 「わかったでも時間は限られてる。急ぐよ。」

    

      〇

 「やっぱり出てきてくれませんね。」

 「ちょっとどいて。は!。」

  びっくりだいきなり何をするかと思えば凛華さんがドアを蹴り壊したのだから。細い体のどこにそんな力があるのだろうか。

 「なにしてるんですか!。」

 「出てこないならこうするしかないだろう?。こっちには、時間がないんだから。そんでもって、さてお話を聞かせてもらえますか?優さん。」

 「天童忠さんが一番大切にしていたのは確かに奥様だが、優さんのことを一番見ていて一番大切にしていたはずです。そしてそんな優さんが忠さんから読ませていただいていた小説はミステリ小説で内容は、ある館の主人が殺される話。容疑者は七人、死体の顔はぐちゃぐちゃ。の小説ですよね?。」

 「それって今回の事件とそっくりじゃないですか!。」

 なぜ凛華さんが小説の内容を知っているかより。小説が、今回の事件と重なっていることに驚きが隠せなかった。

 「そしてその話の犯人は…。」

 「それ以上はダメです!。それ以上のことは、絶対に言ってはいけないそれは、父さんの思いを踏みにじることになる。」

 「凛華さんどういうことですか?なぜ凛華さんが小説の内容をご存知なんですか?。」

 「そうだね正直言うと最初から犯人が分かっていた。ただ、それが確かかわからなかったんだ。一番最初事件当日主人のポケットを探ってみたら、鍵が入っていたんだ。その鍵は、主人の引き出しの鍵だった。引き出しの中には、一つのUSB メモリが入っていてパソコンで確認したらこの小説の内容が書かれていた。言わば主人、忠さんが自分と家族を題材にして書いた小説なんだろう。そうでしょ?優さん。」

 事件当日にわかっていたのなら、私にぐらい教えてくれてもよかったのではないか。

 凛華さんは、もしかしたら誰よりも先をよんでいたのかもかもしれない。私がどの順番で話を聞いていくか、剛さんが誰を疑っているか…。凛華さんがどこまで考えていたかなんて私には想像がつかない。

 優さんは、泣きながらぽつりぽつりと話し始めた。

 「確かに父さんの殺され方と小説の内容は、重なっていました。でもそれに気が付いたのは、父さんの遺体を見たときでした。遺体を見たとき犯人となぜ殺されたのかがわかりました。でも僕には、それを警察にいうことはできなかった。だって今回の事件は、誰も悪くないんだから…。」

 どういうことだろう。人を殺すことは、紛れもなく犯罪だ、そこにどんな理由があったとしても人を殺した人を許してはならないと思う。

 「瑞姫、口に出さなくても瑞姫が言いたいことは分かるよ。でも殺人にもいろんな種類があるんだよ。ただ人を殺したいだけとか、不意に起きた事故。今回は、愛が起こした事件ってことですね?。」 

 殺人にも種類がある…。そうだろうか、じゃあ私の母親を殺したやつも意味があったのだろうか。いまはそんなこと関係ないか。

「そうですね。これ以上は、母さん本人から聞いた方がいいと思います。」

 「わかりました。」

 

 全員が客室に集まった。誰も声を出さず、ただ凛華さんだけがすごく冷静だった。

 「聖美さんあなたが今回の事件の犯人ですね?。」

 「奥様は、そんなことしていないです!。」

 「廻、もういいのよ。これ以上隠すのもただつらいだけだもの。すべてお話ししますわ。私は、忠さんを殺しました。だもそれは、忠さんのお願いでした。子供達には隠していましたが忠さんは、生きれてもあと数か月でした。そんな忠さんが愛する君に殺されたい小説のような最後にしてほしいと言われ。私が殺しました。廻が私をかばいいろいろな隠ぺいをしましたがあなたには、お見通しだったのですね。」

 いきなりの告白で優さんたちは言葉が出ないようだ。そして私も何も言うことができなかった。

 「聖美さん…。どんな理由があっても殺人は犯罪でしかない。でもあなたは愛する人を最後まで愛した、警察に自白するかはあなたが決めてください。私には、荷が重すぎる。」

 それから凛華さんは、今回の事件から手を引くといって部屋を後にした。

      〇

 「よかったんですか?せっかくの給料になるかもしれなかったのに。」

 「いいんだよ。今回あの館であったのは、愛し合う二人の最後の約束が実行されたそれだけだよ。」

 凛華さんは、それ以上何も言わず窓の外を眺めていたし。私も何も聞かないことにした。

 「そうだ瑞姫私一押しのラーメン食べに行こうかおごるから。

 「あの凛華さんが、おごるなんて珍しい。」

 「そんなこと言うならおごらないからね?!。」 

 「嘘ですよ(笑)ナビつけてください。」

 今回の事件は、私にとって今までと大きく違っていた。

 そして凛華さんの追う犯罪者も私の母親を殺した犯人もまだ見つかりそうにない。でも今後もっと多くの犯罪にかかわって行くんだろう。そのために凛華さんの下についたんだから。

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天童家での殺人事件 @kawasimamomo

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