第9話 能力鑑定の儀

〜翌朝〜




「おはよう御座います!柏木様!昨晩はゆっくりとお休み頂けましたかな?」



にこやかな笑顔で出迎えてくれる王様と王妃様。



朝からぴっちり「王様」と「王妃様」やってるなぁ…王族って大変そうだ。



「おはよう御座います。王様、王妃様。

お陰様で快適にぐっすりと家族一同安眠させて頂きました!」



「すっごいんだよ!べっとがふかふかでね!?おうちのベットよりぐっすりだったのー!」



「…あさごはんもおしゃれでごうかで…すごかった…。」



「…杏ちゃん、陽くん?一般家庭の寝具と食事を王宮のと比べないでね!?そりゃ違うよ…ごめんね!?」



「まぁまぁ、アナタ。」




「あっはっはっ!それなら良かったです。勇者様御一行が我が王宮内で不便をしてなくて安心致しました。」



「えぇ。本当に。」



朗らかに笑い合う王様と王妃様。

その側には昨日は居なかった青年と少女が立っていた。



「さて、柏木様。儀式を始める前にご紹介してもよろしでしょうか?我が子供達を。」



王様がそう告げると青年と少女は美しい所作で前に出て、それぞれが挨拶をする。



「お初に御目にかかれて光栄です。勇者一行様。

この度は我が国の為にお力を貸して頂けること、心より感謝申し上げます。

私はこの国の第一王子、アルノルト・グリニュクス・アバンダイドと申します。

どうぞアルとお呼びください。」



「お初に御目にかかれて光栄ですわ。私はこの国の第一王女、ルルリアル・グリニュクス・アバンダイドですわ。

どうぞルルとお呼びくださいませ。勇者様方。

我が国へのお力添え、心強く思っておりますわ。」



おぉ!王子様とお姫様出て来たよ!凄いなぁ。2人共流石あの王様と王妃様の遺伝子を継いでるだけあって美男美女だ…。キラッキラしてるなぁ。


まぁ?ウチの子達も負けず劣らず可愛いけどね!?

むしろ親的には勝ってるからね!?優勝だよ断トツで!



ふぅ。心の中で親馬鹿が炸裂してしまったな。




「ご丁寧にありがとうございます。アル王子、ルル王女。」



「アルは18歳、これでも剣の腕は中々のものですのよ。ルルは14歳、魔術に精通しており、我が国でも中々の魔力量を保有しておりますの。椿様と蓮様と年齢が近いので、お役に立てる事もあると思いますし、ぜひ仲良くして頂けると嬉しいですわ。」



王妃様がにこにこと息子と娘の話をする。

うんうん、分かるよ。子供の良い所いっぱい話たくなるよね。



「こちらこそです。この世界で友人が出来る事は喜ばしい事ですから。椿と蓮だけと言わずに、下2人共ぜひ仲良くしてくださると喜ばしい事です。」



「すごぉい!ほんもののおうじさまとおひめさまだぁ!」



「ふたりともきらきらしてる!きれい!」




「ははっ!可愛らしいな…新しく妹と弟が出来たみたいだ…。」



「あら?お兄様?私1人では足りませんの?

ふふ。けど本当に愛らしいですわ。私、妹と弟が欲しかったのです。ぜひ新しい姉のつもりで接してくださると嬉しいですわ。

もちろん椿様も蓮様も!ぜひ仲良くしてくださいませ。」



「「わぁ!おにいちゃんとおねえちゃんがふえた!?やったー!!!」」



はぅ…小さい子って癒しだなぁ…特にウチの子達天使過ぎるからなぁ…喜んでる姿…尊い…。



「我が子らを紹介させてくださってありがとうございます。

さぁ、では早速『能力判定の儀』を始めて参りましょうか。マルルクリア!此処に水晶を!」



「はっ!」



マルルクリアさんが台車を引き、その上にはよく占い師が使っている様な大きな水晶が置かれていた。


おぉ!これこれ!よくラノベとかの魔力判定に使われてるよなぁ…。

あぁ…魔力量が多すぎて割っちゃったりとかしちゃったりして…やばっ…テンション上がってきたぁ!!!!



「あなた。顔にやけ過ぎですよ?蓮くんも。」




桜さんに指摘されてしまった…けど仕方ないよな!蓮!

オタクにとってはこの水晶に夢とロマンが詰まってるのだからっっっ!!!


お互いに見つめ合い、頷き合う。俺達はオタク親子だ!



「そんなに固くならないでください。どんな結果が出ようとも、柏木様達の不利になる様な状況には絶対になりませぬから。力を抜いて水晶に手を置かれてください。

…まずはどなたからなさいますか?」



「ふっ…我から参ろう。この身に宿りし秘めたる闇なる力、今此処に暴かれたりし…。(訳:僕から行くよ!あぁ…どんな力があるかわくわくしちゃうなぁ///)」



蓮くんめっちゃ鼻息と息が荒い…興奮してますなぁ。



「そうですか。では蓮様。此方に手を。何の能力かはマルルクリアが水晶の判定を見て教えてくれるでしょう。」




蓮くんが水晶に手を置くと、眩い虹色の光が水晶から発され蓮くんを照らして行く。



「まぁ!まぁまぁまぁまぁ!これはっ!!!…っ蓮様の能力判定は『最高位魔術』となりますわ!」



マルルクリアさんが興奮して熱く語り出す。



「これは素晴らしい能力ですわっ!!!最高位魔術!即ちこの世界で確認されている全ての魔術属性を使えるのは勿論!その体内に宿る魔力は膨大っ!!!…あぁ流石勇者様ですわ!羨ましいですわぁぁぁぁぁ〜〜〜!!!」



頬を紅潮させ鼻息荒く語るマルルクリアさんとは対象的に蓮くんはとても落ち着いてた。

いや、小刻みに震えている。



はっ!もしかして!体内に膨大な魔力が宿っていることに…自分の力の膨大さにまさか恐怖をっ!?

…蓮くんだってまだ14歳だ。これから自分がどうなってしまうのか…不安に思う気持ちに押し潰されそうになっても当然だ!大人ですらそうなのだから…。


此方に戻って来る為に歩いてくる蓮くん…。

ここはパパの深ぁく広ぉい愛で包みこんであげて、安心させてあげねばっっっ!!!



「蓮くんっっ!!!」



両腕を広げて抱きしめてあげる準備は万端だっ!

さぁ!パパの腕に…



飛び込んでこずに前で止まると、蓮くんは多分自分が1番気に入ってるであろう痛いポーズ(本人は最高にカッコいいと思ってやってるよ。経験者は語るよ。)をキメて口を開いた。



「くくっ…必然と言えどもやはり我には強大なる闇なる魔力が宿っていた様だ。これからは我の事を真名では無く、こう呼ぶがいい。『闇の最強魔法使いダークネスオーピストウィザード』と…。」




うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

凄い!凄いよ蓮くんっ!


バッチリキメてるけど呼び名がかなりダサい感じ!英語にしとけばカッコいいだろ的な14歳という年齢を感じさせて…


凄くいい!!!

流石我が息子ぉぉぉぉぉ!!!最高だよ!!!



「じゃあ『闇の最強魔法使いダークネスオーピストウィザード』が終わったから次は私が行くわ。」



艷やかな黒髪を靡かせながら水晶の前まで来ると、椿ちゃんは躊躇せずに水晶に手を置いた。



ちゃんと蓮くんの事、あのクソダサネームで呼んであげてる椿ちゃん…優しい。


そんな椿ちゃんの光は凄く透明感のある青色だった。



「まぁ!椿様の能力は『絶対防御』

これも素晴らしい能力ですわぁ!椿様自身も蓮様と変わらず凄い魔力量ですので、どこまでの防御力を発揮されるのか…未知数ですわね。」



「絶対防御…うん。良かった。これならみんなを護れる…。」



椿ちゃんが何かを呟いていたけど、残念ながら此方までは声は届かなかった。

けど他の人が見たら絶対分からないけど(クールビューティーなので)嬉しそうな顔をしてるのでこの能力が気に入ったのだろう。

良かったね、椿ちゃん。



「つぎはあんがやるのー!!!」



「あっ!まってよあんちゃん!あぅ…ぼくも…!」



杏と陽が水晶の前までかけっこして行く。



「あ!室内で走り回らないの!」



桜さんが慌てて注意しながら後を素早く追う。



「あら、じゃあ順番で宜しいですかしら?

杏様、陽様、桜様の順番で能力鑑定をして行きましょうね?」



「はぁい!まずはあんだね!?」



杏ちゃんが水晶に手を翳す。

鮮やかな黄色の光を水晶が発した。



「あら、これは珍しいですわぁ!杏様は『獣使いビーストテイマー』の能力ですわね。我が国でも数名しかこの能力を確認出来てない程、珍しい能力ですわよ。」



「びーすとていまぁ?あん、フリキュアになれる?」



良く分かっていない杏ちゃんにマルルクリアさんは笑って言う。



「動物さん達ととっても仲良くなれる力ですわ。」



「わぁ!ほんと?うれしい!いっぱいどうぶつさんとあんね、なかよしさんになるー!!!」



満面の笑みで嬉しさを表す杏ちゃん。


はぅ…可愛い…良かったねぇ杏ちゃん。いっぱい動物さんと仲良くなってねぇ。



「さ、お次は陽様ですわね。どうぞ水晶にお手を。」



「はっ、はいっ!」



ちょっと恐る恐るといった感じで水晶に手を置く陽くん。


水晶は淡い赤色の光を放った。



「これは…ん〜…どういう意味かしら。」



マルルクリアさんが首を傾げて唸り始めた。



「マルルクリアよ。どうしたのだ。」



「はっ!王よ。陽様の能力鑑定を水晶は『言霊ことだま』と表しているのですが…この『ことだま』の意味がお恥ずかしながら私には分かりかねまして…。」



「ふむ。…『ことだま』確かに聞いた事の無い単語だな…。」



「あのっ!それは私達の世界の住んで居た国独自の言葉になります。」



「ほぅ。柏木様達が住まわれていた国の言葉でしたか。それでその意味はどんな意味を持つのでしょうか?」



「はい。確か古い時代に、言葉に宿っていると信じられていた不思議な力の事です。発した言葉どおりの結果を現す力があるとされた。と言われています。それが『言霊』です。」



「成る程。つまり言葉通りの結果を起こせる能力…。そういう事ですな。」



「…それはまた強大な能力である事に間違いは無いですわね…。

さぁ次は桜様。お願い致します。」



「はい。」



次に桜さんが水晶に手を翳す。

水晶は柔らかい緑色に光った。


「まぁ!これは素晴らしい能力ですわ。桜様は『癒し』の能力をお持ちなんですのね!

これは治癒能力と言った方が分かりやすいかもしれませんが、傷や病気を治したりと我が国でもとても重宝される能力ですわ。」



へぇ。とても桜さんらしい能力だな。優しく美しく、女神の様な桜さんにピッタリの能力だ!




「さて、最後は柏木様になりますわね。此方へ。」



「あ…はい!」




あぁ…年甲斐にも無く緊張して来ちゃったなぁ…。

家族皆凄い能力だもんなぁ。…もしかして自分にももの凄い能力がっ!?

そう思うと顔がニヤけて来てしまう…。

だって皆だって人生で一度は思うだろ?

自分には凄い特殊能力が実は在って…普通に過ごしていた日常から急に非日常にっ!!!なんて事…。



ハッ!いや…待てよ…。



もしかしたら逆も十分にあり得る事実に今気付いてしまった!


良くあるパターンなハズなのに何故俺は今まで気づかなかった!?自称オタク失格だっ…!!!



…周りの皆が素晴らしい能力に目覚めて行く中、主人公1人だけはハズレスキルで追放されてしまう…。


え…これってそういうパターン?そういうパターンなのっ!?

追放されて…家族と離されて…実はハズレスキルだと思った能力が凄くて無双が始まる的なっ!?


最強無双は何とも心惹かれるが…愛する家族と離れ離れになるなんてっ!



…無理ぃぃぃぃぃぃ(大号泣)



「ぱぱー?どしたの?かたまっちゃって?」



「はやくどんなのうりょくかしりたいよー!」




うっ…皆の期待の眼差しが痛いっ!


震える手を抑えつけながら、水晶に手を触れされる。


えぇい!ハズレスキルだろうが何だろうがかかってこいやぁ!こんちくしょう!てやんでぃ!俺の家族を愛するこの気持ちは何物にも何者にも止める事など出来ないのだからぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!




水晶からは白い眩い光が発せられた。


よっしゃ!とりあえず水晶が光ったってことは何かしら能力があるハズだ!


忘れてたが能力が無いパターンだって有り得たのだから、取り敢えずは良しだ。



「ふむふむ…まぁ!まぁまぁ!」



…え?何?何なんだよぉ!「まぁ!」じゃなくて早く結果教えてよぉ…マルルクリアさぁん。



笑顔で此方を向いたマルルクリアさんはゆっくりと口を開いて結果を言った。




「柏木大樹様は『剣神』の能力ですわね!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界家族〜一家全員で異世界転移!?〜 まるこめ太郎 @marukometaro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ