第7話 あれぇ?

「「「「「なっ!?」」」」」



家族が驚く顔が見える…けどこれだけは譲れないんだ!



「子供達を危険な目に遭わせる訳には行きません。子供達と妻を王宮で保護して頂く事を条件に私1人で魔王領に向かいます。」



「えぇ…此方としても召喚された勇者様一行にお子様が居るとは想定外でした。

その身には強大な能力が宿ると言われてはいますが…。

危険な旅になるのは必須…。長らく我々人間は魔族との関わりをして来なかったのです。彼等が何を考え、どう行動してくるかは未知数です。

我々も子を持つ親の身。柏木様が我が子を案じる気持ちは痛い程に分かります。

奥様とお子様達は我が国に。勿論ですとも。

柏木様のお力添えさえあれば…何とか魔王領へ行ける道が見つかるでしょう!

さすれば魔族との和平交渉も実現に近づきます。」



良かった…分かってくれた。

これでみんなの安全は確保出来た。

良かった…本当に良か…



ポンっ…




肩を隣から叩かれた。

そちらを振り向くと…

笑って居るハズなのに恐怖を感じるお顔をなさっている桜さんがいらっしゃいました…。



あれぇ?…俺…何かやらかしちゃいましたかね…?



「あの…えと…桜…さん?」




「ア・ナ・タ?後でじっくりお話があります♡勿論私だけじゃなくて子供達も言いたいことがあるみたいだから♡

…何でか…分かるよね?」




はっ!そんなっ……桜さんだけじゃなくて可愛い我が子達からも凄く冷たい視線を感じるっ!

すっごくジト目で見られてるぅぅぅぅぅ。




「王様…主人が一人で暴走して不用意な発言をしてしまって申し訳ありませんわ。さっきの発言は主人の独断によるもの…つまり柏木一家の総意ではございません。

家族を大事にしてくれるとても素敵な男性ヒトなのですけど…ちょっと大切に思ってくれる余りに独り善がりで突っ走ってしまうことがあります。

これからちょ〜っと家族でお話し合いをしないといけないので…お時間頂いても宜しいでしょうか?」



にっこりと、しかし王にも有無を言わさぬ圧を放つ我が妻よ…


自分は何て凄い女性と結婚出来たんだ!…好き!




「ぁ…あぁ。勿論ですとも。勿論ですとも桜様!家族総意の意見を我々は望んでおりますし、柏木一家の皆様方がご納得頂けるのが一番です!

どうぞご納得頂けるまでお話し合いをされてくださいませ。

決断し、答えを出すには早急過ぎましたな。

いやはや…失礼致しました。」



続けて王妃様が



「そっ、そうですわ。皆様。今日の所は突然の事ばかりでお疲れでしょうし、混乱もあるかと思われます。どうぞお部屋をご用意致しましたので、そちらで身体を休めてからお話し合いなさっては如何でしょうか?

そしてお疲れの所大変恐縮でありますが、明日、皆様方の『能力判定の儀』を行わせて頂きたく存じます。」



「能力判定の儀?ですか…?」



「えぇ、召喚されし勇者様一行には召喚時にそれぞれ強大な能力を授けられると言われています。どの様な能力なのかを判断する儀式を行わせて頂きたいのです。

儀式と言ってもそんな大層なものでは無いので身構えずに気楽に受けて頂きたく存じます。

その能力を確認してから…それぞれがどの様に動くかを決めても…良いのではないかと…。」



「お気遣い有難う御座います。ぜひそうさせて頂きますね!」



「えぇ。えぇ。そうなさってください桜様。

部屋は我が国自慢の貴賓室をご用意致しましたが、不備等がありましたら仰ってくださいませ。そして護衛と警備には我が騎士団切っての精鋭達が護衛と警備に当たりますので、ご安心くださいませ。


オーリエ騎士団長。此方へ。」



王妃の呼び掛けに控えていた黒を基調とした豪奢な軍服を身に纏った高身長なイケオジが前に出る。




「お初にお目に掛かります。勇者様方。私はこのアバンダイド国の騎士団長を務めさせて頂いております。

ドルシリア・ヴァン・オーリエと申します。

勇者様方ご一行の旅のお供でも、この王宮に滞在中でのご安全も我が騎士団にお任せくださいませ。」



優雅にお辞儀をしながら自己紹介してくれたオーリエ騎士団長様。


…顔も格好良くて騎士団長してて…声もイケボなんてズルくないですかね???



はっ!

我が家の女性人達もメロメロになってしまうのではっ!?


ちらりと桜さん達の方を見るが…みんな特に…うん…メロメロにはなってないね。

むしろ蓮くんが一番目輝かせてるね。

黒い軍服カッコいいよね。あのマントみたいなのも…目茶苦茶カッコいいよね!厨二病心擽るよね!


ふぅ…お父さん安心。まだ椿ちゃんと杏ちゃんにはイケオジは早いです!

…桜さんは自分の最愛の妻なのでイケオジなんて絶対駄目です!!!




「有難う御座います。国一番腕の立つ騎士団長様が着いていてくださるとは、とても心強いです。」



「勿体無いお言葉です。勇者様方のお役に少しでも立てる様に我々騎士団一同、励ませて頂きます。」




にっこりと微笑む騎士団長。

くっ!イケオジの笑顔っ!なんて破壊力だっ!男の自分でもときめいてしまうっっっ!

何て戦闘力の高い男なんだ!



「それでは貴賓室までご案内致します。

部屋には王妃直属のメイドも居ますのでご用等ありましたらそちらに仰ってください。」



「柏木様。この度は我が国へのご尽力感謝致します。

明日の『能力判定の儀』までごゆるりと過ごされてください。」



「明日改めて我が子供達もご紹介させてくださいね?多分椿様と蓮様と齢が近いと思いますので…仲良くして頂けたら幸いですわ。」



王と王妃が部屋を出るまで見送ってくれた。

やっぱりいい人達そうだ。






迷子になるんじゃないか…むしろ迷子になる!くらいに入り組んだ廊下を歩き続け、貴賓室に到着した。


テレビで見た事がある高級ホテルのスイートルームなんて目じゃないくらいに豪華で広い部屋…これもう部屋じゃないよね?

マンションの一室?てか我が家の全部屋合わせてもそれより広くない!?ってくらいのお部屋。


うへぇ…家具とか調度品が高そうだよぉ…

あの花が活けてある花瓶とかキラキラピカピカしてて壊したら幾ら弁償なんだろう…。


…ここで過ごすのかぁ…一般市民には胃がちょっぴり痛いな…




「お初にお目に掛かります。柏木様御一家様。」



丁寧に頭を下げながらそう言ってくれるのはさっき騎士団長さんが言ってた王妃様付きのメイドさん達だ。


…この娘達…きっと身分の高いお家のお嬢様達なんだろうなぁ。

そんな娘達に一般市民代表!柏木一家のお世話なんてさせるのは忍びないなぁ。

それに…



「自分達の事は自分達でした方が性にあってますので。何が何処にあるかとか使用方法を教えてくだされば自分達でやりますのでお気遣い無く。

ね?桜さん。」



「えぇ。それが一番!」



一通り説明して貰った所、衛生観念は日本と変わらなくて一安心というかかなり安心した。

トイレも形は違うけどちゃんとトイレで良かった!

ここも大事なポイントだからねっ!?


ここまで衛生管理が整っているのは魔術具のお陰らしい。

城下に降りても街も衛生管理がしっかり行き届いているのも魔術具が地球でいう電気、下水道、ガス等の変わりになっているからっぽいぞ。


とにかく日本と変わらない生活水準を維持出来るのは有り難い事だ。


説明も一通り終わってメイドさん達は下がって行った。


部屋に誰かが居るのは落ち着かないから、基本的には下がって貰う様にお願いしたのだ。



「さてと。落ち着いたから…お話合いしましょうか?ねぇ?みんな?ねぇ…?…アナタ?」



「さんせーい!」



家族達が笑顔で詰め寄って来る。




…はい。お手柔らかにお願いします(冷や汗)

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