シーン5封印の技の煌めき。

私達の遙か彼方に見える塔。

それは遙か天高く聳え立っている。


「うわあああーーーすっごい高いねえ……………。」


すると口を開くエルフィーナ。


「ええ……そうよ…まずは私達と一緒にあの塔を目指していくわ。」

「そうなんだあ。」


すると口を開くヒューマン男性ロイズ。


「いいかい?ラブラ、君には世界の勇者としてあの魔王ゼルドリスを倒し、この世界を守るという使命がある…だが魔王を倒すという事は大変な事なんだ…その為には君に成長してもらう必要がある……そしてこれから向かうのはその為の大事な修行の一つになる……確かにこないだの君の能力に僕達は少なからず興味があるんだ…是非その力を遺憾無く発揮してほしいんだ。」

「ふぅん……あ!ねえねえ!これ終わったらまた沢山美味しいもの食べれる!?」

「もちろん!帰ったらまた沢山ご飯用意するわ。」

「うんっ!!」


私はまた嬉しくなる。

するとその時。

先頭を黙々歩いていたドワーフ王が立ち止まる。


「なに!?なにかいたの?ドワーフ王!?」

「ああ……左右から数頭…そして背後から………」


木陰から湧いて登場してきたのは数頭のゴリラ型の魔物。


「あれは…………」

「『キラーエイプ』ね」


私達は魔物に取り囲まれてしまったんだ。

元々のゴリラをもはるかに凌ぐその巨体を持つ魔物……そして肉食というヒューマン族達にとっても時折その被害者となる者もいると聞く厄介なモンスターだ。

すると剣を抜き構えるのはドワーフ王。


「いい運動にはなるであろうよ?はっ!?」


斬りかかっていくドワーフ王。

そして声を上げる『ロイズ』。


「さあ……勇者様………お腹を満たす為です…あの魔物を一掃していただきます。」


私を見てそう叫ぶロイズ。

するとロイズの手に握られていたもの。

それはいい香りを漂わせた『肉』

私の鼻腔をくすぐるその食べ物。


「ううっ早く食べたいしお腹これ以上すかないように……。」


すると私の脳裏に聞こえてきた声……それはあの精霊さんだ。


『勇者ちゃん……じゃあご飯食べる前に戦いを終わらせなきゃね……』

『うん……でも戦う時は君が僕と同化してくれて戦闘ができてるのは分かったんだけどさ……。』

『うん…………。』

『でも今お腹空いててさ……早く終わらせたいんだけど。』


私は精霊さんに提案してみる。


すると。


『…じゃあ…早く終わらせる為に…さっき捉えた魔神を魔神具として使ってみようか?』

『えっ!?それって…………』

『ああ……あの時、君が封じた『魔神』の力を使うんだ……さあ……腕輪に祈りながら……………。』

『うん!やってみる。』


私は腕輪を翳す。


「さあ……おいで魔神ゴブリンちゃん。」


その時……腕輪が輝く。

そして光は私の目の前へと射していく。

そこには、きらりと輝く斧が現れたんだ。


「なっ!?斧!?」

「それが……もしかして先日勇者様が封印した魔神と……そして形を変えた魔神具というアイテム………なのか?」


これには私も驚いていた……だけど精霊ちゃんがサポートしてくれる。


「勇者様!?その力はどうやって?」


沢山の事を聞かれた私は一々聞かれるのは面倒と感じてしまう。

私が難しい表情をしたのに気づいたエルフィーナは二人の質問を止める。

そして私に頷き目で合図をくれる……倒せと言ってるのだろう。

私は魔神具を手に取り構える。

その瞬間……BOSSだろうか…一際巨大なキラーエイプが私に襲いかかってくる。

手に力を込め魔神具である斧をぶんっぶんっと振り回し始める私。

やがて振り回すスピードが上がっていく。

グルグルと斧を振り回しパワーを集中させていく私。


「すごい……勇者様の力も本当にとんでもないものだわ。」

「ああ……確かにあのゴブリンんの奮っていた斧を振り回すパワーとそのスピード……やはり勇者の力なのか。」


すると答えるかのように口を開くロイズ。


「それだけじゃない……確かにこの能力も凄いが……やはり魔神を……見てみたい。」


その時。


ゴゴゴと振り回す斧から徐々に姿を現していく巨大な何かの腕……それは緑肌の巨腕だった。

完全なる肉体ではない透き通る様な巨腕。

しかし更にその顔その身体を斧から現していく。


「おおっ!?なんと!!あれが魔神なのか?」

「凄いわ……ああやって捉えた魔物を魔神へと変化させ自分の力とするなんて。」


その時二人に迫り来るキラーエイプの群れの総攻撃。


「うほっうほっ!!」

「なにっ!?」

「不意打ちね!?」

「よそ見も大概にしろ!!はあああああーーーーーーーーーーーっ!?」


ずさーーーーーーーーーーーーーっと迫るキラーエイプを両断するドワーフ王。


「すまん!ドワーフ王!?」

「ごめんなさい!!」


すると気がつくドワーフ王。

そこには更に多くのキラーエイプが一気に三人の元へと襲いかかっていた。


「おおっ!?ちょっと数が多いけど……させないよ。」


私はそういうと斧を構え直す。


『いっくよーーーーーーーーーーーっ……魔神『ゴブリン』……力を示せ………』


私の手の魔神具から巨大な魔神が飛び出していく。

斧を握る光のゴブリンはバッサバッサとキラーエイプ達を仕留めていく。

そして大斧を振り上げる魔神ゴブリン。


「いっくよーーーーーーーーーーーー!!」

『ゴブリン『飛ぶ大斧ジャンピングアクス』』


私が放った大斧は、まるで軽快に跳ね回るゴブリンの動きを真似るように…ぴょんぴょん飛び回る大斧。

次々とキラーエイプ達を切り裂いていく。

そして最後のキラーエイプに飛んでいく。

回転を繰り返し大斧はキラーエイプの頭上を捉える。

そして。

ずさーーーーーーーーーーーーーっと最後のキラーエイプを斬り裂いていく。


「なにっ!?」

「凄いわ…この力が勇者ラブラ様の力。」


すると…魔神具を聖剣に持ち替える私は飛びかかっていく。


『はあああああーーーーーーーーーーーっ。』

魔神封印デスペラード


私の聖剣はキラーエイプを捉える。

サーーーーーーーーっと斬り裂かれたキラーエイプは光となっていく………。


そして。


私の腕輪に吸収されていったんだ。

お読みくださりありがとうございました。

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