シーン3勇者立ち上がる。

エルフの神樹外部に突然の敵襲。

エルフの女王達は敵襲警告に慌てふためく。


『緊急事態発生、緊急事態発生!!』


神樹内に鳴り響く警告音。

その時…………私は何故か酷く冷静だった。

巨大な神樹の脇側には大穴が空き、大穴よりモンスターの手が伸びエルフィーナは身体を囚われてしまったのだ。

だけど私は顔色一つ変えることなく黙々と目の前の食事を楽しんでいたんだ。


「な!?エルフィーナ女王!!??」

「くっ!!この神樹の土手っ腹にこんな大穴を開けるとは……敵は確認されたゴブリンだけではないのか!?」


そう叫ぶドワーフ王『ドワフロス』……するとヒューマン族『ロイズ』は冷静に考察を始める。


「奴ら……ただのモンスターではないようだ……元々のゴブリンならばこの神樹にすら近づく事も出来いだろう……だがこの強行には何らかの力を有したとでもいえるな…だがその原因はやはり魔王か……」

「そうであろうな……だが我々の考えは甘かったともいえよう……あの勇者に期待など……俺は兵を集め奴らを払いをしエルフィーナを救う事とする。」


ロイズは半ば呆れ…立ち去るドワフロスを見送りながら私に声をかけてくる。


「なあ君?」

「なんだい!?私は今食事中なんだよね?」

「君はエルフィーナ女王が捕まってなにか思わないのかい?」


私は今幸せいっぱいなんだよね……それを邪魔されるというのはどうにも不快でならない。

するとロイズは何かを閃いたらしく口を開く。


「そうだ!!」


彼の大声に私はビクリと身体が反応する。

すると彼は何かを私の目の前に取り出し見せてくれる。


「これは………なんだい!?」

「これかい?これはね……とある大魔導師が作ったといわれる腕輪なんだけど…キラキラして素敵だろう?…なんなら君にあげてもいいけど………腕に着けてごらん?」

「ホントにい?」


私は嬉しくなり腕輪を受け取り腕にはめてみた。

天に翳すと光によってキラキラと輝く。


「おお……………キラキラして素敵……………。」


眩い光が私の心を掴んでいた。

すると男は更に一本の剣を差し出してくる。


「それはなんだい?」

「これは僕の家に代々伝わる聖剣と呼ばれる物さ……君が魔物と戦ってくれるならこれもそれも全部あげちゃうんだけどなあ。」


私にそう提案してくる男。

私はキラキラした腕輪に不思議と、うずうずしてしまう。

そして気がつくと。

私は今…………………………。

神樹の外に出て…大小無数のゴブリンの群れの目の前に立っている。

『ぐきゅっ!!ぎゅるる。』

『くはあああーーーっ……。』


涎を垂らしこちらを見ているゴブリン達。

その背後には私に食べ物をくれた女性が大きなゴブリンにその手を捕まれ力なく震えていた。


『ぐへへへへ………………………………………。』


巨大なその手に捉えた女性を見て涎を溢れさせる巨大なゴブリン。

緑色の巨大な体躯…それはこの群れのBOSSという事なのだろう。

その様子を見ているのは先程私にアイテムをくれたロイズ。

そこへドワーフの大男ドワフロスがやってくる。


「どうだ!?勇者の様子は?」

「ああ…ドワーフ王か……ええ…彼女にあの腕輪と……聖剣を持たせてみました。」

「なんだと?あの腕輪と伝説の聖剣か……だが…どちらも……本物でなければ力を発揮出来ぬときくぞ…果たして本当にあの女子に扱えるのか?」


するとロイズは笑みを浮かべる。


「彼女が勇者でなければ……その時は……天命を……ここだと……僕はもう……何も望みません。」

「そうか……その時は、俺も覚悟せねば…な。」


二人の男はその視線を私達に移す。

私の目の前にいるモンスター。

そいつは私を見据えるとニヤリと笑みを浮かべる。

そしてぐったりとしている私に食べ物をくれた女性の頬に長い舌を出し……そしてひと舐めする。

じゅるりと笑みを浮かべるゴブリン。

その時……私の背筋に悪寒を感じる。


『なんだよ?気持ち悪いな君…………………』


私の声に気が付くエルフィーナ。


「ん…………はっ!?なにこれ!?私……………。」


自分の状態に悶え叫ぶエルフィーナ。


『グヒヒ……んごっ!!』


エルフィーナを更に釣り上げる巨大なゴブリン。


「いやっ!?やめてーーーーーーーーっ!?」

「もう……やめなよ……その人は私に食べ物を沢山くれたいい人なんだ……」


スパンっ!!っという音が周囲に鳴り響く。

次の瞬間。

私の手にはエルフィーナの身体が存在する。


『ぐええええええええーーーーーーーっ!?』


腕が斬り落とされ悶え叫ぶ巨大なゴブリン。


「「なにっ!?」」


二人は驚きの声を上げる。

私は聖剣を振り上げる。


『さあ……封印してあげるよ……』

「封印………だと……奴は魔物だぞ?」


私は告げる。


「私は『勇者』らしいよ?……そして私に与えられた力は魔物封印の為の力みたいなんだ………さあ…………。」


私の腕輪が光り輝く……そして私は剣を振り上げていく。

ダッと地を蹴り私の身体は瞬時にゴブリンの目の前に現れる。

驚きに構える巨大なゴブリン。

そして私の聖剣はゴブリンを斬り裂く。

斬られ呆然とする巨大なゴブリン。

私は左手をゴブリンに翳す。

煌めく腕輪。


そして。


魔神封印デスペラード


「うがあああああーーーーーーーーーっ!?」


私の腕輪から光が発する……………………そして。

ゴブリンは絶叫を上げ……消えていったんだ。

お読みくださりありがとうございました。

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