第9話 お付き合い(嘘)の挨拶
「優くん、朝ですよ起きてください」
「刈谷さん?…そっかありがと…う?」
俺より先に起きたらしい刈谷さんに怒られたら、何故か目の前に怒ったような顔をした、男性が1人立っている。
「やあ、おはよう昨日はぐっすり眠れたかい?」
「グ、グッドモーニング…」
まてよたしか昨日、刈谷さんは父母ともに遅い時間に帰ってくると言っていた。
そしてそこから導き出される答えは…またはめられた。
そして、刈谷さんは両親に紹介したいとも言ってたから、今回は夜這いじゃなくてこっちが狙いだったのだ可能性がある。
ていうか、付き合ってない男を両親に紹介することってある!?
「いやー、君がなんなのか知らないけど、とりあえずリビング、来なよ大事な話があるからさ」
見た目そこそこ若いけど、身長的に恐らく刈谷さんのお父さんだろう。
「…わかりました」
俺が起きてすぐ、刈谷さんのお父さんと思われる人に言われて、リビングに行くこととなった。
「とりあえずここに座りなさい」
「わ、わかりました」
これから何が起こるかわかんないけど、面倒なことになるのは確実だろうな。
「母さん、お茶を」
「はいはい、少しお待ちを」
一応お茶は出してくれるんだな。
「はいどうぞ粗茶ですが」
「あ、ありがとうございます」
「お前のお茶とは言ってないだろ」
刈谷さんのお母さんが持ってきたお茶を俺が貰おうとしたら、3個ごとお父さんに持っていかれた。
「お父さん、意地悪やめなよ」
「ごめんよ、愛娘に渡すお茶を忘れてたよ」
そう言って3個中1個の湯呑みを、俺の隣に座る刈谷さんの前に置く。刈谷さん、お父さんの反応からして結構愛されてるんだな。
「優くん飲みますか?」
「いやいいよ」
俺が貰ったとこで、その瞬間にぶんどられそうだし。
「さて、俺の殺意がはち切れる前に話を進めようか。なんで、
なんて言えばいいんだよ、お父さんの怒りレベル的に、何言っても拳が飛んでくるやつじゃん。
「えっと、俺が昨日殺人鬼?に追われてて、そこを助けて貰ったついでといいますか」
「殺人鬼だぁ?そんなの、リアルでそうそう会えるわけないだろ、ちゃんとした理由を言え!」
俺の話が真っ赤な嘘だと思われたみたいで、机を軽く叩きながら怒るお父さん。
まあそうなるよな、本当だけど内容があまりにも奇想天外すぎるし。
「刈谷さんどうすんのこれ」
「どうしましょうかね」
ほんとに困った、全く言い訳という言い訳が思いつかない。
「わかったこの話は一旦置いておこう、話を変えてあげよう。さて、2人はどうゆう関係なんだ?」
質問内容たいして変わってないし、なんならさっきよりも答えにくい質問に変わって帰ってきた。
「俺と刈谷さんの関係…俺が刈谷さんに夜這いかけられかけて…」
「うちの娘がそんなことするわけないだろ!人を馬鹿にするのも大概にしろ!」
ホントの事言ったのにめっちゃキレられたんだけど、ほんとにもう泣きそう。
「刈谷さん…」
「あーよしよし」
「おま、なにして」
泣き言を言って刈谷さんの方を向くと、刈谷さんが俺の事を胸の辺りで抱きかかえ、頭を撫でてくれる。
なにこれ。
「お父さん」
「どうした我が娘よ」
「私達
「「え」」
唐突に言われた付き合ってるの一言に、刈谷さんの胸から離れて刈谷さんの顔を見る。
本人は、演技なのかそれともガチで思ってるのか、曇りなき眼と言ってもいいくらいに、真剣な顔だ。
「は?今なんて」
「だから付き合ってるって」
刈谷さんが再度嘘の現実をお父上に突きつけた。
「刈谷さん、これ面倒なことになんない?」
「でもこれ以外方法ないですよ」
まあさっきの反応を見るに、真実をどんなに並べてもダメそうだし。俺より断然信用ある、刈谷さんが話したこれが一番…なのか?
「な、なんで昔はお父さんと結婚するなんて言ってたのに…」
「それは昔の話でしょ?今は、この人が私の旦那さん」
そう言って刈谷さんは、俺と腕組みをして、お互いの顔を近づける。
「な、なな…俺の娘はお父さんと…」
「え〜…」
悲しいのレベルが限界凸したからから、いい歳して泣き始めるお父さん。
「えーっと、あなたなんだっけ」
「梶谷です」
「そう、梶谷くんどうする?朝食でも食べてく?簡単なものしか作れないけど」
この父に対して、この母は結構落ち着いてるな。多分、刈谷さんはお母さん似だ。
「おかまいなく、急いで帰らないとなので」
「えー帰っちゃうんですか?」
「いやだって、なんか怖いじゃん」
お父さんがまだ泣いてるからいいけど、このままだと何があるかわかんないし一刻も早く帰りたい。
「いーや、梶谷くん食べていきなさい」
「いえいえ、ご迷惑でしょうし」
「いや、この私が言ってるんだから迷惑なんかじゃないよ。それにもうちょっと話もしたいしね」
一家の大黒柱が言ってるから、どうも断るに断りにくいな。
「いやーでも…」
「まあまあ優くん、お父さんがいいって言ってるんだし」
「いやー、それでもね…てか力強!」
席を立って逃げようとしたら、刈谷さんに肩を掴まれて無理やり席に座らせられた。
「力が強いなんて、女子に失礼ですよ」
「そうは言ったって…」
ほぼ俺の全身の力に、腕の力だけで勝つのは力強い以外の何物でもないだろ。
「梶谷くん急いでるならちょっと待っててね、なるはやで作るから」
刈谷さんのお母さんは、結構優しめなのか俺のことも配慮して、ちょっぱやで朝ごはんを作ってくれている。
「はいどうぞ、そんな豪華なものでは無いけど」
「いえいえ、おかまいなく」
朝ごはんを作ると言ってから、数分で食卓の上にスクランブルエッグwithウィンナーと米、味噌汁のよく見る朝ごはんが運ばれてきた。
「はい、優くんあ〜ん」
運ばれて早々に、刈谷さんが箸でつまんだウィンナーを、俺の方向に向けてきた。
「急になに」
「いいじゃないですか、なんたって私達付き合ってるんですし。それに、こうした方が嘘バレにくそうですし」
最後に小声で少し付け足してきたけど、これは刈谷さんがただやりたいだけでは。
「でもそれは、言えなくもないか…」
刈谷さんの言うこともあってはいそうだし、一応刈谷さんに呼応してウィンナーを口に運ぶ。
「美味しいですか?」
「美味しいですよー」
「や、やめてくれ俺の前でそんな、娘にあ〜んして貰うなんて、俺だってされたことないのに」
あ、あ〜んでさらにお父上に心のダメージが入っちゃったらしい。このままだと、脳破壊されるんじゃないか?
「はいはい、お父さんは私がやりますからねー」
「ありがとう、美味しいよ母さん」
お父さんを慰めるように、刈谷さんのお母さんがスクランブルエッグをあーんで口に入れる。
にしても刈谷さんのお母さん見た目若々しいな、普通に女子高生、大学生って言っても大丈夫なくらいには見た目が若い。
「なんだお前、母さんをジロジロ見て。まさか、娘だけには飽き足らず母さんまでも…親子丼か!親子丼なのか!?」
俺が見ていたのがバレたらしく、食事中だと言うのに親子丼を連呼し始めた。
「い、いや違いますよ。お2人とも、見た目が若いなと思っただけですよ」
実際刈谷さんのご両親2人は、新婚夫婦に見えなくもなくらい若く見えるし、行動もそれっぽく見える。
「あら、やっぱり私まだいけるのかしら?」
「そんなおだてたって、俺は認めんぞ…」
「別に、ただ思っただけなので」
刈谷さんご両親は、褒められた時の反応がわかりやすいな。
「え、優くん私は?」
「刈谷さんも可愛いですよー」
ご両親に同調してきた刈谷さんには、あしらうように頭を撫でて、対応してあげる。
「なんか適当ですね」
「はは、なんの事やら」
「ごちそうさまでした」
少し急いで食事をしながら、談笑もして上手くお父さんの質問をかいくぐりながら、朝食を完食できた。
「それでは、俺はこれで。ご飯美味しかったです」
「別にいいのよ、また機会があれば来てもいいし」
「優くん、また学校で」
「刈谷さんも昨日はありがとね」
「いえ、私も昨日はとてもドキドキしたけど、楽しかったですし」
それを付け足すと、変な勘違いされる気がするんだけど…
「おい待て楽しかったって…」
「それでは、俺急いでるので」
最後お父上が何か言いたそうだったけど、俺も急いで帰らないと行けないし、ドアを閉めてその場から逃げるように走って家へ向かう。
「母さんただいま」
「おかえり優」
急いで家に帰って、リビングの扉を開けると、母さんが食卓の席に座っていた。
あれ、思ってたより怒ってない、急に泊まるとか言ったからつい怒ってるものかと。
「とりあえず…ここ座ろうか」
「あ、はい」
怒ってない風に見えたけど、普通に怒っているらしく軽い圧と共にリビングの椅子に座らせられた。
「まずね…」
母さんの説教は、だいたい要約すると事前に何も言わずに人の家に泊まるな、とかそんな感じの内容だった。
「わかった?優」
「はい、以後気をつけます」
「ならよし、朝ごはんは?」
「さっき半強制的に食べてきたから大丈夫」
「半強制?まあ食べたってことね。じゃあ早く着替えるなりお風呂入るなりして学校行きなさい」
そういや昨日そのまま寝たから、風呂入ってないのか、とりあえず軽くシャワーだけ浴びてから行こ、時間的には余裕あるし。
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