第8話 塾で隣の清楚美人は俺を殺そうとしてくる
「この時のこれは、名詞と同じような部類になるから…」
塾の先生がさっき解いた英語の問題の解説を入れてくれる。けれどもほとんどわかんない、とゆうかなんでほぼ名詞と同じような感じになるのかわからん。
「それで、答えはこうなる。次、梶谷答えわかるか?」
「あ、俺ですか。わかんないです…」
「そうか、じゃあ梶谷の隣の…」
やっぱり俺、英語そんな得意じゃないかもな。て言っても、めちゃ得意な教科がある訳でもないんだけど。
「これで授業を終わります」
結構苦痛だった英語の時間もやっと終わって、ついに塾の拘束からはなたれた。とは言ったけど、帰る前にちょっとやり方聞いておかないと。
「あの、すみません」
「どうかしましたか?梶谷さん」
俺が話しかけたのは、隣の黒セーラー服をまとった髪ロング清楚美人、塾の模試では合計点で毎回全国3位以内に入っていて、しかもここら辺では1番頭のいい黒女に通っているらしい。刈谷さんよりも、遥かに頭のいい人。
「実はさっきの英語が全く分からなくて、お時間よろしければ教えていただけないかと…」
「別に構いませんけど」
「ありがとうございます」
俺は英語とかその他教科でも、わからないとこがあると帰り際、先生とかになるべく聞くようにしている。
「とゆうか、いつも思うんですがなぜ私に聞くんですか?別に先生でいいのでは」
「先生の手を煩わせるのもあれだったんで。それに、頭がいい人に聞くと、自分頭良くなった気になれるので」
「なんですかそれ。まあいいです、とりあえずわからないとこ教えてください」
わからないとこって言っても全部だし、とりあえず軽いやり方でも聞いておこう。
「日本語訳を読んだ時、こと、が付いてるとこれを使わなければならないので」
「あーわかりました。ありがとうございます」
さすが、天才か秀才か分からないけど、頭のいい人だ説明がわかりやすい。
「他にはありますか?」
「いえあとは自分で出来そうなので、ほんとにありがとうございました」
刈谷さん同様に説明が上手くて、頭にスルスルとやり方が入ってきた感覚だった。
「それじゃあ俺はこれで」
「あ、ちょっと待ってください。梶谷さん一緒にかえりませんか?確か私達、方向同じでしたし」
「ま、まあいいですけど」
いつも1人でそそくさと帰るから、気づかなかったけど俺方向同じだったんだ。
「ありがとうございましたー」
言われて即OKしたけど、話すことねー。でも、なんで俺の事誘ったんだろ。もしかして告白とか…ないな俺を誘う時表情筋一切動いてなかったし。
「にしても、今日は満月、綺麗ですねー」
「…」
やべーめっちゃ気まずい、てかこうなるの目に見えてたのによく誘う気になったな。なにか話題…あ、1個だけあった。
「あのすみません、そういえばなんです…」
「梶谷さん」
「は、はい」
今まで黙っていたのに、急に立ち止まって改まったように話し始めた。
暗くてよく見えないけど、多分表情筋は動いていない。
「実は私言いたいことが…」
「あの、その前にひとついいですか?」
「は、はい」
多分あっちは大事な話があるらしい。それなら尚更、これは結構必要になってくる。
「あのー、とても言いにくいんですが
「は?」
俺が名前を尋ねると、元から無表情だったのにさらに目から生気が抜けて、元よりもいっそう無表情味が強くなった。
「今まで何度も…してきたのに…」
まずい理由は知らないけど、彼女の清楚が崩れ始めてきた、さすがにこの重要そうなタイミングはノンデリすぎたか。
「梶谷さん」
「は、はい」
名前を呼ばれただけなのに、何故か由乃の時みたいなとてつもない殺気を感じた。
「今私の名前を聞いたんですよね?」
「は、はいそうですね」
「じゃあつまり私の名前は知らないと」
「ま、まあそうなりますけど…」
なんかホラー映画見たいな感じになってきた、こういう時これされてるキャラはだいたい…
「じゃあ教えてあげますよ…その前に、私の腕の中で
「へ?」
「だから、私の腕の中で死ねって!」
「あっぶな!」
突然何を言われたかと思うと、彼女は持っていた革製の学生鞄から先のとがったハサミを取り出して、恍惚そうな顔でこっちにハサミを突き出してきた。
「なんで逃げるんですかー?私の名前聞きたいんですよね?」
「死んだら元も子もないですよ!」
ハサミを避けてからは、ガチの命の危機を感じたから、急いで家の方向へ走って逃げる。
「大丈夫ですよ、人は死んでから少しの間は聴力が生きてるらしいので」
「へーそれは知らなかった、いい情報をどうも!」
「いえいえ、だから私に殺されてください!」
てゆうか、さっきからこの人から全力で逃げてるのに全く振り切れない。俺スニーカーで、彼女はローファーだってのに。しかも俺は足の速さに関しては、女子になら負けない自身はあったのに。
「梶谷さん待ってください」
「よし、もうちょっとで家に…てか、どうやって入ればいいんだ」
必死だったから忘れてたけど、絶対ドアとか開けてたらその間に殺される。誰かに開けといてもらうか。いや、それはそれで今から連絡する手段がないな。
「とか言ってる間に家に…刈谷さんなにしてんの!?」
「あ、優くん今日は塾でしたか、結構遅いですね。ところで、何してるんですか?」
俺の家付近に着くと、刈谷さんが俺の家の塀の上を登って何かをしようとしていた。
「俺のことはいいから、なにしてんの!?」
「いやー、2階から入るために軽いパルクールを…」
じゃあ刈谷さんはいつも、俺家に2階から入る時塀からベランダに飛び移ってるってこと?身体能力高いな。
「よいしょ。私の話はこれくらいにして、優くんは何してるんですか?」
刈谷さんと話していたら、家を通り過ぎたし何故か刈谷さんも着いてきた。
「逃げてんの後ろ」
「梶谷さんその人誰ですか?もしかして…彼女?」
「おー怖。で、どうするんですか?」
「とりあえず撒きたいけど、家通りすぎちゃったから」
正直定期的に運動しない俺は、体力が現在そこそこ限界でここから、少し回って家へ帰る体力があるかと言われると結構微妙なラインだ。
「そうですねー、じゃあ私のお家来ますか?場所は知ってますよね」
「まあ、なんとなくは。でもいいの?その、ご両親とか家の鍵とか」
親なら何とかなるかもだけど、鍵が閉まってるなら、解錠の時間で主に俺がデットエンドを迎えかねない。
「私、今日お母さんとお父さんともに帰りが遅くなるらしいので、大丈夫なはずです。まあ、いても紹介するだけですから」
両親いないなら少し安心だけど、紹介ってなんだ友達としてだよな。
「それで鍵については、ご安心を。私の家、無駄にセキリティはしっかしてて、スマホで施錠と解錠できるので」
刈谷さんの家は人の力だけではなく機会の力も使ってるのか、俺の家も付けてもらおうかなあのガバセキリティはほんとに危ないし。
「とりあえず、刈谷さんの家に避難させてもらっていい?」
「了解しました。それじゃ、頑張ってくださいね」
「ねえ、梶谷さんさっきから何話してるの?もしかして……プロポーズかなんかですか?」
この人どんどん変な方向に考えがねじ曲がってってないか?しかし、ここから刈谷さんの家まであと10分くらいか、死ぬかもしれない。
「優くんそこの曲がり角を曲がったらすぐです」
「おっけー。あれ?そんな道だったっけ?」
俺もうろ覚えではあるけれど、この間刈谷さんを送った時ここを曲がった記憶は…
「それでは、私の家はここなので優くん頑張ってくださいね」
「え!?」
裏切られたー!しかも、頼みの綱が消えたから、俺の消えかけの体力を支えていた心の支えが消えた。
「ほら、梶谷さんもそろそろ限界ですよね?潔く私の腕の中で死んでください」
まずいまずい、この人体力無限なのか喋る余裕ありすぎ。いや、待てよさすがにあの刈谷さんでも俺を裏切るはずは無いと思う、きっとそのはず。だとすると…
「梶谷さん止まっていいんですよ、私が最後に1回だけ抱いてあげるので」
なんともこの
「優くん早くこっちに!」
「ビンゴ!」
刈谷さんが裏切ったように見えたけど、刈谷さんはドアを開けるために一旦裏切った振りをして玄関で待ってくれていた。
「ありがとう刈谷さん」
刈谷さんが待ってくれていた、家の中に急いで入り込む。
「梶谷さん開けてください、私何もしませんから、ハサミだってここに捨てますから……今日は無理そうなのでまた後日、それでは梶谷さんまた明日」
最後にドアを何度も叩いて、こっちに入ろうとしてきたけど諦めてくれたのか、また明日と言って去っていった。
「ほんとにありがとう刈谷さん」
「でも、良かったですね。女性に追われるなんて、全男子の夢じゃないですか」
「あれはもう、ホラーの類でしょ」
あんな死にかけたのに、夢が叶ったとか言う人は相当ポジティブな人くらいだろう。
「で、なんで優くんは追われてたんですか?」
「実は…」
刈谷さんになんとなくと事の経緯を伝える。
「それは、優くんが悪くないですか?」
「やっぱりそうだよね」
「それで、明日はどうするんですか?」
「一応塾には行こうと思ってるんだけど」
「行っちゃうんですか?」
「謝罪もしたいし」
そんなに死にたいのか?と思うかもだけど、さすがに今回のことはしっかりとしっかり謝って、殺される可能性をなくしたい。
それに、塾の中なら人目があるから殺されないだろうし、謝罪はできるだろう。
「まあ行くなら、死なないでくださいね」
「大丈夫だよ、たぶん。とりあえず危機は去ったし、俺は帰ろうかな」
「待ってください」
さすがにドアの前にはもう居ないだろうし、普通に帰ろうとしたら刈谷さんに引き止められた。
「まだ待ち伏せてるかもしれないですよ」
「いや、さすがに大丈夫でしょ」
「あれだけ執念深いと分からないものですよ」
確かにそう言われると、待ち伏せの可能性も無くはないか。
「でも、俺家に帰らないと…」
「今日は泊まって行きませんか?明日早くに帰れば大丈夫でしょうし」
「母さん達に普通に怒られそうだしな」
「適当な理由つけるとか」
なんだか刈谷さん、異常に俺を引き止めようとしてくるな、いつもこんな感じではあるけど。
「じゃあ、わかった。帰らない、さすがに死にたくは無いし」
「そうですか、じゃあ早く寝ましょ。私の部屋で」
なんとなくわかってはいたけど、やっぱりそれが狙いか。
「別に俺、ソファとかで…」
「優くん疲れてるでしょうし。それに、私のベットふかふかですよ」
今の俺の酷使した体には、結構な宣伝ポイント持ってこられた。
「そう言われると、でも刈谷さんが何もしない保証ないし」
「それは、ソファでも変わりませんよ。今日は私も疲れてるので、普通に寝るつもりですから」
でもそれって、どっちにしろ添い寝はすることが確定してるんじゃ…
「まあまあ、とりあえず私のベット行きましょ」
「その前にちょっと電話させて」
刈谷さんに半無理やりにベットに連れていかれる前に、母さんに電話を入れる。電話は、必死の言い訳を駆使して何とか了承を貰えた。
「刈谷さん、何もしないでね」
「大丈夫ですって。優くん知ってますよね、私が疲れてる時すぐ寝ちゃうの」
なんか前にそんなこと言っていたような気もするけど。なんとも信用ならんな。
「とりあえず早く寝るよ。俺明日早く起きないけないから」
「はーい、じゃあ電気消しますね」
刈谷さんが部屋の電気を落とす、それも一緒に俺も目を瞑った。
というか、今思ったけど刈谷さんと寝ることが俺の中で普通になりつつある気がする。今日の恐怖もあるけど慣れの恐怖もふつふつと…
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