第7話 幼馴染と夜這いガール(3)

勉強会本戦


「ただいま〜!優も、荷物持ちお疲れ」


献立を決めたあとは、1番近くのスーパーにカレーに足りない食材等を由乃と買いに行った。


「ナンも売ってたし、早速料理始めようか。優はテレビ見るなり、ゆっくりしてていいよ」

「じゃあ、よろしくお願いします」


由乃が買ってきた食材と、冷蔵庫にあった食材を台所に出して調理を始めた。由乃の調理は、慎重かつゆっくりと進めている感じに見える。


ここで1つ気になったけど、これが刈谷さんだったらどんな感じなんだろうか。刈谷さんは、調理一つ一つの動きが早かったけど、由乃の動きを見るに、あれはそこそこ上級レベルなのかもしれない。


「今、刈谷さんのこと考えてるしょ」

「いえまったく、どうぞ料理を続けてください」


由乃の持つ女の勘なのか、俺が刈谷さんのこと考えてるのがバレた。いやはや、女性は恐ろしい。



「完成したわよ、カレー」

「待ってました」


由乃に考えがバレてからは、カレーの調理音をBGMにテスト勉強ついでで、塾の宿題を解きながら時間を潰した。


「優も運ぶの手伝って」

「わかってますよ〜」


由乃に言われて、台所にカレーとナンを取りに行く。


「おーこれは、見事なナン」

「でも、あんたほんとに変わってるわね。カレーにナンって」

「そう言う由乃は、ライスなんだな」


由乃の皿に盛り付けられたカレーを見ると、普通にカレーライス。


「そりゃあ、私カレーライス好きだし」

「お前変わってんな」

「あんたが変わってんの!」



「「ごちそうさまでした」」


由乃の作ったカレーは、出来栄えは普通に良く、アニメで見るような野菜が硬いだとか、半生みたいなことも無い、美味しいカレーだった。


「じゃ、勉強するか。それとも、先風呂入るか?」


家を出る前に母さんが、湯船は張ってあるって言ってたから、入ろうと思えば入れるはずだ。


「どうしよ、いいやまだ時間的には早いし後で入る」

「そう、じゃあ勉強するか」

「それじゃあ、優の部屋ね」

「なんでだよ」

「え?だってそっちの方が、お泊まり会感あるじゃない」


なんで、そこんとこリアリティを求めてくるんだ、別に俺の部屋何も無いからいいけど。


「わかった、じゃあ勉強道具持って来て」

「わーい…あ、ごめん勉強道具家に忘れた」

「じゃあお前何持ってきたんだよ」

「えーっと、服とか?」


つまり今の由乃は、勉強会ではなくただお泊まり会しに来ただけの人ってことか。もともとその予定ではあったけど。


「ちょっと、1回取りに帰る。優は先に始めといて」

「わかった。けど、ちゃんと戻ってきたらかぎかけろよ」

「わかった!」


多分今日の刈谷さんの言い方的に、戸締りちゃんとしないと絶対に侵入して来るだろうし。



「ごめん、優今戻った」

「おかえり」


由乃が家を出ていってから、10分ほどして問題集と教科書を何冊か抱えた由乃が戻ってきた。


「なにやってんの?」

「数学」

「じゃあ、私も数学やろ。あ、わかんないとこあったら私に聞いていいから」

「俺は、そこまで数学のできは、悪くないです」


俺は一応塾にも言ってるし、勉強もこまめにやってるからそこまでわからない問題もないはず。



勉強を始めてから、だいたい3時間くらいたっただろうか。その間は半分以上の時間を数学に使って、数学の気休め程度に国語をやったりを繰り返して勉強していた。


「優、そろそろお風呂入らない?」


時間的にも、いい感じだからか、お風呂を切り出す由乃。


「いいぞ、もうお風呂には貯めてあるからいつでも入れるし」

「そう、ありがと」

「あと、由乃」

「なに?」

「さっき俺も言ってて思ったんだけど、お風呂入らない?は一緒に入ろうみたいなニュアンスだよな。気をつけろよ」


そんな、軽い言葉を口にすると由乃の顔が一気に赤くなる。


「な、なな、何言ってんのあんた!?とりあえず私は1ではいるから!」


そういった由乃は思いっきりドアを閉めて、階段をおりて行く。でも、実際由乃とは何回かお風呂に入ったこはない訳では無い。て言っても、小さい頃数回入ったくらいだけど。



「いいお湯でした」

「おかえんなさい」


風呂上がりの髪を乾かした、モコモコパジャマを着た由乃が俺の部屋に戻ってきた。匂いは伝わって来ないけど、多分いい匂いなのだろう。


「じゃあ、俺も入ろうかな」

「行ってらっしゃい、美女の残り湯楽しんできて」


そうか、今の風呂の状況はは現役JKが使った、フリマで売れば普通に売れそうなお湯なのか。


「そうだな、現役JKの出汁をテイスティングしつつ堪能してくるよ」

「気持ち悪!」

「お前が振った話だろ」


そうは、言ったもののここに来てほんとにJKの出汁の取れた風呂に入ることになるとは。まあ、当の相手は俺もだけどそう言う感情はないんだろうけど。


脱衣所で服を脱ぎ、しっかり体を洗ってから湯船に浸かる。今日は今日で疲れたし、疲れが湯船に溶けていく感覚があって気持ちいい。


「ふむ、髪の毛…」


湯船に浸かっていると、明らか俺のものではない長い髪の毛1本。


「ま、由乃のだな長さ的にも。仮に刈谷さんだとしても、あの人髪の色違うし」


そもそも俺は、人の髪の毛で…みたいな変な趣味は無いしこの髪の毛は、排水溝にでも流しておこう。



「いや〜気持ちよかった、疲れが一気に…どうした由乃下向いて?」

「いや、あんた服…」

「あ、ごめん」


さすがに下は履いているけれど、いつもの癖で服を脱衣所に持ってくの忘れてた。


「ごめんごめん、つい忘れてて…あれ?なんか服が散らばってる由乃…」


部屋に戻ると、服をしまってる棚とゆうか由乃の付近に俺の上下1着ずつの服が置かれている。


「わ、私知らないよ。もともとあったし、あ、あんたがしまい忘れたんじゃないの?」

「そうか?なるべく部屋は、綺麗に保とうとしてるんだけど」

「た、たぶん忘れてたのよ。あんたたまにぬけてるとこあるし」

「俺って、そんなおっちょこちょいな感じだったっけ?ま、そんなこともあるか」


だってそもそも、由乃が俺の服出してなにかすることもないだろうし、それ以前に由乃に何のメリットも無さそうだし。


「てか、あんた早く服きて。いつまでそのかっこなの?」

「ごめん、じゃあこれでいいか」


とりあえず、既に出ている服を着て、勉強道具の置いてあるローテーブルの定位置に座る。


「とりあえずは、勉強再開するか」

「そ、そうね…」


軽く伸びをしてから、また勉強に取り掛かる。てか、いつまで勉強するんだろう、俺の部屋の時計はもう10時をさしている。



「由乃、これの解き方分かるか?」


勉強を再開してから、1時間問題集を解いていたら普通に分からない応用問題にぶつかった。


「バカね、由乃さんに任せなさい!えっと、Xが…ちょっと待ってね」


俺をバカにしてから、問題を見た由乃が、ノートに式を起こして解き始める。


「う〜んわかんない」

「お前もわかんないのかよ!」


最初に俺をバカにしたのは、なんだったんだろうか。


「だってこれ、難しいんだもん。答え見ちゃえば?」

「まあ、そうするか」


わからない問題は、早めに切り上げて解説を読む方に切り上げた方が、自分のためにもなるだろうし。


「これはですねー、これとこれを…」

「「あーなるほど…は!?」」


俺と由乃が同時に俺の後ろの方に、顔を上げる。声で何となくわかったけど、刈谷さんだ。


「なんで、刈谷さんいんの」

「だって…玄関の鍵空いてたんですもん」


玄関の鍵が空いてた、俺は由乃が来た時はちゃんと鍵閉めたし、買い物帰りの時もしっかり閉めたとゆうか、最後に家を出たのは…


「由乃お前玄関の鍵は…」

「あ!ごめん忘れてた」


その場で、てへぺろみたいなポーズをとる由乃。


「とりあえず、俺鍵閉めてくるよ」

「大丈夫ですよ、鍵は私が閉めておいたので。戸締りしっかりしないとですからね」


なんだろう、刈谷さんに戸締りの話されると、妙に説得力あるな。


「とりあえず刈谷さん、帰って」

「嫌ですよ。とゆうか、お2人とも勉強私より苦手そうなので、先生してあげましょうか?」

「それは、助かるけど」


刈谷さんは、勉強ができるし普通にわからないとこを教えて貰えるのは助かるけれども、不法侵入者なんだよな。


「じゃあ、とりあえず俺達の勉強が終わるまでは居ていいよ」

「え?寝るまでずっとじゃないんですか?」

「「ちがう!」」


刈谷さんの言葉に俺と由乃の発言がハモった。



「先生!ここどうやるの?」

「これはですね…」


刈谷さんの教え方は普通に上手くて、わからないとこがあっても説明が理解しやすい。


「あ〜納得。でも、先生は勉強しないの?」

「いいんですよ、実際人に教えることも勉強にはなりますし」


さすが、頭がいいけど感性バグってる人は凡人とは考え方が違う。俺は覚えることで必死なのに。



「あ〜疲れた。勉強終わろうか、時間も遅いし」


刈谷さんが来てから、勉強の密度もましてさらに集中して勉強に取り組んでいたら、時間は1時間ぐらいになっていた。


「じゃ、刈谷さんも帰ろうか」

「え〜、若い乙女をこの時間1人出歩かせると?」

「よろしければ、お送り致しましょうか?」

「嘘です、1人で帰ります。そこまで距離も遠くないですし」


なんだか今日は、やけにすんなり帰ろうとしてくれるな。


「それでは」


刈谷さんが静かにドアを閉めて、どこかに消える。てか、刈谷さん出てくなら鍵閉めないとな。


「じゃ、優寝よっか」

「そうだな、じゃあ敷布団を…何してんだよ」


敷布団を出すために、ローテーブルをしまおうと後ろを振り向くと由乃が何故か俺のベットで、待っている。


「いやほら、敷布団出すの面倒じゃん?」

「でも、今の季節柄添い寝は暑い…」

「なに?やなの?」

「いえ、一緒にねさせていただきます」


何故だろうか、俺の心の中に由乃の殺気に逆らえない自分が存在している。


「それじゃあ、おやすみ」


俺もベットに入って、部屋の明かりを消して由乃とは反対方向を向いて眠りにつこうとする。


「あの、由乃さん?」

「どうしたの?」


眠ろうとしたら、由乃が後ろからバックハグのような形で抱きついてきた。


「この体制、やめてくれませんか?」

「むりよ、だってこうしてれば、刈谷さんから守れるかもしれないし」


バックハグで、不審者から守るってのはそこそこ無理ある気がするんだけど。


それに、由乃も寝てしまったら意味が無い要な気がするけど…


「そうですね、私も賛成です。優くんを不審者から守れるかもしれないですし」

「だからなんでいるのよ!」


案の定と言うか、どうやってきたのか、またいつの間にか刈谷さんが俺の部屋に来て、ベットに潜り込んでいる。


「あ、大丈夫ですよ。鍵はちゃんと閉めてるので」

「そこじゃなくて…」


俺の今の状況は、後ろで由乃が俺に密着、前で刈谷さんも俺に密着状態。まだ、2人だけならいいけど、さすがに3人は、暖かい空気こもるからか暑い。


「やっぱり優くんの隣は譲れないですよ。あ!やっぱり優くんは、私を使うだけ使って朝みたいに捨てちゃうんですね」

「は?」


由乃のドスの効いた声に、心臓が飛び跳ねる。


「刈谷さん!語弊生まれるような、言い方やめて」

「使うだけ使うは、否定しないんだ」

「そうじゃなくて!もういい、俺敷布団でねる!2人はベットで寝てて」


収集つかなくなってきたし、もう無理やり話題をそらさないと面倒なことになる。


「いや、でも優…」

「由乃は、刈谷さんと添い寝してみはっといて!」

「わかった…」


これなら、由乃の言った俺を守るも達成されるし、俺の命と理性が保たれるだろうしいいだろう。


「はい、2人ともおやすみ。こっちに来ないでよ」


2人に警告を言いながら、敷布団を敷いて、そのまま眠りに入る。



そこそこ深い眠りじゃなかったからか、パッと目が覚めた。時間は朝の7時。起き上がって、一旦部屋中を見渡す。


「2人は仲良いな」


ふとベット方に目をやると、向かい合う形で添い寝をしている2人。


「2人とも、起きて。朝だよ、刈谷さんは帰らないといけないんだから」

「ん…おはようございます優くん…私はもうちょっと…」


刈谷さんは、起きはしたもののまたベットの中に入って二度寝を始めようとする。


「ん?優…好…だよ…」


意外と2人は朝が弱いのか、なかなか目覚めてくれない。


「おい、寝言言ってないで起きろ」

「ん?寝言…ご、ごめん。私、なんか変なこと言ってなかった?」

「いや、ちゃんとは聞こえなかったけど」


なにか引っかかったのか、勢いよく飛び起きて軽く前髪を治しながら、会話をする由乃。刈谷さんは、まだ寝ている。


「とりあえず2人とも起きて、刈谷さんは早く動かないと、遅刻するよ」

「そうですけど…」


刈谷さんをベットから引き剥がそうとするも、しがみついて離れようとしない。


「じゃあ、ギュッてしてください」

「はぁ?急に何言って…」


刈谷さんが何を言い出すかと思えば、急にハグ待ちのポーズをとり始めた。


「だって昨日結果的に、優くんに何も出来なかったんですもん」


刈谷さんの中で俺に夜這いか何かをするのは、デイリークエストかなんかなのか?


てか、昨日は、じゃなくていつも、と訂正してほしいな。


「してくれないなら、私また一緒に朝食、食べますよ」


朝食ぐらいならいいけど、家に女二人も、つれ込んだとなれば、母さんにあらぬ勘違いされてもおかしくは無いな…


「わかった、やればいいんでしょ」


母さんに勘違いされて面倒になるくらいなら、全然こっちの方がいい、つまり背に腹はかえられぬ。


「やった!はい、ギュー」

「はぁ!?ちょっと…」


許可を出すと、俺が準備する間もなく、刈谷さんが唐突に抱きついてくる。


いくら刈谷さんと言っても異性だ、俺の心拍は少しばかり上昇していく。


「そろそろいい?」

「え〜私はこのまま…」

「早く帰って!」

「は〜い」


ハグをした刈谷さんは、そのまま俺部屋を出て玄関から出ていった。


「疲れた…どうした由乃?」

「いや、あんたもバカだなって」

「え、急にけなしてくるじゃん」


朝も朝で一悶着あったというのに、唐突に由乃にけなされた。今までの俺の行動で、バカって言われるとこあったか?


「とりあえず、由乃は先にリビング言ってていいぞ。俺は着替えてから行くから」

「そう、じゃあまってる」


恐らく昨日母さん達は、結構夜遅くに帰ってきたのだろうけど、多分母さんの事だし朝食を作って待ってくれてるはず。



「優、おはよ」

「おはよう、母さん」


軽く身支度を済ませたあと、リビングに行くと予想通り母さんが既に台所に立っていた。


「あれ?優もう1人は?」

「もう1人?いるわけないじゃん、だってここの家来たの由乃だけなのに」

「いや、でも昨日お父さんと帰ってきたら靴が…」

「靴?」


ちょっと待てよ靴…


「あ!もしかして…」


刈谷さんは昨日玄関から入ってきた、刈谷さんは不法侵入する時いつも靴を履いてくる、そして母さん達は俺達が寝てる時に帰ってきた、そこから導き出されるのは…


「俺が気づかず、ただ刈谷さんとハグしただけの人間ってことか」

「どうしたの?優急に倒れ込んで」

「だから、私バカって言ったのわかる?」


その場に四つん這いに倒れた俺を、煽るようにつついてくる由乃。


「じゃあ、由乃も止めてくれよ」

「いや、だってあんた達がいつの間にかやってるんだもの。まあ、私が気づいたのも終わってからだけど」


まあ、確かに急すぎて考える時間もなかったけど。


「でも、あんたやるわね。まさか、女の子2人連れ込むなんて」


言葉を言っていくにつれて、どんどんニヤケたような声になっていく母さん。


「母さんは黙って…」


ちゃんとした理由を知らない母さんの言葉を聞くと、さらに俺が惨めになってく。

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