第2話 隣の席の刈谷さんは俺に夜這いしてくる(2)

学校でも...


刈谷さんに襲われた次の日。昨日は、刈谷さんの好きについて考えていたら目が冴えてしまってほとんど寝れなかった。


でも、今は授業中だし容易に寝ていられない。


「あ〜眠い」

「優くん大丈夫ですか?凄い眠そうですけど」


俺のあくびを聞いてなのか、心配そうな顔で俺を見る刈谷さん。


あんたのせいだよ!と、この場でブチ切れたい。


とゆうか刈谷さんは、結構元気そうだなもしかして普通に寝れたのかこの人。


「先生、梶谷さんが教科書忘れたらしいので、机くっつけていいですか」

「なんだ梶谷教科書忘れたのか、いいぞ刈谷見せてやれ」


突然刈谷さんが虚偽の報告で俺の机に刈谷さんの机をくっつける。


「なにしてんの刈谷さん」

「いや、机くっつければ優くん寝れるかなって思って。私見張っておくので寝てていいですよ。後でノートも見せてあげますし」

「ほんとに言ってる?」


正直き昨日の1件があるから、刈谷さんに対して全く信用がない。


「大丈夫ですよ、ここ学校でしかも授業中ですよ。何か出来るわけないじゃないですか」


微妙に信じられないけど、背に腹は変えられないし寝れる時に寝てしまおう。


「頼んだよ刈谷さん。ゼッタイに何もしないでよ」

「はい、おやすみなさい優くん」


信用50%くらいの刈谷さんに頼んで、俺はすぐさま机に突っ伏して寝に入る。



睡眠を始めて5分くらいだろうか、俺の太ももの上で何か細いものが踊っている。


「あの、刈谷さん何してんの?」

「何ってちょっかい出してるだけです」


寝ていいといった本人が、睡眠の妨害してくることあるんだな。


「その割にどんどん指が上に上がってきてるけど…」

「…さあ?」


この白々しい反応が微妙にムカつく。しかも指が主に俺の下腹部方向に上がってきてるし。


「あ〜もう!」

「優くん寝なくいいんですか?眠いんですよね?」

「誰かさんがちょっかい出さなければ寝てましたよ!」

「…さあ?」


全く同じ反応を示されるとさらにムカつく!しかもまだ指で俺の太ももたぞってるし。


「とりあえず指でなぞるのやめて!」

「え〜」

「え〜、じゃなくて!」

「梶谷うるさいぞ」


クソ、この場で先生に正当な理由があると言っても、刈谷さんに対する評価で負けるんだろうな。


刈谷さんの素行がいいせいで。



刈谷さんのちょっかいを止めてから、その後の授業は歯を食いしばって眠い目をこすって、重い頭を支えながら乗り切った。


「夜梨、早く帰ろ」

「珍しく早い…お前大丈夫か?フラフラだぞ。それに目が死んでる」

「大丈夫、家に着けば治るから」


今、俺が最優先でやることは、今自分が出せる最高速で家に帰って寝る!それだけだ。


「そうか、まあ危なかったら言ってくれ」


夜梨は心配してくれているけれど、今は単純に眠すぎるだけだから何とかなるはず。



「じゃあな優、ほんとに気をつけろよ」

「わかってるって大丈夫。じゃあまたあした夜梨」


夜梨とは帰り道の途中で別れるから、ここからは1人で家まで耐える必要がある。


「このまま寝れたらどれだけ気持ちのいいことか…」


でも、路上で寝るのは酔っ払いとやってる事変わらないし、さすがにそれだけは避けたい。



「母さんただいま」

「おかえり優、これ隣に持ってって欲しいんだけど…」

「ムリ、母さんやって」


家に帰った途端、母さんが隣の家に何か持ってけと言ってきたけど、そんなことしてたら余裕で死ねるので、突っぱねて自室のある2階へ登る。


その間、母さんからの、冷たいわね的な愚痴が飛んできた気がするけど、気にする余裕は無い。


「着替えは…起きてからでいいかおやすみ」


持っていたカバンを投げ、そのままの勢いでベットに倒れ込む。やっぱり安心出来る寝床は気持ちがい…



カーテンの隙間から光が差し込まれている。時計を見ると時間は5時、帰ってきたのが6時だった気がするから10時間睡眠の大寝坊だ。


「とゆうかさっきから主に右の方が暖かいような…なにしてんの!?」

「あ、優くん…おはようございます…」


何故か横で寝ていた刈谷さんが目を擦りながら、ゆっくりと起き上がる。


「刈谷さんおはよう…じゃなくてなんで寝てんの!?俺になんかした?」

「いや〜お恥ずかしながら、例の如く夜這いをしに来たはいいんですけど実は私も眠くて、優くんの横に入った瞬間に眠っちゃって…」


いや〜照れる、見たいなポーズとってるけど言ってることものすごいな。なんだよ、例の如くって。


「でも、どうやって入ったの?今日は窓ちゃんと閉めてるし」

「それは…とりあえず玄関開けようとしたら、鍵かかってなかったみたいで」


鍵開いてたからって、入ってこないだろ普通。てか、どうなってんだうちの防犯意識は。


「もういいや…てか、昨日の夜なにも食べてないからお腹すいた」

「お腹すいたんですか?それなら私が…」

「いや、多分母さんが夜ご飯冷蔵庫に入れて保存してくれてると思うから大丈夫」


多分母さんと父さんは今寝てると思うから、なるべく音を立てないよう、身長に階段をおりて冷蔵庫の扉を開ける。


「オープン!よし、ちゃんとある」


冷蔵庫を開けると、中には回鍋肉と米、味噌汁といったもろ中華料理定食。冷蔵庫に入っていた料理を、レンジで温めて机の上に運ぶ。


「いただきます」


出来たてほどではは無いけれど、料理は普通に美味しく。回鍋肉は肉にしっかりタレが着いていて、米と一緒に食べた時の相乗効果が凄まじい。


「幸せそうですね」

「まあ、そこそこお腹すいてたからね。とゆうかまだ居たんだ」


何故か俺が食事をする対面の位置に刈谷さんが座って、机の上に肘を着いて笑顔でこっちをみている。


だなんて酷いですね」

「そりゃあ朝からあんなことになってれば。とゆうかさっきからなんで俺の事そんなに見てんの?もしかして箸の持ち方とか変?」


刈谷さん、箸の持ち方とかの作法綺麗そうだし、変だった場合、刈谷さんから見たら俺のは気持ち悪く見えるだろう。


「あ、いやそういう訳じゃなくて。なんかこの光景傍から見ると、帰りの遅い旦那さんを待ってた奥さんみたいだなって」


確かに、時間が夜だったら見えなくはないかも。まあ、相手は不法侵入者なのだけれども。


「ところで刈谷さんは、なんで俺の事すきなの?」

「それ聞いちゃいますか、私が優くんを好きになった理由ですよね…あ」


刈谷さんに理由を聞こうとしたら、刈谷さんのお腹から、空腹を知らせる腹の虫の鳴く音が聞こえた。


「ごめんなさい」

「刈谷さんもなんか食べる?」

「じゃあいただきます」

「でも、どうしようか」


今食べてる中華料理定食は俺が全部食べるし、他なんかあったっけ。


「卵と食パンありますか?」

「常備してあるから切らして無ければあると思うけど…」

「それなら、キッチンお借りしても?」

「一向に構わないけど、何すんの?」

「そりゃあ決まってるじゃないですか、作ります」


手をパチンと打って笑顔で返答する刈谷さん。


「私、料理できるんですよ」

「そこんとは解釈一致な部分強いけど」

「あら、うれしいですね」


そう言った刈谷さんは、立ち上がってキッチンの方に向かい冷蔵庫から卵、ウィンナー、レタスを取り出してキッチンに向かう。それと一緒に俺も一旦食を放棄して、キッチンに向かう。


「トースターも借りますね」


そう言った刈谷さんは、トースターに食パンを入れて、収納からフライパンを取り出して油を敷きフライパンを火にかける。


「あれ?なんで刈谷さん、俺の家のフライパンの位置知ってるの?」

「それは秘密です」


いやほんとに怖いって、なんで初めてキッチンに入った人が道具の場所知ってんの。


「その間に卵を割って」


ボールに割った卵を入れ、てぎわよくかき混ぜる。


「そういえば、優くんフライパンにバター入れてもらって溶かして貰ってもいいですか?」

「それくらいなら」


刈谷さんに言われて、冷蔵庫から固形バターを取り出しフライパンに投げ入れて、フライパンを回しながらバターを溶かす。


「だいたい溶けきったけど」

「それじゃあこの溶き卵をフライパンに」


溶いた卵に塩、胡椒を入れて味付けしたであろう卵をフライパンに流し入れる。


「優くんレタス洗って貰ってもいいですか?」

「また?いいけど」


フライパンに入れた卵を混ぜることに、注力したいのか俺にレタスを洗う指示を出した。


「はい、スクランブルエッグ完成」

「結構手馴れてるな、とか言ってる間にこっちもレタス洗い終わったよ」

「じゃあ次は1回油を拭いて、ここに水を少々そんでウィンナーを入れて」


スクランブルエッグとレタスを皿に盛り付けたあと、キッチンペーパーで油を拭き取りウィンナー、水をフライパンの中に入れて再度火にかける。


「これでいい感じの焼き目が着いたら完成!よくある朝食with食パン!」

「ほんとに手際良かったな、他人の家でやってるとは思えないくらい」


実際料理をしている刈谷さんは、怖いくらいに道具の位置を把握していて、必要なものを瞬時に取り出していた。


「たまたま、私の家と道具を置いてるとこが似てたってだけですけどね」

「なんだ良かった。てっきり、不法侵入だけじゃなくて、日常的に俺の事ストーカー的なことしてるのかと」


不法侵入だけでもやばいのに、家の家具や物の位置を覚えるレベルでやっていたら本当に怖かった。


「そんなわけないじゃないですか、私がするのは夜這いだけですよ」

「それもそうか」


冗談を言い合った風にお互い笑う。冗談じゃないけど。


「てゆうか、優くん良かったんですか?私の料理見てて、ご飯また冷めちゃったんじゃ」

「別にいいよ、味噌汁さえ冷えてなければ」


まだ米や回鍋肉は許せるけれど、味噌汁だけは冷めると異様に美味しくないから許せない。


「そうですか、じゃあ私も食べますね」


刈谷さん作の料理が食卓に運ばれることによって、1つのテーブルに夜ご飯と朝ごはんが同時に存在するといった、変わった光景が広げられた。


「にしても、美味しそうだね。卵はツヤがでてて、ウィンナーも油でツヤが出てる」

「ツヤしか出てないですね。食べますかどれか」

「じゃあウィンナー貰ってもいい?」

「ウィンナーですね、はいあ〜ん」


刈谷さんが皿の上のウィンナーを橋で挟み込んで、俺の方向にウィンナーを向ける。


「いや、いいよ米の上に置いてくれれば」

「まあまあ、いいじゃないですか、はいあ〜ん」


刈谷さんの念に押されて渋々ながら、ウィンナーを口に入れる。ウィンナーは噛むとパリッと音がなりそれと同時に、旨味の詰まった肉汁が出てくる。


「優くんは美味しそうに食べますね。じゃあ私もあ〜ん」


そう言って口を開ける刈谷さん。


「何やってんの?」

「ほいほーろー」

「ちょっと冷えてきてるけど」


口を開けた刈谷さんは、回鍋肉をご所望らしくなぜかまたあ〜んで渡す。


「ぬるいけど美味しいですね」

「それはどうも」



「「ごちそうさまでした」」


そこまで長くはなかった食事を終えて、食器類を流しに持っていく。


「私洗いますよ、フライパンとかも使っちゃいましたし」

「いや、いいよ不法侵入者とはいえお客さんなんだし」

「じゃあこの際、2人でやりますか。私洗うので優くん拭いてください」


なんで今不法侵入者の人に気を使ったのか分からないけど、2人で食器洗いを始めた。


「そういえばさっきから私思ってたんですけど…これって新婚夫婦みたいですよね」

「めっちゃ擦るね、夫婦の話」


実際考え方によっては見えなくもないのが、こうなんとも言えないとこだけど…



「じゃあ私は帰りますね、着替えないと行けないので」

「また後で、刈谷さんもう来ないでよ。面倒だから」

「さあ?それでは」


刈谷さんを玄関まで見送って、今回はしっかり鍵を閉める。


「あ、ミスった聞き忘れたな」


料理する前に聞こうとしていた、刈谷さんが俺を好きになった理由。まあ、いつか話に上がるだろうしこの件に着いては保留でいいか。

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