第3話「影の支配者」

虚影獣との戦いを終えたハヤテとカズマは、それぞれ違う思いを抱えながら森を後にしていた。しかし、森の深奥ではさらなる異変が進行していた。


虚影獣の闇の核が消えた空間に、謎の男が現れる。彼の姿は闇に覆われており、その瞳は冷酷な光を放っていた。


「ようやく準備が整ったか……虚影獣は序章にすぎない。『双極』が揃った今、次の段階に進むとしよう。」


男の低い声が、闇に溶け込むように響いた。



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1. ハヤテの孤独


ハヤテは森を抜け、人里離れた廃墟のような家に戻った。そこは彼が幼い頃から隠れ住んでいる場所で、闇の力を得たきっかけとなった場所でもある。


彼は自らの手を見つめ、独り言のように呟いた。


「俺の力は虚影獣と同じ……。それでも、俺はあいつらとは違うはずだ。」


闇を操る力を持ちながらも、虚影獣と同じ存在になることへの恐怖が、彼をずっと苦しめていた。


そのとき、影が揺れ、家の中に何かが現れた。


「久しぶりだな、ハヤテ。」


聞き覚えのある声に、ハヤテは驚きながら振り向く。そこに立っていたのは、かつての師であり、闇の力を教えた存在――シオンだった。



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2. 師との再会


シオンは闇を纏ったまま、冷たい笑みを浮かべていた。


「師匠……どうしてここに?」


「どうしてか? お前に教えた力がどれほど成長したか、確認しに来ただけさ。」


ハヤテは警戒しつつも、どこか懐かしさを感じていた。しかし、シオンの言葉には不穏な響きがあった。


「お前、虚影獣を倒したようだな。なかなかの力だ。しかし、それだけでは足りない。」


「足りない……? 俺の力を試しに来たのか?」


シオンは静かに頷くと、闇から虚影獣を呼び出した。だが、それはハヤテがこれまでに戦ったものとはまるで違う、異質な存在だった。


「これが虚影獣の真の姿だ。お前が本当に虚影を制する者かどうか、試させてもらうぞ。」



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3. 光の使者の到来


その頃、カズマは村の広場にいた。村人たちが虚影獣に怯える中、カズマは彼らを安心させようと明るい声をかけていた。


「安心してください。僕たちが必ず守りますから。」


しかし、彼の心はどこか落ち着かない。ハヤテのことが気になっていた。


「一人で闇を抱え込むなよ……。」


そのとき、空が曇り、森の方角に異常な気配を感じた。


「……ハヤテだ!」


カズマは即座に光の剣を手に取り、森へと走り出した。



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4. ハヤテの覚醒


ハヤテは虚影獣と戦いながら、シオンの意図を問いただしていた。


「なぜこんなことをする! 師匠なら、虚影獣の危険性を知っているはずだ!」


「知っているとも。だが、虚影を完全に支配する者がいなければ、この世界はいつか闇に飲み込まれる。お前にその資格があるのか、確かめているのだよ。」


シオンの言葉に困惑しながらも、ハヤテは全力で戦った。しかし、虚影獣の力は圧倒的だった。


「まだ足りない……これが、俺の限界なのか……?」


そのとき、カズマが現れた。


「ハヤテ!」


光の剣を輝かせながら、カズマは虚影獣に向かって飛び込む。


「お前……なぜここに!」


「一人で抱え込むなって言っただろう。僕たちは仲間だ。」


その言葉にハヤテは一瞬動揺するが、カズマの光が虚影獣の動きを封じ込めた。


「ハヤテ、今だ!」


ハヤテは影の槍を生成し、カズマの光を纏わせた。それは二人の力が融合した一撃だった。


「これで終わりだ!」


槍は虚影獣の核を貫き、闇の霧と共に消滅した。



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5. 師の真意


虚影獣が消えた後、シオンは満足げに笑った。


「なかなかの力だな、ハヤテ。それに光の使者……カズマだったか。お前たちならこの世界を救えるかもしれない。」


「何の話だ……?」


「近いうちにわかる。虚影獣は序章にすぎない。だが、次に来るのは――もっと深い闇だ。」


シオンは闇に溶けるように姿を消した。



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6. 次なる戦いへ


ハヤテは疲れた表情を浮かべながら、カズマに向き直った。


「……礼を言う。」


「珍しいね。君がそんなことを言うなんて。」


カズマは冗談めかして笑ったが、その顔には安堵の色が浮かんでいた。


「だが、これからもっと大きな戦いが待っている。俺たちだけで勝てるかはわからない。」


「それでも、僕たちならできるさ。光と闇が一緒ならね。」


二人は静かに森を後にした。そして、その先にはさらなる試練が待っていた――。


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