幸福論【#Angels Dreamer ユウリ・シーグラス視点】

はゐいろ

prologue

これまでひどい人生だった。

でも、そんな辛い暮らしももう終わり。

あの人に出会えたから。

これから、どんな楽しいことが待っているのだろうか__________。


______________________________


孤児院との出会いは、10年ほど前。

空っぽのお酒の瓶を持ったおじさんに腕を引っ張られて連れてこられた。

本当はその時点で190歳だったんだけど、路頭に迷って外で寝たりゴミ箱の中のものを食べたりしてたせいで、身長も低かったしガリガリだったから10歳くらいだと勘違いされたんだと思う。

ああ、これで救われるんだなって思ったのもつかの間。

孤児院での暮らしは地獄だった。

この角と頭の輪っかのせいで、気味悪がられて暴力をたくさん振るわれた。

暴力以外にも、雑用をたくさんした。上手くできないとまた暴力。

毎日毎日、暴力暴力雑用暴力暴力...

もう、嫌になった。これじゃ、前の暮らしの方が何千倍もマシだ。

ああ、消えたいって何度も思った。


______________________________


その日の夜は寒かった。

なんとなく、外に出てみた。夜の街は静まり返っていて、やけに寂しかった。数個の照明が闇を照らしている。照明が少ないせいで、ほぼ辺りは真っ暗闇だ。ただ、不思議と恐怖を覚えなかった。

そういえば、ここ何週間かまともに食事をしていない。

と思った瞬間、一気に力が抜け、地面に倒れ込んだ。


もうすぐしぬんだ。

やだな。まだたのしいことぜんぜんしてないのに。

でも____________


「あんた、大丈夫?」

突如、高い声が脳内に鳴り響く。そして、軽々しく持ち上げられた。薄い意識の中、かすかな光が見えた。


______________________________


目を覚ますと、そこには童顔の女性が座っていた。少し太い眉に、黄色のメッシュ、ツインテール。自分とは無縁のその姿に一瞬ぎょっとしたが、その女性は微笑んで、

「なにか食べる?」

と話しかけてきた。自分は戸惑いながら無言でうなずくと、その人はどこかへ行ってしまった。

ここはどこなんだろう。自分は死んだはずじゃ、そもそもあの女の人はいい人なの...?

そう考えているうちに料理ができたらしい。

赤いお米に黄色いふわふわしたものが乗っている。

「これは...?」

「オムライスよ。食べたことない?」

「...」

おむらいす、慣れない響きに不安になりながら、一口ほおばった。


「おいしい」


こんな食事、いつぶりだろう。すごい久しぶりだ。あたたかい。

「__________っ」

泣きながら、オムライスを食べた。


______________________________


「なんであなた、倒れてたの?」

女性は少しして、自分に言ってきた。

でも、上手く言葉にできなくて黙っていたら、言いたくないなら言わなくてもいいって言ってくれた。

「ちがう、言いたくないわけじゃなくて、...えっと」

それから、今までの事を話した。女性は話を聞いた後、

「じゃあ、うちで働きなよ。今誰もいなくて困ってるんだよね。」

「働くって...ここ、お店?」

「そう!メイドカフェ!いいでしょ~!

君が一番最初のお客さんだよ。」

メイドカフェ。なんとなく存在は知っている。でも、メイドはキラキラしていて、可愛くて、とても自分にはできそうにない。と伝えると、

「そうだなぁ...まず細すぎる!!!もっと肉を付けた方がいい!」

と言われ、なんやかんや働くことになった。


これが、彼女との出会いだった。


(ちなめに年齢を伝えたらめちゃくちゃびっくりされた。)

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