第4話 吸血姫に進化しました!?
「おめでとう、君は吸血鬼に進化したのだよ!」
ご主人様からのまさかの言葉に、私は目を丸くする。
「そ、それってど、どういう事なんですか!?」
するとご主人様はゆっくりと私を下ろし、体を抱えたまま玉座へと戻って座る。
何故か膝の上に乗せられて抱っこした状態で。
「君が血を吸い殺したあの死体は、私と幾度も殺し合いをした人間の英雄と呼ぶべき存在だったのだよ」
「英雄……」
あの血まみれの人間が?
「どうやったのかは知らないがきみはうまくあの人間の命を奪いその血を吸い取った。それによってあの男の強大な力を君は吸い取り、吸血鬼に進化したのだよ」
どうやら強い相手を倒して血を吸うと私達吸血コウモリは吸血鬼に進化できるみたいだ。
凄いな、そんな事初めて知ったよ。先輩コウモリ達は教えてくれなかったけど、知らなかったのかな?
「だがいくらあの男を食い殺したとはいえ、ただの吸血コウモリから吸血鬼に進化できるとは思えんのだが、しかし実際に進化した以上何かしらの素養があったということか?」
と、ご主人様が何やらブツブツと考え込んでいる。
「まぁ良い。ともあれでかした。あの男が人間の側に居なくなったのなら、私の領地拡大は間違いない。お前には褒美をやらないとな」
「褒美ですか!? 果物ですか!?」
やった! ご主人様のくれる果物美味しいんだよね!
「果物? はははっ、そうか、そうだったな。お前は元は吸血コウモリだったのだものな。まぁそれは後でやろう。お前に与える褒美はもっと別のものだ。それともう一つ」
と、ご主人様は玉座の間でぼんやりと立つミイラに視線を向ける。
「あの死体の持つ剣を私に捧げよ。さすればもう一つ褒美をやろう」
あの剣とは、ミイラが胸に抱えている青白く光る剣の事だろう。
「え? でもあれはあのミイラのものですよ? っていうかあのミイラって一体何なんですか? 何で私を守ったりしてくれたんですか?」
私が訪ねると、ご主人様は何を言ってるんだコイツはという顔になったあと、ああと声を上げる。
「そうか、お前は進化したばかりだから知らんのも無理はない。我々吸血鬼は血を吸って殺した相手を眷属のアンデッドとして従える事が出来るのだ」
あっ、そうか! 吸血鬼ものの映画とかでもお約束じゃん!
そっか、あのミイラは私の眷属になったんだ!
「でだ、お前の眷属の持つ剣を私は欲しい。譲ってくれるか?」
「はい! ご主人様にその剣を差し上げて」
私の命令に従いミイラが動き出した……んだけど。
「え? 何で?」
何故かミイラはご主人様ではなく私に剣を差し出してきたのだ。
ええっと、もしかして私の命令が理解できなかった?
「ははっ、死しても私が仇敵であった事は体が覚えているか。せめてもの抵抗として主であるお前に剣を捧げたいと言っておる。受け取ってやるがいい」
「わ、分かりました。えっと、ありがとうね」
その時だった。ミイラから剣を受け取ると、その輝きが青からピンク色に変わったのだ。
「え? 何で?」
「その剣の譲渡が成された証だ。今はお前がその剣の主となったのだよ」
な、成る程、ミイラが持っている時は青く、そして私のものになった事でピンク色に光るようになったと。なんで色が変わるの?
ともあれご主人様に剣を渡さないと。
「ご、ご主人様、どうぞ」
「うむ」
ご主人様が嬉しそうに剣を受け取ると、剣の色がピンクから紫色に変化してゆく。
「おお! 遂にこの剣が私の物に! でかしたぞコウモリ!」
ご主人様は物凄く嬉しそうに剣を見つめると、私を褒めながら頭をワシャワシャと撫でてくる。
ふわぁ、なんだか子供の頃に戻った気分。
「うむうむ、ではお前に褒美をやろう。とびきりの褒美をな」
そう言ってご主人様が私を抱き寄せると、首筋に小さな痛みと熱が生まれた。
「え?」
これ、噛まれた? 何で?
私はご主人様に噛み付かれていた。でもどうして? 私の血を吸う為? ご褒美を貰えるんじゃなかったの!?
驚きのあまり固まっていた私だったけれど、すぐに異変を感じる。
ドクン! と体が跳ねる
「あっ!?」
何か、何か熱いものが体の中に入って来る。
これ、知ってる! 私が人間の姿になる前に感じたあの感覚!
体内に入って来たものは、私の中で暴れまわる。
「あああああああっ!!」
そして弾けた。
「私の血を与えた。今日からお前は私の娘だ」
ご主人様の声が聞こえる。
けれど今の私は全身が弾ける感覚に翻弄されるばかりで上手く答える事が出来ない。
「そしてもう一つの褒美として。お前に名前を与えよう。メルリル、それがお前の名前だ」
「メ、ルリル……」
「今日からはメルリル・クロムシェルと名乗るがよい! 我が純白の娘、新たなる吸血姫よ!」
こうして私はご主人様に血を与えられ、しもべから娘へと生まれ変わったのだった。
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