第13話 あおいの思い(あおい視点)
「久しぶりに、お姉ちゃんとこー兄と遊べて凄い楽しかったなー」
あおいは周りに人が居ないのを確認して、そう独り呟いた。
楠木家は、晃輔とななの二人が住むマンションから電車かバスを乗らないと行けない場所にある。
今は最寄りの駅に着いて、そこから歩いて帰る途中にあおいは独りそう呟いた。
嶺兄には感謝しないとなー、と改めて思う。
経緯は詳しくは知らないけど、嶺兄が大金を当ててくれたから、お父さんとお母さんの会社はなんとか立ち直すことができた。 そのお陰で、一時危ぶまれた私たちの生活も安定しきている。
一時はほんとにどうなるかと思った。
自分の両親がやっている会社が倒産しそうになったんだから。
正直、気が気でなかった。でも、まさか、嶺兄が助けてくれるなんて思ってもなかった。
それがあおいの、正直な感想だった。
「ふふ、不思議なこともあるもんだなー」
あおいは周りに誰もいないことをいいことに、独りそう呟く。
まぁ、考えれば考えるほど、謎だなぁと思うけどね。
嶺兄がお父さんとお母さんを……というより、私たち楠木家を助けてくれた理由。
中学の時のことをきっかけに、こー兄……もとい藤崎家とはほとんど関わらなくなってしまった。
正確には、こー兄のことが心配になったというのと、こー兄が他人と接する時に明らかに壁を作るようになったから。
「……この話はやめにしよう」
そう言って、あおいは軽く頭を振る。今考えるべきはそこじゃないと思うし。
正直、こー兄とは結構遊んでたし、良く面倒を見てもらった。
でも、やっぱり不思議なのは、私たちと嶺兄とはあまり接点が無かったこと。
学校で、勝利の女神、って言われる私に付いてこれるこー兄とは対象的で、嶺兄はずっと家の中でゲームばっかりやってる、そういう印象だった。
「正直、今も何考えてるかよくわからないんだよなー」
だから、私もお姉ちゃんも嶺兄には近づき辛かった。嶺兄のことよく分からなかったから。
まぁでも、今は違うかな。
個人的には、嶺兄はほんとに感謝してる。
家を助けてくれたことはもちろんなんだけど。
やっぱり一番の理由としては、こうやって、お姉ちゃんとこー兄をくっつけることができる。
そのきっかけをくれた。
これはもしかしたらチャンスだって、そう思った。
これでこー兄とお姉ちゃんの二人をくっつけられる。
でも、お姉ちゃんは、この数日でだいぶ良くなったけど、まだ、表情固いし、こー兄の方も傷はまだ治ってないみたいだから慎重にいかないといけないし。
色々と大変だなって思う。
こー兄とお姉ちゃん、早くくっついてくれたらこっちも苦労しないのになー。
そんなに物事上手くいかないからなー。
ほんと、世話の焼けるお姉ちゃんとお兄ちゃんだよねー。
たださぁ……今日のあの感じだと、私がこー兄のことを奪えそうな気がする。
なんというか、今日の二人を見ていてそんな気がした。
でも、今はお姉ちゃんを応援しなきゃだからな……我ながら複雑だなーと思う。
あおいがそんな考え事をしてたら、いつの間にか家に着いていた。
「ただいまー!」
あおいが玄関を開けてそう告げる。
「「おかえりー」」
お母さんとお父さんの声がする。
それと同時になんかいい匂いがする。お、この匂いは唐揚かな?
「いい匂い!」
リビングに向かうと、から揚げがテーブルに並べられてあった。
どうやら私の予想はあたりだったようだ。
「おかえりなさいー。二人はどうだった?」
「えっとねー」
お父さんとお母さんと一緒に夜ご飯を食べながら私は二人のことを話した。
お父さんとお母さん曰く、私が二人のことを話す時はずっとご機嫌になっていたらしい。
***
ご飯を食べたらお風呂に入って明日の準備をする。気が付いたら、既に二十二時を回っていた。
「あ、そうだ! 良い事思いついた!」
そう言って、突然あおいはベッドに置いてあるスマホを手に取って嶺に電話をかけ始めた。
「もしもし、嶺兄?」
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