第14話 嶺の思い(嶺視点)
「
嶺はリビングでパソコンをいじりながら、ふとそんなことを思った。
「どうした? いきなり」
嶺の正面の席に座り、同じようにパソコンを広げている晃輔と嶺の父親、
「いや、二人の話。結構強引に行ったからちょっと心配で……」
嶺は少し複雑そうな表情で告げる。 すると、結夜は何か察したのか苦笑いする。
「あー、なるほど」
「いくらあおいのお願いとはいえ……だってあの二人には、直前までほんとに何も知らせなかった訳だし……」
「まぁ、確かになー。でも大丈夫だと思うぞ。ほんと、嶺は心配性だなー」
結夜はそう言って笑っているが、兄としては非常に心配なのだ。
「いや、心配にならない方がどうかしてると思うんだけど……」
嶺は呆れた表情でそう呟く。
そもそも、俺が会社を辞めたのは晃輔たちに同居の話を告げる一週間ぐらい前だ。
そして、大金を入手したのは会社辞める前の話なわけで。
そこからは、本当にどういう訳か今だにしっかりと理解できていないが、嶺たちの母親……
これに関しては両家の母親同士が昔から仲が良く、その繋がりかららしい。
ホントに不思議だなーと思ってしまう。
ただ、そのことをあおいがいつ知ったのかは謎だが、こんなことを頼まれたのだ。
『嶺兄! お願いがあるの!』
「どうした?」
『お姉ちゃんとこー兄をくっつけたい。二人には幸せになってもらいたい……だから、嶺兄には協力をお願いしたいんだけど……』
今回の出来事をきっかけに二人の寄りを戻すことができたら良いと思ってるって、結構真面目な声であおいにそう言われた。
二人の距離を縮めるためには物理的な距離を縮める方が絶対良い、嶺が思わず聞き返してしまうような事をあおいは告げた。
そして、マンションに晃輔とななの二人だけで住まわせるという、なかなかぶっ飛んだ作戦を提案してきた。
高校生の男女が良いのか……正直、最初は戸惑ったが、それがななにも晃輔にも恐らく良い話になるんじゃないかと思った。
特にこれといった根拠は無かったが嶺も不思議とそう思ってしまった。
「……………………」
結局、あおいの考えた案に乗っかるという形になり、その作戦を実行するためにはお互いの両親に話して許可してもらう必要があった。
結果、両家ともまさかの快諾だったらしい。
最初は心配したが、まぁ、結果的には良かったのかもしれない。
因みに、今二人に住んでもらってるマンションは元々楠木家が購入した物件で、先を見越して買ったはずのものが今回ばかりは裏目に出たとのこと。
最終的には、使わないよりは使ってもらった方が良い、との結論に収まったらしい。
こういうぶっ飛んだ経緯があったからこそ、晃輔とななは本人たちの意思関係無しに、突如一緒に暮らすことになった。
本当に今考えても本当によくわからない……嶺は思わず頭を抱えてしまった。
「どうした?」
頭を抱えている嶺に気づいた結夜がそう尋ねてきた。
「何でもないから大丈夫」
嶺が一人でそんなことを考えてると、パソコンのすぐ横に置いてあるスマホが鳴った。
『もしもし、嶺兄?』
電話の相手は嶺の悩みの種、まさしく、今回の発端とも言える人物から電話がかかってきたのだ。
「あおいか、こんな時間にどうした?」
嶺はあおいにそう尋ねる。
『いや、ちょっとお願いがあってねー』
あぁ、察した。何か思いついたんだな。
そう思った嶺は、両親に聴こえるようにスピーカモードにする。
『楠木家うちと藤崎家で、明後日バーベキューをやりたいなーって思ってて』
「また、突然だな……」
そう言いつつ、リビングに居る両親を見ると二人とも首を縦に振っていた。
どうやら了承されたらしい。
「うちは大丈夫だそうだ。二人には知らせたのか?」
『ううん、二人とも明日はそれぞれ予定があるって言ってたし。明日の夜いきなり連絡するつもり』
「うわぁ……」
思わずそんな声が出てしまう。
「あおいは……あぁ、部活の助っ人か」
『そー! だから明後日がいい!』
「わかった。準備しとく。じゃあな、助っ人頑張れよ」
『うん! ありがと嶺兄! じゃあ、準備よろしくねー!』
そう言って、電話が切れた。
「はぁ……」
電話を切った嶺は今日一番のため息をついたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます